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年下天使な幼なじみから、君からの贈り物はもういらないと拒否されてしまった  作者: 悠木 源基


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第4章 男爵家の贈り物


 プレセント男爵夫妻は常々オーウェン子爵家の人々に深く感謝していた。

 まだ小さな娘を各国に連れ回すのは負担が大きいだろうと母国に残したが、それが良くないことは分かっていた。

 仕事上、貴族との付き合いも多かったので、貴族社会のこともわかっているつもりでいた。

 だからこそ、使用人や家庭教師は信頼できる人間を選別したはずだった。しかし違ったのだ。

 

 娘がオーウェン子爵家と親しくさせてもらっていることを知って、彼らはとても喜んでいた。

 名家と繋がれたからというのではなく、一人ぼっちの娘に親しくしてくれる隣人ができたことに、心底感謝していたのだ。

 だから、娘の贈り物とは別に彼らも頻繁に価値のある品を贈っていた。

 その度に子爵家からは、物が欲しくてしていることではないからご遠慮しますと言われた。

 しかし、何度も食事やティータイムに招待されているというのに、こちらからは何もお返しができないのは心苦しい。

 それゆえ、どうか受け取って欲しいと懇願したのだ。


 そして夫人から娘の家庭教師の話を知らされて、夫妻は唖然とした。

 自分達を見下し、嘲笑っていた没落子爵夫人である家庭教師に怒りを覚えた。

 それと同時に自分達の人を見る目の無さと、貴族社会の厳しさを痛感したのだ。

 今さら気取っても仕方がない。自分達では到底娘を立派な貴族令嬢にすることはできない。

 それならばありがたくオーウェン子爵夫人に頼ろう。そう決断した。


 プレセント男爵夫妻はなんとか仕事を調整して屋敷に帰ると、娘やメイド長に聞き取りをし、きちんと裏取りしてからマナー講師を解雇した。

 それから隣家へ赴いて、感謝の言葉を述べ、外国の珍しい土産を渡した。

 そしてその後、徐に娘の家庭教師について相談をさせてもらおうと口を開こうとした。

 すると子爵夫人の方から


「私にお嬢様の面倒を見させてもらえないかしら?」


 という申し出をされて仰天した。


「我が家の方がリーチェ嬢には感謝しているのですよ。

 病弱だった息子がすっかり元気になり、なんと木登りまでできるようになったのですから。

 一年前までは、年中ベッドの中で過ごしていたのが嘘のようです」


 木登りの話は帰国してからすぐに娘から聞かされて、夫妻は一瞬気が遠くなった。

 それ故、夫人の口から改めて聞かされて、居た堪れない気持ちになって、再び頭を下げようとした。

 しかし、夫人はそれをさせまいというようにこう言葉を続けた。


「木登りのことは皮肉ではありません。本当に感謝しているのです。

 

 以前は家の者が腫れ物を扱うように神経質になっていましたから。

 息子は何かやろうとする度に誰かに止められていたので、いつもつまらなそうにしていました。

 しかし今では心から笑えるようになったのです。

 私達では教えてあげられなかった、楽しくてわくわくすることを、リーチェ嬢はたくさん教えてくれたのです。


 ですから私は、自分が教えられることでお嬢様にそのお礼をしたい、そう思っているだけなのです。

 ですからお月謝は結構ですわ。

 というより、これまでいただいた贈り物で、対価は十分過ぎると思いますし。

 我が家の宝物庫が今日頂いた絵画で満杯になってしまうと思うので、本当にご遠慮致しますわ」


 オーウェン子爵夫人は笑ってそう言った。

 そのとき夫妻は思ったのだ。このご恩は決して忘れない。

 そしていずれ()()()()()()ようにしようと。

 

 


 この国の貴族の子弟は、十歳くらいを目安に他家との交流を始めることが慣例になっていた。

 その年齢になれば最低限のマナーが備わるだろうと判断されるのだ。

 もちろん、マナー講師に失礼のない振る舞いができると認定された場合だが。

 

 リーチェがオーウェン子爵家以外の貴族の家を訪問したのは十一歳のときだった。

 ギフティーが十歳になったので、それに合わせたのだ。

 プレセント男爵夫妻は張り切って娘の仕度の準備を整えようと思った。ところが子爵夫人にこう釘を刺されてしまった。


「何事も最初が肝心です。下位の者が金に任せて豪華でやたら目立つ格好をすれば、格好の餌食にされます。

 そしてそれを払拭することは容易ではありません。

 派手ではないけれど、決して地味でもない。つまり、文句の付けようがない服装をするのが基本です。

 もちろん、印象を付けるための()()()()()()は必要ですが。

 ご夫妻のお気持ちはお察ししますが、今回は私にお任せ願えませんか?

 お二人の楽しみは、是非デビュタントまでお待ちいただければと思います」


 そう言われて納得した彼らは、夫人に言われた通り、娘の社交デビューに思いを馳せたのだった。

 しかし、他国のパーティーにしか参加してこなかった男爵夫妻は知らなかった。  

 自国のデビュタントの衣裳は、華美なデザインは忌み嫌われるために白一色だということを。

 そのために、彼らは再び落胆することになるのだった。





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