運命共同体って言うんだっけ?
本当に、魔法だ。というかこんな大火事で俺の会社は大丈夫なのだろうか。そんなことが多少余裕が生まれた俺のまず最初の感想だ。
そんな事を思っていると、炎が自らふわりと浮いて俺の近くに集まる。おお、熱くない。
それに会社の床や備品はちっとも燃えていなかった。魔法って凄いんだな。
だが、この空間で一つだけ燃えているものがあった。それが今対峙している犬だ。燃えながらも爛々と輝かせる目には殺意と憎しみが渦巻いているのがハッキリと感じられた。
だが、なぜだろうか?先程まではあんなに恐ろしかったのに、今では全く恐くもなんともない。
寧ろ、消さねばという気持ちが湧いてくる。何故そう感じるのかはわからないが、心の感じるままに手を犬の方へと向ける。
すると、周囲を漂い待機していた炎が犬目掛けて飛んでいき、あっという間に追い撃ちをかけて燃やし尽くしてしまった。
「う、お…おぉ……スゲェ…」
感嘆の声を溢してしまうが、仕方のないことだ。こんなにも簡単に魔法らしきものが扱えて、妙な化け物を倒してしまったのだから。
「フム、こんなものか」
一人(一匹?)、炎の動きなどを見て頷いているトカゲには気を留めず、震える両手を俺はただ呆然と見ていた。
あれから家に帰るまでになんとか炎をしまう方法を教えてもらったり、色々な話を聞いた。
まず、トカゲの名前はフェンクス=サラというらしい。フェンと呼んでくれと言っていたのでそう呼ぶことにした。
次に、俺達は《契約》で結ばれたからか、心で会話することが出来るようになった。なんというファンタジー。
そして、先程の犬は「禍のモノ」というある意味魔物のようなモノだという。フェンはその禍物をこの世界ーー彼らは人間界と呼ぶらしい……から祓うために精霊界からやって来たと説明された。
人間界と精霊界は隣り合っており、人間界に禍が溜まれば精霊界はやがて魔の世界へと変貌してしまうからフェンが来た、とのこと。
「禍」とは負のエネルギーのことで、そこから生まれたモノはあらゆる命に憎しみを抱き、抹殺することだけが本能にあるという。
そんな恐ろしいものがこの世界にいたなんて、と衝撃を受けるが、なんでも物理的な干渉だけではなくそこに在るだけで心を狂わせるという話を聞くに、言われてみれば最近は嫌なニュースが増えてきたな、と思ったのだ。
「恐らく、物理的な干渉は最近になってからだと思われるが……一般の人間を巻き込んでしまった。マコトには助けてもらった恩があるというのに……すまない…」
そう落ち込むフェンの頭を指先で撫でながら気にするな、と返す。
「一度乗り掛かった船だ。それにお前に出逢ってなかったらきっとあの犬に俺はやられてた。その運命を変えてくれたんだから謝る必要はないって」
「ムゥ、そうか?」
「そうだ」
「ならば……よい。此れからも世話になる。宜しく頼むぞ、優しき相棒よ」
こうして、奇妙なトカゲ(まだドラゴンとは信じてないぞ!魔法的な何かなのは信じたけど!)との普通とは言えない新しい生活が始まった。