ブルーライトニング 第25章 今のままでいい
失ったものは戻らない。
それでも、人は誰かと出会い、少しずつ前を向いていく。
家族ではない。けれど家族のような存在。
そんな距離が、いつの間にか心を温めていることもある。
穏やかな朝の中で、玲子とマルスはまた一歩、お互いに近づいていく。
ブルーライトニング 第25章
「今のままでいい」
ぼんやりした意識の底で、玲子は思った。
「あれ? 由美子、なんで私の布団にいるの?」
「寒いから!」
「もう、しょうがないなあ」
玲子は布団を由美子のほうへ寄せ、自分の背中にひやりとした空気を感じた。
「お姉ちゃんって、あったかいね」
小さな体を抱き寄せながら(こんなに小さかったっけ)と思った瞬間、ふっと意識が澄む。腕の中にいたのは、マルスだった。
「夢か」
マルスは玲子に抱かれたまま、ぱっちり目を開いて顔をのぞき込む。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「ううん、なんでもない。今、何時?」
「五時五十五分だよ」
「じゃあ、起きよっか」
「うん」
玲子のTシャツをパジャマ代わりに着たマルスは、袖口や裾から手足が伸びていて、滑稽なのに可愛らしい。マルスはシャツを脱いで首をかしげた。
「これ、どうしておけばいいの?」
「畳んでベッドの上に置いておいて」
戸惑う様子に、玲子はシャツを受け取って手早く畳み、ベッドへ置く。
「こうしておけばいいの」
「うん、わかった」
着替えながらマルスが言う。
「お姉ちゃん、どうしてぼくを“ユミコ”って呼んだの?」
玲子はタンスから自分の服を出しながら首をかしげる。
「そんなこと言ってた?」
「うん」
玲子は苦笑した。
「寝ぼけてたんだよ。マルスのこと、妹と間違えちゃった。年格好が似てるから」
「そうなんだ」
着替えを終えたマルスが、背筋を伸ばす。
「お姉ちゃん、ぼく、ロビーのお手伝いしてくるね」
「うん、お願い」
マルスは元気よく部屋を出ていく。玲子は服を整えながら、小さくつぶやいた。
「最新鋭の軍用アンドロイド、って感じじゃないよね」
玲子は思いを巡らす。約120年前、自立型ロボット兵器が暴走し、無差別の殺戮と破壊で既存の国家体系は崩壊した。復興の柱となったのが、世界各地に生まれた「シティ」と呼ばれる都市国家である。
やがて世界連邦が設立され、復興が一段落したおよそ十年前から、女性指導者カタリナが率いる「セレクターズ」が台頭する。
彼らは“劣等人種の淘汰”を掲げ、各シティへの武力攻撃を続けてきた。
連邦政府は、経済力のあるシティに戦闘艦隊の結成・運用を要請した。極東に位置するプレストシティは経済力が高く、戦闘艦隊の運用を任されることになった。政府は沿岸警備を担っていた海軍を防衛軍から分離し、第七艦隊を編成した。度重なる失態でテロの被害を招き、信頼を失っていた防衛軍に運用を委ねるのは得策ではないと判断したためだ。
装備選定では、議会勢力の一部が推すガバメント社案を退け、運用コストと安定性の観点から、ローウェル社とダグラス社のシステムを採用した。
この辺りまでの経緯は、玲子も一般常識として知っている。ただ、九歳ほどの子供の姿をしたマルスを、なぜ海軍が開発したのか。そこには疑問が残る。
けれど今は、依頼された「家庭でのテスト」に協力しよう、と心に決めていた。
マルスがキッチンへ行くと、上原がロビーと一緒に朝食の支度をしていた。今日はいつもより早い。
上原はマルスの人工頭脳を開発した技術者のひとりで、縁戚ではないが、両親を亡くした玲子の母親代わりだ。ロビーはダグラス・インダストリー製の人型ロボット試作機で、かつてプレスト海軍ロボット部隊のリーダーだったが、今は上原と敷島の住居を警護しつつ、家事もこなしている。
「上原博士、ロビー。おはようございます」
「おはよう、マルス。玲子はよく眠ってた?」
上原は手を止めずに尋ねる。
「はい、よく眠っていました」
マルスはロビーからデータリンクで指示を受け、手際よくテーブルを整えた。
「それはよかった」
「でも、明け方にぼくを抱きしめて“ユミコ”ってつぶやいてました」
上原の手が一瞬止まる。
「そのときの玲子、苦しそうだった?」
「いえ、優しい声でした」
「そう。なら心配ないわ」
上原はフライパンに卵液を流し込み、オムレツを焼き始める。
「博士、ユミコって、お姉ちゃんの妹?」
「アルトシティのテロで玲子は家族を亡くしているの、聞いてる? 由美子は玲子の亡くなった妹よ。目の前でね。思い出して苦しくなるの。最近またアルトシティが攻撃されて、眠れない夜が続いてたから、ロビーがそばにいたんだけど」
「でも昨夜はロビーがいなかったよ」
「マルスがいたからよ。玲子、よく眠ってたんでしょ。この話はここまで」
ちょうど玲子の足音が近づいてきて、上原は話題を切った。
身支度を整えた玲子がキッチンへ入ると、マルスがきれいに食器を並べているところだった。
「おばさん、ロビー。おはよう」
「おはよう、玲子。今日は私が用意したの。たまにはね」
「ありがとう。マルスもちゃんと手伝えてる」
「うん。ロビーが教えてくれたから」
「おはようございます、お嬢様。マルスにはデータリンクで作業内容を伝えました。私が指示すれば、お嬢様の負担は軽くなるはずです」
ロボットがロボットをデータリンクで制御できることは、玲子も知っている。言葉より速く、正確に伝えられるのだ。
「おはよう」
伯父の敷島も顔を出す。
「おはよう、おじさん」
「今朝はご機嫌だな、玲子」
「そう?」
食事が始まってすぐ、マルスが真顔で訊いた。
「お姉ちゃんは、ぼくが女の子のほうがいい?」
「えっ?!」玲子は思わず顔を上げる。マルスの目は真剣だ。
「どうして、そんなこと?」
「ぼくのこと、女の子の名前で呼んだでしょ。だったら、女の子のほうがいいのかなって……」
玲子は明け方の夢を思い出し、きゅっと胸がつまる。
「ごめん、寝ぼけてただけ。マルスは今のままでいいの」
「そう? もし女の子だったら、ずっと一緒にいてもいい?」
「男の子のままでいいよ。私も、ずっと一緒にいられたらいいなって思ってる」
敷島は何も言わず、わずかにむすっとした表情をした。上原がのんびりした口調で口を挟む。
「もし玲子が女の子がいいって言うなら、外装を替えて女の子にするのは簡単よ」
「おばさんまで。私は今のマルスがいいの」
上原は口元をゆるめる。
「そう。じゃあ決まり。マルスもわかったわね。――さ、食べないと学校に遅れるわよ」
「玲子!」
通学路で背後から声が飛ぶ。
「瑞穂」
顔を合わせた途端、瑞穂が目を細めた。
「あれ、なんかいいことあった? ちょっと嬉しそう」
「そんなに、にやけてる?」
「にやけてはないけど、雰囲気がね」
二人は並んで歩き出す。
「で、何があったの?」
「アンドロイドの男の子を、一般家庭でテストするってことで預かってるの」
「弟ができたってこと?」
「一時的にね」
「おねだりしてみたら? テストが終わっても置いておいてって。玲子、いいお姉さんになるよ」
「どうかなあ」
「うちの守も玲子のこと大好きだし。いっそ守ととっかえっこしよ」
「守くん怒るよ、それ」
「もう聞こえてるけど。お姉ちゃん、勝手に取り引きしないで」
背後から初等部六年の守が割り込んでくる。
「あら、いたの?」と瑞穂はしれっと返す。
「いるさ。学校一緒でしょ」
玲子の学校は初等科から高等科までの一貫校だ。
「冗談よ、守くん。瑞穂、守くんのこと大好きなんだから」
「ちょっと玲子、悪い冗談やめて。守、かわいげないんだもん」
「“かわいい”って言われても別に」
守は不機嫌を隠さない。
「喧嘩できるのも仲がいい証拠だよ」
玲子は守を慰めるように言った。
「それより今日、ソレイユに会いに行けない? 部活休みなの」
玲子もソレイユに会ってみたいと思っていた。
「都合、聞いてみる」
「それならぼくも!」
「えー、守も行くの?」
「ソレイユに会ってみたい」
「いいよ、守くん。放課後、私たちを待っててね」
「うん、待ってる!」
「もう、守ったら玲子にだけは素直なんだから」
訓練ルーム。ゼム立ち会いのもと、ソレイユとマルスは模擬戦を重ねていた。マルスは能力をセーブし、ソレイユのレベルに合わせている。そうしなければ、たちまち圧倒してしまうからだ。
「やはり、ソレイユの戦い方は美しい」
一息ついたところで、ゼムが満足そうに言う。
「ゼム、あなたはそればかりね」
「マルスがその“美しさ”を会得すれば、もっと強くなる」
ゼムは腰のライトサーベルに手をかけた。
「早速だが、私とやってみよう」
始まった瞬間、ソレイユの視界は二人を捉えられなくなる。速すぎた。
ぼんやりした意識の底で、玲子は思った。
「あれ? 由美子、なんで私の布団にいるの?」
「寒いから!」
「もう、しょうがないなあ」
玲子は布団を由美子のほうへ寄せ、自分の背中にひやりとした空気を感じた。
「お姉ちゃんって、あったかいね」
小さな体を抱き寄せながら(こんなに小さかったっけ)と思った瞬間、ふっと意識が澄む。腕の中にいたのは、マルスだった。
「夢か」
マルスは玲子に抱かれたまま、ぱっちり目を開いて顔をのぞき込む。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「ううん、なんでもない。今、何時?」
「5時55分だよ」
「じゃあ、起きよっか」
「うん」
玲子のTシャツをパジャマ代わりに着たマルスは、袖口や裾から手足が伸びていて、滑稽なのに可愛らしい。マルスはシャツを脱いで首をかしげた。
「これ、どうしておけばいいの?」
「畳んでベッドの上に置いておいて」
戸惑う様子に、玲子はシャツを受け取って手早く畳み、ベッドへ置く。
「こうしておけばいいの」
「うん、わかった」
着替えながらマルスが言う。
「お姉ちゃん、どうしてぼくを“ユミコ”って呼んだの?」
玲子はタンスから自分の服を出しながら首をかしげる。
「そんなこと言ってた?」
「うん」
玲子は苦笑した。
「寝ぼけてたんだよ。マルスのこと、妹と間違えちゃった。年格好が似てるから」
「そうなんだ」
着替えを終えたマルスが、背筋を伸ばす。
「お姉ちゃん、ぼく、ロビーのお手伝いしてくるね」
「うん、お願い」
マルスは元気よく部屋を出ていく。玲子は服を整えながら、小さくつぶやいた。
「最新鋭の軍用アンドロイド、って感じじゃないよね」
玲子は思いを巡らす。約120年前、自立型ロボット兵器が暴走し、無差別の殺戮と破壊で既存の国家体系は崩壊した。復興の柱となったのが、世界各地に生まれた「シティ」と呼ばれる都市国家である。
やがて世界連邦が設立され、復興が一段落したおよそ10年前から、女性指導者カタリナが率いる「セレクターズ」が台頭する。彼らは“劣等人種の淘汰”を掲げ、各シティへの武力攻撃を続けてきた。
連邦政府は、経済力のあるシティに戦闘艦隊の結成・運用を要請した。極東に位置するプレストシティは経済力が高く、戦闘艦隊の運用を任されることになった。政府は沿岸警備を担っていた海軍を防衛軍から分離し、第7艦隊を編成した。度重なる失態でテロの被害を招き、信頼を失っていた防衛軍に運用を委ねるのは得策ではないと判断したためだ。
装備選定では、議会勢力の一部が推すガバメント社案を退け、運用コストと安定性の観点から、ローウェル社とダグラス社のシステムを採用した。
この辺りまでの経緯は、玲子も一般常識として知っている。ただ、9歳ほどの子供の姿をしたマルスを、なぜ海軍が開発したのか。そこには疑問が残る。
けれど今は、依頼された「家庭でのテスト」に協力しよう、と心に決めていた。
マルスがキッチンへ行くと、上原がロビーと一緒に朝食の支度をしていた。今日はいつもより早い。
上原はマルスの人工頭脳を開発した技術者のひとりで、縁戚ではないが、両親を亡くした玲子の母親代わりだ。ロビーはダグラス・インダストリー製の人型ロボット試作機で、かつてプレスト海軍ロボット部隊のリーダーだったが、今は上原と敷島の住居を警護しつつ、家事もこなしている。
「上原博士、ロビー。おはようございます」
「おはよう、マルス。私のことは玲子と同じでおばさんと呼べばいいわ。それで、玲子はよく眠ってた?」
上原は手を止めずに尋ねる。
「はい、よく眠っていました」
マルスはロビーからデータリンクで指示を受け、手際よくテーブルを整えた。
「それはよかった」
「でも、明け方にぼくを抱きしめて“ユミコ”ってつぶやいてました」
上原の手が一瞬止まる。
「そのときの玲子、苦しそうだった?」
「いえ、優しい声でした」
「そう。なら心配ないわ」
上原はフライパンに卵液を流し込み、オムレツを焼き始める。
「博士、ユミコって、お姉ちゃんの妹?」
「アルトシティのテロで玲子は家族を亡くしているの、聞いてる? 由美子は玲子の亡くなった妹よ。目の前でね。思い出して苦しくなるの。最近またアルトシティが攻撃されて、眠れない夜が続いてたから、ロビーがそばにいたんだけど」
「でも昨夜はロビーがいなかったよ」
「マルスがいたからよ。玲子、よく眠ってたんでしょ。さあ、この話はここまで」
ちょうど玲子の足音が近づいてきて、上原は話題を切った。
身支度を整えた玲子がキッチンへ入ると、マルスがきれいに食器を並べているところだった。
「おばさん、ロビー。おはよう」
「おはよう、玲子。今日は私が用意したの。たまにはね」
「ありがとう。マルスもちゃんと手伝えてる」
「うん。ロビーが教えてくれたから」
「おはようございます、お嬢様。マルスにはデータリンクで作業内容を伝えました。私が指示すれば、お嬢様の負担は軽くなるはずです」
ロボットがロボットをデータリンクで制御できることは、玲子も知っている。言葉より速く、正確に伝えられるのだ。
「おはよう」
伯父の敷島も顔を出す。
「おはよう、おじさん」
「今朝はご機嫌だな、玲子」
「そう?」
食事が始まってすぐ、マルスが真顔で訊いた。
「お姉ちゃんは、ぼくが女の子のほうがいい?」
「えっ?!」玲子は思わず顔を上げる。マルスの目は真剣だ。
「どうして、そんなこと?」
「ぼくのこと、女の子の名前で呼んだでしょ。だったら、女の子のほうがいいのかなって」
玲子は明け方の夢を思い出し、きゅっと胸がつまる。
「ごめん、寝ぼけてただけ。マルスは今のままでいいの」
「そう? もし女の子だったら、ずっと一緒にいてもいい?」
「男の子のままでいいよ。私も、ずっと一緒にいられたらいいなって思ってる」
敷島は何も言わず、わずかにむすっとした表情をした。上原がのんびりした口調で口を挟む。
「もし玲子が女の子がいいって言うなら、外装を替えて女の子にするのは簡単よ」
「おばさんまで。私は今のマルスがいいの」
上原は口元をゆるめる。
「そう。じゃあ決まり。マルスもわかったわね。さ、食べないと学校に遅れるわよ」
「玲子!」
通学路で背後から声が飛ぶ。
「瑞穂!」
顔を合わせた途端、瑞穂が目を細めた。
「あれ、なんかいいことあった? ちょっと嬉しそう」
「そんなに、にやけてる?」
「にやけてはないけど、雰囲気がね」
二人は並んで歩き出す。
「で、何があったの?」
「アンドロイドの男の子を、一般家庭でテストするってことで預かってるの」
「弟ができたってこと?」
「一時的にね」
「おねだりしてみたら? テストが終わっても置いておいてって。玲子、いいお姉さんになるよ」
「どうかなあ」
「うちの守も玲子のこと大好きだし。いっそ守ととっかえっこしよ」
「守くん怒るよ、それ」
「もう聞こえてるけど。お姉ちゃん、勝手に取り引きしないで」
背後から初等部6年の守が割り込んでくる。
「あら、いたの?」と瑞穂はしれっと返す。
「いるさ。学校一緒でしょ」
玲子の学校は初等科から高等科までの一貫校だ。
「冗談よ、守くん。瑞穂、守くんのこと大好きなんだから」
「ちょっと玲子、悪い冗談やめて。守、かわいげないんだもん」
「“かわいい”って言われても別に!」
守は不機嫌を隠さない。
「喧嘩できるのも仲がいい証拠だよ」
玲子は守を慰めるように言った。
「それより今日、ソレイユに会いに行けない? 部活休みなの」
玲子もソレイユに会ってみたいと思っていた。
「都合、聞いてみる」
「それならぼくも!」
「えー、守も行くの?」
「ソレイユに会ってみたい」
「いいよ、守くん。放課後、私たちを待っててね」
「うん、待ってる!」
「もう、守ったら玲子にだけは素直なんだから」
訓練ルームでは、ゼム立ち会いのもと、ソレイユとマルスは模擬戦を重ねていた。マルスは能力をセーブし、ソレイユのレベルに合わせている。そうしなければ、たちまちソレイユを圧倒してしまうからだ。
「やはり、ソレイユの戦い方は美しい」
一息ついたところで、ゼムが満足そうに言う。
「ゼム、あなたはそればかりね」
「マルスがその“美しさ”を会得すれば、もっと強くなる」
ゼムは腰のライトサーベルに手をかけた。
「早速だが、マルス、私とやってみよう」
始まった瞬間、ソレイユの視界は二人を捉えられなくなる。二人の動きは速すぎた。
不意に、マルスが壁へ叩きつけられる。ゼムは相変わらず容赦がない。衝撃緩衝材がなければ、ダメージは免れなかっただろう。
「なかなか、よくなってきたぞ、マルス」
評価の言葉に、マルスはうなずくだけ。
「もう一度いく」とゼムが言うと、
「うん」とマルスは短く答える。
模擬戦が再開。再び、二人の動きはソレイユの認識能力を超えた。
(ルーナには手加減するのに、マルスにはしないのね)
それが、リーダーとして認めるかどうかの線引きなのだろう。
次の瞬間、ゼムが動きを止めた。今度はマルスが吹き飛ばされていない。
「やるな。その調子だ」
「やった! 勝てた!」
マルスが無邪気に跳ねる。
「マルスが勝ったの?」とソレイユ。
「ああ。右腕を“飛ばされた”。致命傷ではないが戦闘不能だ。マルス、もう一歩踏み込めば腰のブロックを断てる。そこを切られれば、たいていのロボットは致命的だ。お前なら狙える」
ソレイユには、ゼムの声がどこか嬉しそうに聞こえた。
2026年8月14日加筆




