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年下天使な幼なじみから、君からの贈り物はもういらないと拒否されてしまった  作者: 悠木 源基


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第6章 王女への贈り物


 そして話は王弟のガーデンパーティーに戻る。

 招待された子供達は一人一人、主催者である王弟の第一子であるアイリス王女の前に進み出て、挨拶を交わしてお土産を渡した。

 贈り物はその場で開けて感想を述べるのがこの国の礼儀だった。

 高級菓子から、ちょっとした宝石の付いたアクセサリー、有名ブランドの小物、珍しい小鳥や鉢植えを持参した子供もいた。

 王女はどの品に対しても一応口ではお礼を言いながら、顔の表情がその度に変化するので、気に入ったかそうでないか一目瞭然だった。

 それは王女として恥ずかしい振る舞いであった。

 子供達は困惑し、保護者達は皆こう思った。


「蛙の子は蛙。鳶がタカを産むなんて有り得なかったわね。

 最高の教師から学んでもアレなのだから。この先も見込みはないわね。

 子供達のお付き合いもほどほどにしましょう」


 パーティーが始まる前から微妙な雰囲気の中、最後の挨拶することになったのは、ギフティーとリーチェの二人になった。

 下位貴族で招待されていたのは彼らだけだった。王弟とオーウェン子爵夫人が幼なじみであり、宰相の孫だから呼ばれていたのだ。

 貴族なら知人を呼んでもいいということだったので、リーチェを伴った。

 というか、彼女抜きでパーティーなどに参加するつもりなんて彼は最初からなかったが。

 

 アイリス王女はギフティーの顔を見て顔を輝かせた。そして


お従兄弟(おにいさま)様、ようやく私に相応しい方が現れたわ」


 と、エスコート役のアンディス王太子に向かって言った。

 王太子は顔色一つ変えず、招待客の様子を目で確認した。

 大人は当然だが、子供の方も王女のように感情をストレートに表している者はいなかった。ただし、皆冷めた目をしていた。

 おそらく保護者の方はアルカイックスマイルを浮かべてはいたが、扇子の向こうで歯ぎしりをしているか、口を歪めていることだろう。そう王太子は思った。

 彼が心配していたのは従姉妹のことなどではなく、親友のギフティーのことだった。

 彼が同世代の高位貴族の子女から妬みや恨みを買ったら、この先社交がし辛くなるのではないかと。


 しかし、それは杞憂に終わった。

 アイリス王女はギフティーからの贈り物を木箱から取り出して、あからさまにがっかりした顔をしたからだ。

 お従兄弟(王太子)よりも王子に見える煌びやかで美しい少年からの贈り物だから、さぞかしお洒落で素敵な贈り物に違いない。

 王女は期待に胸を膨らませていたのだ。それなのに、箱から出てきたのは木彫り(フクロウ)だったからだ。


「何これ?」


 低い声で王女は呟いた。


「梟の木彫り彫刻です」


「それくらい見れば分かるわ。だけど、私のプチデビューのお祝いがなぜ()()()()()()()?」


 そう訊ねられたギフティーは、コテンと可愛らしく小首を傾げてからこう言った。


「フクロウは知恵の神様です。だから、これから先を見通せる人間になりますように、という祈りを込めて、子どものプチデビューの際に贈る品としては最適だと聞いていました。

 将来王女殿下が立派な王族になられますようと選ばせて頂いたのですが、私の認識違いだったのでしょうか?」


「「えっ?」」


 王女と母親の王弟妃は、今始めて聞きましたという顔をしていた。さすがに王弟は知っていたらしく気まずそうにしていたが。

 そこへ、アンディス王太子が間髪入れずに従姉妹に向かって言った。


「オーウェン子爵令息の認識に間違いはないよ。子供はこれから色々な知識や常識を学び、立派な大人にならなければいけない。

 そのために昔からずっと、プチデビューには梟を贈ることが良いとされてきたのだ。

 特に王族は皆の手本になるように絶えず学ぶ姿勢を忘れてはいけない。それ故に贈ってくださる方は多い。ありがたいことだ。

 二年前、私もたくさんの梟を頂いて、それを学習室の棚に並べて、常に気持ちを新たにしているよ。

 叔父上もそうだったでしょう?」


 甥にそう振られて王弟は動揺した。梟のことなどすっかり忘れていたが、たしかに自分もやたら梟に関する物をもらっていた。

 しかし、そのような意味があるとは知らなかったし、考えたこともなかったのだ。

 いい年をして知らなかったとも言えず、そうだなというように首肯した。

 しかし思わずこう口にしてしまった。


「たしかに私もプチデビューの席でいくつももらったな。

 しかしそれはブロンズの像や、金でできていて、美術的価値もあるものばかりだったぞ』


 その品のない発言に王弟宮の庭はシーンと静まり返った。


「美術的価値ですか……

 でしたら差し上げた木彫りにもあると思うのですが。

 ロダーニ氏の作品ですから」


 王弟一家はその名前を聞いてもキョトンとしていたが、数人の保護者達が驚きの声をあげた。


「まあ。ロダーニ氏といったら、隣国出身の世界的に高名な芸術家ではないですか!

 各国の王侯貴族が彼の作品を望んでも、なかなか手に入らないと評判ですわ」


「道理で素晴らしい掘り物だと思ったよ。一体どうやって手に入れたのだね?」


 とある紳士に訊ねられたギフティーはまずリーチェのことを紹介し、彼女の父親がロダーニ氏と親しくしているから、紹介をしてもらったと答えた。

 大人達は王弟一家への挨拶はもう終了したとばかりに、二人の保護者であるオーウェン子爵夫人に向かって話しかけ始めた。

 主催者だというのに主導権を奪われてしまい、王弟一家は焦った。

 エミリア王弟妃が慌ててこう言った。


「アイリス、プレセント男爵令嬢からの贈り物をまだ開けていなかったわよ。

 男爵家は有名な方々と手広く商売をなさっているようだから、きっと素敵な品に違いないわ。

 楽しみね」


 その言葉にみんなが一斉に王女に視線を向けた。

 しかしそこで彼らは再び、王女の王族としてはあり得ない行為を目にすることになった。




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