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ブルーライトニング  作者: toy


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68/121

ブルーライトニング 第68章

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第68章

 翌日の朝、ロビーが野菜のソテーを作り、マルスが踏み台の上に立ちフライパンでハムと卵を焼いていた。玲子はその様子をただ眺めていた。焼き加減を真剣な目で見つめるマルスはとても可愛い。これだけでも、十分なごちそうである。ロビーがときどきマルスに視線を送っているのは、細かな指示を出すために状況を確認しているからだろう。

 先進技術適用試作体シリーズであるロビーも、基本的には戦闘用ロボットだ。しかし、人間らしさを重視したアンドロイドと違って、メタロイドは「人間らしさ」の表現に頭脳資源を割く必要がない。そのぶん人工頭脳には余裕があり、家事用の機能を追加できるのだ。


「マルス、そろそろいいでしょう。お皿に移してください」

 ロビーが声をかけると、

「はーい」

とマルスは返事をし、フライパンから目玉焼きとハムを皿に盛りつけた。皿にはすでに野菜のソテーが添えてある。

 トースターがチンと鳴り、パンが焼き上がる。ロビーは温めておいたミルクココアをカップに注いだ。

「さあ、お嬢様。召し上がってください」

「ありがとう」

 玲子はそう言って席についた。マルスが横に座り、にこにこと玲子の顔を見ている。

「いただきます」

 玲子はマルスが作った目玉焼きに箸をつけた。黄身は玲子の好みに合わせて堅焼きにしてある。箸で切って口に運ぶと、ほろっとした黄身が、ちょうどよい塩味とともに口の中でほぐれた。

「おいしいよ、マルス」

 マルスはぱっと顔を明るくして、

「よかった」

と答える。


 自分で作るときには感じない、ちょっとした贅沢さがそこにはあった。

(いいな、こういうの。おばさんが“作ってもらいなさい”って言うのも分かる)

 玲子は、今まで味わったことのない高揚感の中で朝食を食べ終えた。

「ごちそうさま。おいしかったわ。ありがとう、二人とも」

「ようございました」

 ロビーが答える。マルスはうれしそうに、にこにこと笑っている。

「じゃあ、マルス。学校へ行こうか」

「はい」


 休日明けの学校では、恵を囲む同級生の輪ができていた。恵を襲撃した事件は大きく報道されたので、クラスメイトたちの関心は高かったのだ。

「けがは、なかった?」

 そう聞かれ、恵は首を振った。

「ユリやマルスがいたから大丈夫だったよ。それに、マルスのお姉さんも助けてくれたから」

「へえ、マルスのお姉さんもいたの? どんな人?」

「優しいけど、とっても強い人。1人をやっつけてくれたの」

「へー、すごい!」

 女子たちが一斉に騒ぐ。

「マルスもこっちにおいでよ」

 マルスも、恵を囲む輪の中に引っ張り込まれた。

「マルスは何人やっつけたの?」

「ふたりだよ」

 また女子たちがわっと湧く。

「えー、かっこいい!」

「どうやって、やっつけたの?」

 マルスは少し考えてから、説明を始めた。

「ぼくやユリちゃんみたいに家庭に入っているアンドロイドは、身近な人を守るために対人戦闘の訓練を受けるの。そこで、どうやったら相手を動けないようにしたり、気絶させたりできるかを学ぶんだ」

「へえ、ユリちゃんもそういうことやってるんだ」

 ユリも話に合わせて、

「ええ。私も訓練を受けてるわ。恵を守らないといけないから」

と口を添えた。

「マルスやユリは、かわいいだけじゃないんだね」

「私にもマルスやユリみたいなアンドロイドがいたらいいな。ねえ、高野さんはユリのこと、どう思ってるの?」

 話を振られた恵は、

「妹だと思ってるよ。私たちの家族だもの」

と照れくさそうに答える。

「マルスはどんな立場なの?」

「お姉ちゃんは、ぼくのことを弟だって言ってるよ。いつも優しくしてくれるの」

「そっかあ。マルスが弟ならいいなあ。私もほしいな。アンドロイドを買うには、どうしたらいいの?」

「ぼくたちは、ダグラス社からリースされているんだけどね」

「リースかあ」

「ほかの会社のアンドロイドだと、買い取りっていう場合もあるけどね」

とユリが言い足す。

「やっぱり、ダグラス社のアンドロイドは高いの?」

「うん、ちょっと割高かな」

とユリが答えた。

「その代わり、強いんだ」

「そういうことになるかな」

 そのとき、1人の女子がふと口を開いた。

「そういえば、リヨン大統領を守ったマーサって、マルスに似てるよね」

「ほんとだ。背格好がよく似てる!」

 わあっと、さらに大きな興奮が女子たちのあいだに広がる。

「マーサもぼくも、標準モデルに合わせて作られているから、似てるよ。多分、髪型を変えたらそっくりだと思う」

とマルスが答えた。

「標準モデル?」

「そう。顔つきとか体型とか、量産化を前提に規格化されたモデルのことなの。特注モデルもあるけど、標準モデルは安価なんだ」

 マルスはそう説明した。実際、彼は標準モデルに準拠して作られているので、嘘ではない。


 少し離れたところでそのやりとりを聞いていた守は、吹き出しそうになった。

(うわっ、マルス、うまいこと言うな)

 守は、マルスがマーサそのものなのだろうと、なんとなく考えていたからだ。

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