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年下天使な幼なじみから、君からの贈り物はもういらないと拒否されてしまった  作者: 悠木 源基


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第22章 愛の証明


「毎日僕のことを思っていたというのが本当なら、その証拠を見せて」


 ギフティーの言葉にリーチェは困惑した。

 毎日、彼のことを考えていたのは本当のことだったが、それをどうやって証明すればいいのか分からなかったからだ。

 でも、事実を証明するためには確固たる証拠を示さなければならないというのが、昔からの彼の口癖だったことを思い出し、彼女は困惑した。

 すると彼はそれを察したのか、こんなアドバイス?を与えてくれた。


「たとえ他人には自分の思いを秘めていたとしても、普通日記にはありのままの思いを素直に綴るものだよね?

 それを見せてくれれば信じるよ」


「えーっ!」


 子供のころからずっと日記はつけている。それは彼の母親であるフルーラ夫人から勧められたからだ。

 文章を書く鍛錬になるし、毎日書くという習慣ができれば生活のリズムも整う。そして何より心、自分の気持ちを見つめ直すことができるからと。


 そう。たしかに毎日ではないかもしれないが、ギフティーの名前が頻繁に日記には登場しているはずだとリーチェは思った。


「今日は蚤の市でギフティーに似合いそうな緑色のカフスボタンを見つけて思わず買ってしまった。どうせ贈れないのに……」


「今日はキース様の手伝いでフィールドワークに出かけて、そこで図鑑な載っていない新種の植物を見つけた。

 ギフティーがいたらきっと二人で大いに盛り上がれたのに……」


「クラスメイトと最近評判だというケーキを食べに出かけた。おいしいというよりあまりにも甘過ぎて驚いてしまった。

 ギフティーだったら、一口食べたら涙目になってしまうに違いないわ……」

 

 等々。

 しかし、人の日記を見ようだなんて、なんてことを言うの! 

 文句を言いたかったけれど、そもそも二年前に勘違いをしたと気付いた後も、そのまま音信不通にしていた自分が悪い。

 いくら彼のために身を引くつもりだったとはいえ、今改めて思い返してみると、自分のとった行動は相手の気持ちを考えない独りよがりなものだったように思えた。

 謝罪の意を示すためにも日記を見せた方がいいのかしら、と思いかけたとき、ふと閃いたことがあった。


 リーチェはギフティーから体を離すと、壁際の縦二つ重ねて積んであった木箱を指差してこう言った。


「あれは王都の自宅へ送る荷で、貴方への土産もたくさんに入っているの。そして日記もね」


 学生アパートメントのそれほど広くない部屋の中は、すっかり片付けられている。

 残されているのは元々設置されていたと思われる家具と、二つの木箱、そして大きめの旅行鞄が二つ。

 それに、今日の卒業式に着ると思われるドレス一式と、動きやすそうな外着がハンガーに掛けれてあるだけだ。

 これを見られたくて必死に彼を部屋に入れるまいとしていたのだが、彼女はこの状況を逆手に取ることにしたのだ。


「部屋の片付けはすでに済ませてあるの。卒業式の後、すぐに帰国しようと思っていたから。

 あの木箱も配送手続きが完了していて、朝一で引き取りに来てくれる予定になっているのよ。

 その中を見れば私の気持ちが分かると思うわ。つまり、証拠はあの中に入っているの。だから、帰国後に見せるわ。それでいいわよね?」


 リーチェは嘘をつくのが苦手だったので、内心かなり緊張していた。胸の鼓動が煩くて聞こえてしまうのではないかと思えるほどバクバクしていた。

 しかし、その言葉の中には真実も多分に含まれていたので、どうにか平静を装うことができた。

 そう。立つ鳥跡を濁さず。

 彼女は今日自分の存在を消す予定だったのだ。だからこそ完璧に片付けをしていた。

 木箱の配送手続きをしていたのも本当のことだった。


「へぇ〜。そうなんだ。それじゃあ仕方ないね。釘を抜いて中を確かめる時間はもうなさそうだしね。

 帰国後楽しみにしているよ」


 ギフティーは、ごく一部の信頼している人間にしか見せない、胡散臭い笑みを浮かべながらそう言った。

 そして続けてこんな爆弾発言をした。


「ねぇ。二年間の証拠は今見せられなくても、君が今僕をどう思っているかはすぐに証明できるよね?」


「えっ?」


 リーチェはその言葉に思わずギフティーの瞳を注視してしまった。

 昔と変わらない美しい黒曜石のように輝く瞳には、軽い言葉とは裏腹に、真剣そのものだった。


(ああ。彼の瞳は幼いころからずっと、雄弁に私への思いを伝えくれていたわね。

 自分に自信がなくてそれを信じようとしなかったけれど)


「あの子の瞳には貴女しか映らないの。だって特殊なフィルターの持ち主だから。

 今は無理だとしても、もしそれを理解できるようになったら、いつか彼のその思いを受け取ってやってほしいの」


 母国の王立学園に入学してしばらくしたころ、リーチェはフルーラ夫人にこう言われた。



「いくら幼なじみだからといって、あなたなんかがオーウェン子爵令息の側にいつまでもしがみついるのはよくないわ。

 分不相応よ。身の程知りなさい」


「子爵家とはいえ、オーウェン家は建国時代から続く名家なのよ。新興男爵家となんて縁を結ぶはずがないでしょ。勘違いをしてはだめよ。

 あなたのために忠告してるのよ」


 入学するまではいつもギフティーに守られてきた。それゆえに、これまで聞かずに済んでいた悪意のこもった周囲からの言葉の数々に、正直リーチェの心が折れそうになった。

 そんなときだった。

 そして夫人はこう続けた。


「それにね、特殊フィルターの持ち主はギフティーだけじゃなくて貴女もなのよ。

 貴女には真実を見抜ける力があるの。

 だから今すぐは無理だとしても、この先あの子のことを本当に愛している、失いたくない人間なのだと見極めたときには、躊躇ってはだめよ。

 何があっても手に入れなさい。そうしないと一生苦しむことになってしまうから。

 私は息子だけではなくて、貴女の幸せも心から祈っているのよ。それだけは忘れないで」


 フルーラ夫人のあのときの言葉を思い出した途端、彼女の瞳から涙が思わず溢れ出した。


(フルーラ様、大分遅くなってしまいましたが、ようやく私は自分にとって本当に大切で貴いものが何なのか、それを見極めることができました。

 絶対に手放したりしません)


 リーチェはギフティーの胸に両手を押し付けて背伸びをした。そして彼の顔に自分の顔を寄せて、優しく口付けをしたのだった。


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