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年下天使な幼なじみから、君からの贈り物はもういらないと拒否されてしまった  作者: 悠木 源基


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第11章 従姉妹とのやり取り


「ねぇ、それってさ、本人は立派な人かもしれないけれど、王太子殿下と同じくらい面倒な身内がいるよね?」


「ええ、そうね。貴方をしつこく追い回し、リーチェに絶えず嫌がらせをしてくる妹君が。

 でも、私が義理の姉になれば、貴方やリーチェを守ってあげられると思うわよ」


「よしてくれ。僕はそんなことは望まない。リーチェも同じだ」


 珍しく本気で怒りを表した従兄弟に彼女は嬉しくなって、ごめんと小さく笑った。

 そしてこう言った。


「格上の相手からの申し込みだから、無下にはできないわ。

 だから顔合わせはするけれど、きちんと妹さんのことは訊ねるつもりよ。

 対策を何も考えていないことが分かったら、その場で断るわ。

 お父様も私が不幸になるような結婚は、どんな手を使っても無くすと言ってくれているし」


 マリアンと顔合わせをする予定のマランディア侯爵令息のキースは、この国の学園には入らず、とある国へ留学し、卒業後もそのままそちら国の大学で学んでいるのだという。

 しかし、学年度末の休暇で間もなく一時帰国するので、そのときに会う予定になったらしい。


「きっちり見極めてから返事をするわ」


 そうマリアンは言った。

 ところが、それからわずか一月後にマリアンはそのキースと婚約していた。

 彼は顔合わせの席で、学園では妹が迷惑をかけて申し訳なかったと、いきなり彼女に謝罪したのだという。

 ギフティーやリーチェにも謝罪に行くとも。


 彼の妹は元々甘えん坊でわがままなところがあったので、兄として厳しく接していたという。

 しかし、彼が家から離れている間に、両親は娘をさらに溺愛して甘やかしていたらしい。

 母国の友人からの手紙で、妹に関する悪い噂を聞いて、両親に問いただしたのだが、はっきりしなかった。

 それゆえに縁談の話が出たときに、その相手であるマリアンと、自分の妹ローゼマリアについても個人的に調査をしたらしい。

 現状を知った彼は両親を厳しく叱責し、自分達で娘を矯正することが難しいというのならば、専門家に任せるべきだと主張した。

 それができないのであれば、この婚約は受けられない。というか、今後誰とも結婚はしないと宣言したそうだ。

 

 その結果、この学年が修了したら、彼の妹は規律の厳しい修道院付属の全寮制の学び舎に転校させることに決まったのだという。

 そしてもしそこでも矯正が不可とされたら、そのまま修道院に入れることになったようだ。

 それを聞かされたマリアンは、この人なら信用できるし、共に歩いて行けると思ったそうだ。


「とてもモテる人だと噂で聞いていたから、マリアンが知らないところで恨みや妬みを買ったりしないかと心配していたんだ。

 けれど、そんなにクールで割り切れる人なら大丈夫そうだね。

 女性とは後腐れない付き合いをしてきているだろうし」


「あら意外。貴方に心配してもらえるとは思っていなかったわ。貴方の頭の中はリーチェのことばかりだから」


「そんなわけないだろう。僕の頭はね、常に色々なことを同時に考えているんだよ」


「そうね。凡人と一緒にしてはいけなかったわね」


 クスクスとマリアンは笑った。口では可愛くないことばかり言っていても、この従兄弟が優しいことはよくわかっていた。

 だからこそ彼には愛する女性と幸せになって欲しいと思っていた。

 もちろん自分も協力するつもりだったのだが、何せ従兄弟は目立つし、元々有名人だ。

 たとえマランディア侯爵令嬢ローゼマリア一人を排除したとしても、次から次へ身の程知らずの者達が湧いて出てくるだろう。男女関係なく。


「さっきも言ったけれど、リーチェはとてもモテるの」


「当然だろう。彼女は可愛いし性格がいい。しかも、頭もいいのだから」


「ごちそうさま。

 もちろんそのとおりなのだけれど、それだけじゃないの。

 男爵家の令嬢だから、下位貴族令息でも手が届くと思う愚か者達が多いのよ。

 その上高位貴族の家まで図々しいことを考えいるみたいなのよ。

 つまりね、学者とか研究者を目指している者たちは、高位貴族家の婿養子に入って領地経営や社交をさせられることを望んでいないの。

 そんなことをさせられるくらいなら、爵位が低くてもお金のある家の令嬢の方がいいと考える現実主義者もいるのよ。

 それどころか、たとえ相手が跡取り娘でなくても、援助してもらえるのなら、平民になってもいいと考える家も。


 貴方がリーチェを連れ回したから、色々な専門分野のお偉い方達が、息子の嫁に欲しいと思っている人が多いみたいなの。

 貴方の通訳ができるくらい優秀で、研究者に対する理解度が高い。しかもお金持ちの娘なのだから、彼らにとってリーチェは理想の相手でしょうね」


「はあ?」


「研究を続けるにはお金がかかるでしょ。

 だから、息子を理解して応援してくれる妻が欲しい。しかも後ろ盾になって資金援助してくれる家ならなお嬉しいということよ」


「息子には好きなことだけをやらせてやりたい。しかし嫁には一方的に尽くせというとことか? まるでたかりかヒモだな。

 相手(リーチェ)のことなんて一欠片も考えていない。普段は下位の者や平民を見下しているくせに、恥を知らないのか!」


 いつもは冷静沈着で、滅多に感情を表さないギフティーが青筋を立てて憤慨した。

 白磁の陶器のような肌をしているので、余計にそれが際立った。

 自分のせいでニーチェがそんな卑しい輩の目にとまってしまったのかと思うと、余計に腹立たしいのだろうとマリアンは思った。


「貴方は、どうするつもりなの? ちゃんと私の親友を守れるのかしら?」


「絶対に守る。来月、入学したらすぐに十五になるから、正式にプレセント家に婚約の申し込みをするよ。

 そうすれば横槍を入れられなくなるから」


「そうね。そうした方がいいわ。

 でも、婚約したからと言って安心はできないわ。だから、どうすれば彼女を守れるか、一度キース様に相談してみたらどうかしら?

 婚約前に我が家でも彼のことを調べたのよ。

 かなり女性にはもてていたみたいだけれど、それを上手にかわしていたみいで、いざこざは全く無かったみたい。

 何か参考になるかもしれないわよ」


 マリアンのアドバイスにギフティーは頷いた。

 そして、彼らの婚約パーティーに参加したときに、後で時間を取ってもらうことにしたのだ。

 リーチェはそんな二人のやり取りを知らなかったので、一人悶々と過ごしていた。

 というのも、先月久し振りに帰国した両親から、留学してみないかという話をされたからだった。




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