↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーライトニング  作者: toy


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/121

ブルーライトニング 第45章

玲子とマルスは、瑞穂と守の姉弟とデートに行く。玲子と並んで歩く守は、玲子に相談事をしてきたのだった。

「ごめんね。お姉ちゃんがマルスを取っちゃって」

 並んで歩きながら、守が玲子に謝る。少し前では、瑞穂がマルスと手をつないで楽しそうに歩いている。玲子はその様子を満足そうに見つめて、

「いいのよ。マルスはいろんな人にかわいがってもらった方がいいし、今日は守くんとのデートも楽しみだったから」

 そう答えると、守は照れてうつむいた。

 瑞穂は守のことを「かわいくない」なんて言うが、そんなことはない。言い返す口の達者さが、どこか由美子を思い出させる。男女の違いはあっても、少し生意気で、でも情に厚いところがよく似ているのだ。瑞穂に減らず口をたたくわりに、守は案外、瑞穂に甘えている。以前は玲子にも遠慮がちに甘えてきた。

 さすがに初等部六年になって、手をつないで歩くのは照れくさいのだろう。守は玲子のとなりを、同じ歩調で静かに歩く。それだけで、玲子の心は不思議と穏やかになった。

「玲子さん、ちょっと聞いてもいい?」

「なに?」

「ソレイユは、どうして玲子さんの“友達”でいられるの?」

「友達だからよ。それ以上の理由なんてないわ」

 当たり前の答えに、守はなお首をかしげる。

「じゃあ、ロボットにとって“友達”って、なんだろう?」

「どうしてそう思ったの?」

 言いかけて、玲子ははっとする。

「もしかして、ルーナに“友達になって”って言われた?」

 図星をつかれ、守は目を丸くした。

「どうしてわかるの?」

「ルーナから聞いたの。クラスに仲良くなりたい子がいるって。先週のことだよ。私は“いいじゃない”って答えたの」

「玲子さん、ルーナとも友達なんだ」

「ええ。私はずっとそう思ってた。でも、ルーナは“友達”の意味を、先週まではよく理解してなかったの」

「昨日、ルーナに言われたんだ。“友達になって”って。ぼくは“いいよ”って返したけど、ふと考えちゃって。ロボットにとっての友達って何だろう、ぼくに何ができるんだろうって」

 こういう誠実さが、守のいいところだ。玲子は微笑む。

「ルーナは守くんを信頼してる。だから、守くんもルーナを信じてあげればいい。あとは、自分にできることをするだけ」

「それだけでいいのかな」

「うん、それでいい」

 言いながら、玲子の胸にも後ろめたさがある。自分だって、マルスに“できること”しかしていないのだから、それ以上を他人に求めることはできない。それでもマルスは、玲子のことをマスターであり、お姉ちゃんと呼んでくれるのだ。

「それにね、ルーナが言ってた。守くんがとても親切にしてくれたって。だから、いままで通りで大丈夫」

「そっか」

 前を歩いていた瑞穂が振り向いた。

「ねえ、ちょうどいいから、あの喫茶店でお茶していかない?」

「いいね。守くん、行こう」

「うん」

 店内は空いていて、窓際の席に通された。ウェイターが注文を取りに来る。

「紅茶2つで。守はジュースでいい?」

「うん。オレンジジュース」

「じゃあ、紅茶2つとオレンジジュースを」

 瑞穂に続いて、玲子が付け加える。

「それから、この子はロボットなので、場所代を」

「お客様、当店は付き添いのロボット2名まで無料でございます」

「あっ、そうなんですね。お願いします」

「紅茶2つとオレンジジュースをお持ちします」

 ウェイターが下がると、玲子が言った。

「こういう“ロボット2名まで無料”の店、増えてるね」

「うちもそうしてるよ」と瑞穂。

「もともとは、一人の客がロボットを山ほど連れ込んで、店を占拠したのが発端。場所代って、そういう迷惑行為の抑止なの。ロボットの一人や二人なら常識の範囲でしょ」

「まあ、確かに」

「しかも、その迷惑客が連れてたの、ロボットのコスプレした“人間”だったんだって。ただの厄介者よ」

 瑞穂が憤慨して言い切ると、マルスがぱちぱちと瞬きをした。瑞穂はマルスの頭をやさしく撫でる。

「ロボットは悪くない。悪いのは人間のマナーだよ」

 やがてポットの紅茶とオレンジジュースが運ばれてきた。

 カップを口に運びながら、玲子は思い出したように守へ向き直る。

「こんどね、マルスが守くんのクラスに転入すると思うの。そうなったらよろしくね」

「えっ?」瑞穂と守が同時に声を上げた。

「玲子と同じ、というか、私たちのクラスじゃないの?」

 3人が通う学校はロボットの受け入れに寛容で、たいていはオーナーの子どもと同じクラスになる。2人が驚くのも無理はない。

「多分、守くんのクラスになると思う」

「まあ、私たちのクラスには伊藤綾がいるし、守のクラスのほうがいいかも」と瑞穂はすぐに納得した。

「じゃあ、ぼくのクラス、ロボットが3人になるんだ」

「ううん、多分マルスは、ルーナと入れ違いになる。守くん、ルーナから何か聞いてない?」

「えっ、聞いてない」

「そっか。隠してるのかな。でも守くんに隠し事はダメだね。私からルーナに言っておく」

「せっかく友達になれたのに、さびしいな」

「だから“友達になって”って言ったんだと思うよ」

「また会えるかな?」

「会えると思うよ」

「そっか」

 守は気持ちを切り替えるように顔を上げた。

「マルスは、いつから学校に来るの?」

「手続きがあるから、1週間後くらいかな。マルスもそう聞いてる?」

「うん、“1週間くらい先”って聞いてる」

「へえ、玲子とマルスが一緒に通学か。楽しそう」

 瑞穂の笑顔につられて、玲子の胸にも温かな灯がともる。その灯りがいつまで続くのかを思うと、ほんの少しだけ、切なさも混じった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。