ブルーライトニング 第41章
プレスト海軍の予測どおり、ドラグーンがフォルテシティに襲いかかる。アトスは仲間を率い、迎撃に向かった。初陣のリョーカは・・・
ラルゴシティ沖で演習に参加していたプレスト海軍第7艦隊は、プレストシティへの帰途、西郷の指示で小型無人哨戒機を飛ばし、ガバメント社の工場を監視していた。
深夜、予想どおり不審な大型貨物車両がおよそ50台、工場からばらばらに出発するのを確認した。複数の無人哨戒機が、それぞれの車列を追尾し続けた。
明け方、車列は海岸近くでひとつに合流し、そこから7機のドラグーン、40台の装甲車、6機の飛行ユニットが降ろされた。
第7艦隊副司令のエドワーズ中将は、司令官付の少女型アンドロイド《マイア》の報告を受け、ブリッジのモニターを確認した。エドワーズは西郷に比べて武人的な雰囲気を持つ、名実ともに武名高い男である。
「マイア、各車両の行動はすべて記録してあるな」
「はい。ガバメント社関連工場の出発時点から、すべてモニターできています」
マイアはエレクトラ同様、専用シートに腰掛け、巡洋艦ジュピターのコンピューターと直結している。副官のジェーン・ウエスト中佐が、モニターから目を離さぬまま問う。
「これでガバメント社を追い込めますか?」
「いや、まだ無理だ。でっち上げだと反論されるだろうし、連邦軍司令部の突き崩しも道半ばだ。もう少し“マフィア”が、ガバメント傀儡の軍人を排除しないとな」
「マフィア」とは連邦軍司令部内で、台頭しつつある「改革派」の名である。
リヨン大統領の就任後、彼らは少しずつ司令部に浸透し、ガバメント社の影響を排除しつつあった。ジェーンは憮然とした表情で言った。
「悔しいですね」
「焦るな。亡霊作戦は順調だ。状況はいずれ変わる。情報は切り札だ。切り札は、最も効果的なときに切るのがセオリーだよ。それに、我々の情報収集能力を、むやみに明るみに出すわけにもいかない」
エドワーズはオペレーターに、ドラグーン部隊の位置と規模をフォルテシティ防衛軍へ通報するよう指示した。
「奇襲に不利な昼間を選んだのは、出勤した従業員ごと工場を破壊するのが目的かもしれん」
「それと、ブラックタイタンを破壊する映像の取得でしょう」
「だろうな。飛行ユニットは撮影隊だろう。まずはタイタンのデータを取られないよう、先に潰してほしいところだ」
ローウェルインダストリーは臨時に生産ラインを停止し、従業員の出勤を取りやめていた。設備維持と保安要員のみが残り、工場は警戒態勢に入っている。
フォルテシティ防衛軍司令部も厳戒態勢を敷き、早期警戒機・哨戒機を上げて監視を強化していた。第7艦隊からの情報を受けるや、ローウェルインダストリーに派遣済みの部隊へ迎撃を命じる。
待機していたマトソンやルイスは、無人型ドルフィンを率いてローウェルインダストリーの空港から発進した。続いてメタロイド50体を満載した輸送機、さらにブラックタイタンとブルータイタン3機がフライトユニットを装着して後を追う。
フライトユニットはタイタンへエネルギーを供給し、タイタンは自らのフォースジェットで飛行する。戦闘時には分離して無人戦闘機となり、タイタンの攻撃を支援する。
先行するドルフィンは、接近するドラグーンに対し定型どおりの警告を発したが、応答はなく、無視された。ルイス機の後席に座るリームが、マトソンへ回線を開く。
「マトソン大佐、ドラグーンにミサイルは通用しません。まずは飛行ユニットを。おそらくカメラ搭載の無人データ収集機です」
「よし、真っ先に潰せ!」
マトソン機、ルイス機、そして無人型ドルフィンが一斉にミサイルを発射した。リームは複数のミサイルとリンクし、その機動を一手に制御して飛行ユニットを狙う。ドラグーンと装甲車が対空レーザーで迎撃するが、リーム制御の複雑な軌道を描くミサイルを捉えきれない。6機の飛行体は回避を試みるも、次々と炎を引いて墜ちていった。
リームは指示を出す。
「動きから見て、ドラグーンも装甲車も無人機です。みんな、遠慮なくやっちゃって!」
アトス、ポルトス、アラミスのブルータイタンはフライトユニットを切り離して着地し、即座に戦闘態勢をとる。
「リョーカ、僕らのフライトユニットのコントロールを任せる。自由に使え!」
「了解。アクティブリレーション起動。メタロイド、フライトユニット全機をわたしの管制下に」
「アクティブリレーション」は「サブロボット」を管制するシステムだ。
リョーカのブラックタイタンもフライトユニットを切り離し着地した。7機のドラグーンはブルータイタン3機を半ば無視し、ブラックタイタンへビームを集中する。ブラックタイタンは腕部の遮蔽フィールドでそれを受け止め、リョーカは4機のフライトユニットに攻撃指示を送った。
4機のフライトユニットが連携して大出力ビームを放つ。攻撃のため一瞬、遮蔽を解いた2機のドラグーンは頭部や上半身を破壊され、行動不能となった。ブラックタイタンは肩部の対地ビームで2機に止めを刺す。存在を半ば無視されていたブルータイタン3機は、その隙にリョーカの指定した目標へ突入した。
アトス機は2本のライトセイバーを操り敵の攻撃を払いのけながら上半身を破砕する。ポルトス機は遮蔽フィールドでビームを受け流し、ライトランサーでコックピットを貫いた。アラミス機は右腕のビームランチャーでブラックタイタンを狙う2機に連続損傷を与え、最後はリームが操るドルフィンのミサイルがとどめをさす。
「ブラックタイタンだけ狙うなんて、単純だな」
アトスは通信越しに半ばあきれた声を漏らした。ニーナ提供のデータによれば、ドラグーンはもっと連携していたようだったが、今回のドラグーンはまったくそれができていない。
一方、輸送機から展開したメタロイドは人間サイズの火器しか扱えないため、本来ならドラグーン撃破は困難だった。しかし、メタロイドの半数が、残る2機のドラグーンに集中して取り付き、絶え間なく攻撃を加えることで、遮蔽フィールド内に釘付けにすることに成功した。残りの半数は後方の装甲車群へ襲いかかった。
戦車に歩兵が挑む構図だが、その“歩兵”は戦車並みの火力と、常識を超えた速度を備えていた。メタロイドたちは次々と装甲車を各個撃破していく。
ドラグーン2機を完全破壊したリョーカの指示で、メタロイドは一斉に目標を装甲車へ切り替えた。拘束を解かれたドラグーンは格下のメタロイドを無視し、迫るブラックタイタンへビームを浴びせるが、ブラックタイタンの遮蔽フィールドに阻まれる。
ライトセイバーを抜き、接近したブラックタイタンに対し、ドラグーンはライフルを捨てライトセイバーで迎撃する。しかしリョーカの敵ではなかった。フライトユニットと連携するブラックタイタンは、残る2機のドラグーンを翻弄する。リョーカはライトセイバーを振るい、2機のドラグーンを各個撃破した。
残る装甲車も、三銃士のタイタンとメタロイドの攻撃で全滅し、戦闘は10分足らずで終了した。
最初にミサイルを撃っただけで、その後ほとんど出番のなかったマトソンがつぶやく。
「もっと手こずるかと思ったが」
「セレクターズも無人兵器を使うようになりましたが、連携行動が取れない単純な人工頭脳なので、むしろ対処は容易でした」とリームが応じた。
「自立ロボットがあればテロリストを養成する必要はないだろうが、こうも相手にならん物を出してきて、セレクターズは何を考えている?」
「そのうちバージョンアップして手に負えなくなるかもしれません。油断は禁物です」とルイス。
「もっともだ」
マトソンはリョーカの搭乗するブラックタイタンを見やる。
「それにしても、アクティブリレーションか。リョーカの撃破数がすごい。プレストシティへ引き渡すのが惜しくなるな」
「ダメですよ大佐。リョーカは私の妹です。これから量産されるので、それを待ってください」
ルイスの返答に、マトソンは苦笑するしかなかった。
セレクターズ指揮官モルガンは、潜水母艦の司令室で攻撃部隊をモニターしていた。データ収集用無人機が先に撃墜され、期待した映像データはほとんど得られなかったが、それでも7機のドラグーンからの戦闘データだけはかろうじて回収できた。
だが、改良型ドラグーン7機と自爆装甲車群が瞬く間に壊滅した事実は変わらない。司令室の空気は重苦しかった。
「まったく、相手にならんな」とモルガン。
「アルトシティではブラックタイタンと互角に見えましたが、今回は歯が立ちませんでしたね」とブライトが言う。
「操縦しているロボットが違うのだろう。タイタンシリーズは、人サイズのロボットが制御する。無駄な設計だと思っていたが、意味のある設計だったわけだ。操縦ロボットが変わるだけで、ここまで性能が変わるとはな。ライトセイバーの勝負も話にならん」
「ファントムのロボットはライトセイバーの使い手。無効化しない限り勝てませんね」
「ライトセイバーはフォースフィールドの応用兵器だ。どんな装甲でも紙のように切り刻む。防ぐのは、同じ応用である遮蔽フィールドか、セイバーでの相殺しかない。だが遮蔽を張れば、こちらの攻撃はできん」
「ファントムは、その攻守の切り替えが見事です」
「カタリナの後ろにいる連中に、思い知らせる必要がある。ガバメントめ、自分たちの技術が遅れていることを理解しているのか。正面から戦って勝てる相手ではないぞ」
モルガンは、今ごろカタリナの背後にいるガバメント社首脳陣が、どんな顔をしているかを想像せずにはいられなかった。これほどの大敗になるとは、彼らも予想していなかったはずだ。
11月20日に加筆




