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ブルーライトニング  作者: toy


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47/121

ブルーライトニング 第47章

 マスコミはダグラスが危険なロボットを作ったと主張する。だが、牧原は真っ向からそれに反論するのだった。

 市長の牧原と海軍長官の高野は、並んで記者会見に臨んだ。

「本日、ガバメント社の一方的な申し入れで行われた、同社ロボットとダグラス社アンドロイド〈マーサ〉の決闘は、マーサの勝利に終わりました。防衛軍からは海軍の装備計画の見直し要請がありましたが、両者の性能差は明白であり、計画を変更する必要はありません」

 記者席がざわつく中、牧原は間髪を入れず続ける。

「決闘の最中、誠に遺憾ながら、ガバメント社のロボットは観客席に向けてビーム砲の発射を試みました」

 背後のスクリーンに映像が映る。腕部ビーム砲がスローモーションで観客席へと向きを変える。続いて正面カメラの映像。砲口が真正面から観客席を捉える。

「スタジアムの地面をえぐる出力の兵器を観客へ向けた事実は、人命軽視そのものです」


「捏造だ!」と罵声が飛ぶ。

「この映像はネットで公開します。真偽は各自で検証してください」

 次の映像へ切り替わる。地上を高速で滑走するマーサが、ライトセイバーで砲身を切断するシーンだ。

「危険を察知したマーサは、即座に砲身を破壊し、ロボット本体も無力化しました。そもそも、地上で高速機動するマーサを、ガバメント社のロボットは捉えられなかった。優劣は明らかです」


 牧原の声音が、一段強まる。

「私はガバメント社に問いたい。観客を集めた決闘の場で、なぜ観客席に砲口を向けたのか」

「ダグラスのアンドロイドが観客の前にいたからだ」という声が飛ぶ。牧原は、あらかじめ用意していた別角度の映像に切り替えた。

「マーサは終始『地上』で戦っています。観客の頭上に射線が延びることを避けるため、あえて跳躍を控えた。さらに銃火器ではなく、ライトセイバーを選択したのも、不測の流れ弾を避けるためです。どちらが人間にとって危険か、言うまでもないでしょう」


 質疑に移る。

「ダグラス製アンドロイドは人類の脅威だ。市長は直ちに破棄を命ずるべきだ」

「繰り返します。脅威はガバメント社のロボットです。説明が得られない限り、防衛軍には同社ロボットの使用禁止を命じます」

「ダグラスの危険性は、4年前から裁判でも議論されているところです」

「4年前に暴走し、民間人を危険に晒したのはガバメント社のロボットです。ソレイユは民間人を救うため、ロボットを破壊しただけです。加えて、同社のロボットは他のシティの展示会でも度々暴走し負傷者を出している。私はこれらを『事故』とは見なしません」


 司令部で中継を見ていたスコットが、西郷に顔を向ける。

「君の読みどおり、観客席を狙ってきたな。ボールの全方位映像、上出来だ」

 球形監視ロボット〈ボール〉の配置を手配したのは西郷だ。彼は口元だけで笑った。

「連中が各地で繰り返している手です。今回も同じと見るのが自然でしょう」

 スコットは、露骨な軽蔑を隠そうともしない。

「相変わらず、ダグラス社を危険視する記者がいる」

「小泉議員の子飼いの記者です。ピースメーカーも動くでしょうが、牧原市長は今度は譲歩しないでしょう」

「マルスにソレイユの轍を踏ませない。今回は徹底的に戦う。川崎先生、海軍の対応は?」

 川崎は穏やかに頷いた。

「任せてください」

 スコットは腕を組み、眉間に皺を寄せる。

「それにしても、奴らの動きはあからさま過ぎる。何を狙った?」

「マーサが観客を庇って砲の射線に入る、と踏んだのでしょう。リヨン大統領護衛時の再現です」西郷の声音には、軽い嘲りが混じっていた。

「なるほど。だからライトセイバーで相殺できない大出力砲を持ち込んだか。だがマルスはよくやった。まさに傑作機だ」

「敷島博士と上原博士の最高傑作です」と川崎。

「次の手は?」とスコット。

「牧原市長や高野長官への直接テロは警備が堅く、動きが鈍いです。いま活発なのは、高野長官のご令嬢を狙う線。これは小泉議員の私怨です」

「子どもを巻き込むとは」

「護衛はルーナからマルスへ引き継ぎ、指揮は引き続きルーナに。ルーナは適任です」

「最初からその布石で、ルーナを学校へ?」とスコットが睨む。

「ソレイユの前例からみても、学校は効果的です。それだけです」

 かつての教え子を見る川崎の視線は、柔らかかった。


 上原と一緒に帰宅したマルスを、玲子が抱きしめた。

「おかえり、マルス。よく頑張ったわ。本当によかった!」

「ありがとう、お姉ちゃん」

 上原が続ける。

「とんだ茶番だったけど、大事に至らず何より。観客席に撃ち込まれなくて、本当に良かった」

 玲子の表情が曇る。

「市長の言ってたこと、やっぱり本当なの?」

 マルスが控えめに頷いた。

「本当だよ。ゼムから注意は受けてたけど、まさかと思ってた。砲身が観客席を向いた瞬間、最優先で破壊したんだよ」

 上原が、ため息まじりに付け加える。

「相手はね、マルスが射線に身を投げ出すと踏んで、大出力のビーム砲を持ち込んだの。ライトセイバーじゃ受けきれないやつ。だからマルスはロボットを破壊するしかなかったの。マルスはよくやったわ」

「じゃあ、マルスはみんなを守ったんだね。ほんと、いい子」

 玲子はマルスの頭を撫でる。マルスは少し照れて笑った。

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