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年下天使な幼なじみから、君からの贈り物はもういらないと拒否されてしまった  作者: 悠木 源基


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第27章 思い合う心


「これは僕の推測なんだけれどね……」


 そう前置きしてから、ギフティーは五十年前に描かれたエンディラ画伯の『木漏れ日の少年』の絵に関する話について語り始めた。


 おそらく、詐欺集団からあの絵を買わされた人物がその後金銭的に余裕がなくなって、本物と贋作の両方を手放さざるを得なくなったのだろうと。

 当然本物は正規なルートで売り、贋作の方は本物とかちあうと困るので、闇のルートに売ったが、そのときに間違えたのではないか。


 最初に詐欺集団が本物と偽物を誤った可能性もあるのではないか。そうリーチェが言うと、きちんも識別する方法があったので、それはないと彼は断言した。

 というのも、贋作の裏側の隅に、特殊なインクで贋作者のイニシャルが書かれてあったからだ。

 蝋燭の火を近付けるとそれが浮かび上がってくるのだが、大切な絵に蝋燭を近付けようとする者などいやしない。

 そのため、これまでバレることはなかったのだ。


 そのことは、詐欺グループを取り調べた結果判明したことだった。

 つまりドラコーン王国の鑑定士は、そんなことを知らずにオーウェン家の絵の方が本物だと、正しく鑑定したのだ。

 このことから、今後この国の美術品の価値はかなり上がるだろうとギフティーは言った。


 実はそのアルバンド=コバーンという鑑定士とオーウェン家は元々親しくしていたらしい。屋敷の宝物庫の中の品は、全て彼の鑑定済みだという。

 先祖代々から伝わるそのほとんどの品がやはり名のある作者の作品で、高い価値のある物ばかりだと改めて鑑定された。

 プレセント男爵家から贈られた品もまた然りだった。

 そしてそれ以外の真新しい品も、これから価値が上がると思える素晴らしい品だと鑑定された。そのとき、コバーン卿はこう言った。


「これらの品を贈られた方は同じ方ではないですか? かなりの目利きですよ」


 それらはリーチェから贈られた物だったのだという。

 その話を聞かされたリーチェは瞠目した。信じられなかった。


「君は特別な審美眼の持ち主なんだよ。君自身は気付いていなかったけれど、親しい者達は皆知っていたよ。

 だから君のご家族や我が家だけでなく、国王一家やマリアン、ポーラ嬢もずっと君を見守ってきたんだよ」


「守る?」


「今日のことで君も分かったと思うが、君の能力を欲しがる者が多いということだよ。

 ご両親は君を守るために国外に出したのだと思うが、それは悪手だった。

 だけど、君が留学先にアルパディア王国を選んだことが不幸中の幸いだったんだ。

 あの国の筆頭公爵家の夫人は、母上やは王妃殿下の友人のグロリア夫人だったからね。

 君の保護をしてもらえないか。グロリア様へそう要請していただけないかと、母上が王妃殿下にお願いしたんだ。王太子殿下の婚約者になったポーラ嬢もね。

 夫人とは母も手紙のやり取りをする仲ではあったが、王妃殿下の方がより親しかったし、お力をお持ちだから。


 君は知らないかもしれないが、グロリア夫人はアレン王弟殿下の元婚約者だった。 

 それで殿下には散々苦労をかけられた挙句に婚約破棄されたんだよ。

 だからこそ夫人は、あの一家に目を付けられた君に同情してくれたんだ。

 それに夫になった公爵との仲を取り持ったのが母上だったんだ。それで()()()()()()()()()だと母上から聞かされて、一も二もなく守ると約束してくれたんだよ。

 最後まで気付かなかったみたいだが、この二年間、君にはずっと公爵家の護衛が付いていたんだよ。

 まあ、それなりのお礼は君のご両親がしていたようだが」


 今まで知らなかった事実のオンパレードに、頭が追いついていかなかった。

 ただ、自分がいかに多くの人に守られてきたのかというこは理解した。そしていかに幸せ者なのかということも。


「君が僕の大切な女性だ……」という言葉に胸が撃ち抜かれていた。

 ギフティーがそう思ってくれていたこと。そしてそれを、フルーラ夫人も当然のようにそう思ってくれていたことに感激したのだ。


「それに、遺跡調査のことだけれど、キース卿に頼まれて仕方なくやっていたのだろう?

 だけどあれって、彼が君を自分の側に置いて守るためだったんだよ。余計な虫が近付かないようにって。

 君はマリアンに変な噂が届いたら困ると思っていたみたいだが、むしろ彼女が婚約者に依頼したことなんだよ。

 リーチェの才能目的で近付いてくる人間がいるかもしれない。だから気にかけて欲しいと」


「マリアン様がそんなに私のことを心配してくださっていたなんて」


 感極まって彼女は目を潤ませてこう言った。


「殿下とポーラ様はもちろんだけれど、マリアン様やギーズ卿のお二人には足を向けて眠れないわ。皆様の結婚祝いには素晴らしい品を贈らせてもらわなくては」


 すると、珍しくギフティーが困ったような顔をした。


「ああ、かなり奮発した方がいいぞ。特にキース卿は今後かなり辛い思いをするだろうからな。」


「どういうこと?」


「君が金印を発見したことで、アルトニアの町が建国の地だと証明されただろう? そのことで大学は今も大わらしているのは知っているよね?

 キース卿は卒業後すぐに帰国するはずだったんだ。だが、金印発見者の一人として、その論文をまとめ終わるまで大学に残るように強制されたみたいなんだ。だからおそらく結婚式は……」


「延期されてしまうの? そんな! 

 お二人は本当に愛し合っているよ。それなのに私のせいで……」


「まあ、掘り出しのは君でも、それが金印ではないかと気付いたのはキース卿だから、実際に発見者には違いない。だから、仕方ないといえばそうなのだろう。

 それに、今回の論文をまとめれば博士になれるらしいし、悪い話ばかりではないよ」


「でも、結婚式の準備は進んでいるのでしょ? 今さら延期なんて簡単にはできないはずだわ。

 それに、お二人の結婚式が延期になったら、それに伴って王太子殿下とポーラ様の結婚式まで変更しなくてはならなくなるわ。でも、そんなの不可能でしょう?」


 マリアンとキースの結婚式が延期になると、なぜ王太子の結婚式まで延期しないといけないのか、ギフティーには理解できなかった。

 するとリーチェは、これまでポーラと手紙でやり取りしていた話の内容を語った。


 三人の中で一番最初に結婚するのは、お相手の年齢を考慮すればマリアンとキース卿だろうと思っていた。だから二人でマリアンのブライズメイドをやろうと誓い合っていたのだ。

 よその国ではどうなのかは分からないが、少なくともドラコーン王国においては、ブライズメイドは未婚の女性に限る。

 それゆえに、マリアンのブライズメイドをするためには、それまで彼女達は結婚をしないということになるのだ。


「貴方のことだからマリアン様の気持ちを知っていたのでしょう?

 彼女は本音を隠すのが上手だったけれど、鈍い私でも気付いていたの。あの方への思いを。

 もちろんポーラ様も」


 もし、友人に譲るためにマリアンが身を引くというのだったら冗談ではないと、ポーラは王家からの申し込みを断るつもりだった。

 でも、そんな単純な話ではないことが分かった。彼女自身の性格、父親のこと、そして王太子との相性……


 王太子は自分の立場をよく弁えていて、恋愛感情で婚約者を決めるつもりはなかった。

 妻として愛していく気持ちはもちろんあったが、それ以上に、王妃として共に国を治めてくれる女性を彼は求めていた。

 最初は才色兼備のマリアンが適任だと思っていた。

 しかし彼女ではないことに気付いてしまったのだ。そして、それはマリアンも。

 

 冷え切った両親の下で育ったマリアンは、皮肉屋で、すぐに人の裏を見つけようとしてしまう天邪鬼な性格になってしまった。

 恋愛小説なんて馬鹿らしいと見向きもしない令嬢になったのだ。

 ところがだ。

 自分と同じタイプだと思っていた従兄弟のギフティーが、一人の少女を一途に思っていることに気付いてからは、その姿に憧れを抱くようになってしまったのだ。

 自分もそんな相手と結ばれたいと。

 それ故に、私より公に重きを置く結婚生活は無理だと思った。

 そんな彼女の気持ちを王太子の方も察し、ポーラの方に正式な打診をしたのだ。


 ポーラは政略結婚が当たり前の家庭に育ったので、王家に嫁ぐこともそれほど不満も不安もなかったからだ。

 一応彼女も王太子を慕っていたので、マリアンには感謝していた。

 それゆえに、マリアンの幸せな姿を見てからでないと結婚できないと、王妃殿下や王太子殿下に話をしたのだ。

 ポーラは言った。


「お願いします。これが私としての最後のわがままです」


 と。

 それが了承されたのだ。

 そして、そのことを知ったリーチェもそれに賛同することに決めたのだ。マリアンは大切な親友だったし、学園ではいつも守ってもらっていたからだった。

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