ブルーライトニング 第20章
旅客機を狙うテロリストの戦闘機。マルスとノーマのドルフィンは旅客機を救うべく、3機の戦闘機に戦いを挑む。
数分後、ミネルバの光学センサーがGA104便を追う3機の未確認機を捉えた。警戒中の哨戒機も、ジャミングを発する飛行体を捕捉し、ミサイルで攻撃する。それは単純な無人機だったらしく、すぐに撃墜された。
「敵攻撃機と巡航ミサイルを見逃すな!」
普段とは違う、西郷の鋭い声が飛ぶ。ミネルバはGA104便の航路と3機の動きを解析しながら、ドルフィンを誘導し、同時にGA104便との通信を試みた。
GA104便の機体が激しく揺れる。
「機長、左翼に被弾! 左翼端が脱落!」
「大丈夫だ、フォースジェットの出力補正で安定を保てる!」
「機長!」
「弱音を吐くな。迎撃システムの操作に専念しろ!」
副操縦士はレーザー迎撃システムを操作していた。それは後方から来るミサイルを撃ち落とせる簡易な装備だが、あくまで急場しのぎにすぎない。旅客機は執拗な攻撃を受け続けていた。そこにミネルバの通信が割り込む。
「GA104便へ、こちらプレスト海軍。11時の方向へ降下せよ。直下に迎撃機がいる。繰り返す、11時方向に降下せよ、救援機がすぐ下にいる!」
機長は誘導を信じた。機体を急降下させ、限界速度まで加速する。マイクを客室に切り替え、冷静な声で告げた。
「乗客の皆様、救援機が近くにいます。これより緊急降下します。繰り返します、これは墜落ではありません。救援機が近くにいます」
だが、その直後。
「機長、ミサイル3本接近! 迎撃システムがパニック、防ぎきれません!」
副操縦士の悲痛な声が客室にも流れ、乗客たちに緊迫が走る。
「旅客機相手にミサイル3本!? 冗談じゃないわ!」
ノーマの怒声とともに、ドルフィンのビームが閃く。瞬時に3本のミサイルを撃墜。マルスでなくても、これくらいはノーマにもできる。敵の3機は散開し、それぞれ別方向へ回避行動を取った。
「素人が2機混じってる!」
ノーマは動きの鈍い一機を捕捉し、背後にぴたりとつく。
一方、マルスは最も機動性の高い機体を選んだ。
「マルス、射撃レーダーがオフよ! 本当に大丈夫!?」
「問題ない。レーダーを使えば探知される。光学照準で十分だよ。まともな腕はあいつだけ、まずはそいつを無力化する」
マルスの瞳が敵機を捉える。
「まずは1機、排除!」
レーダーを切ったまま接近するマルスに、敵は気づかない。ビーム出力を絞り、エンジンだけを正確に撃ち抜いた。敵機は推力を失い、煙を引いて降下する。
「やるじゃない!」とソレイユが感嘆する。
マルスの一撃は致命傷ではなく、最低限の損傷で済むよう制御されていた。ソレイユは振り向き、敵パイロットが脱出するのを確認する。
同じ頃、ノーマも別の機体を撃った。だが、命中した瞬間、コックピットが爆発。パイロットは脱出できなかった。
「コックピットが自爆? となると、残りの1機も」
炎と煙から、ノーマはコックピットに爆発物が仕込まれていると察する。最大出力で機体を旋回させ、最後の一機に向かった。
その機体は完全な素人操縦だった。マルスがレーダー照準を合わせると、慌てて回避行動を取る。
「どうしてこんな素人がテロリストのパイロットなんだ?」
「いいから、旅客機を守って!」とソレイユが叱咤する。
「大丈夫だよ」
マルスは敵を旅客機から引き離し、優位な位置を取る。しかし敵は逃げず、再び旅客機に向きを変えた。しかし、マルスが撃つより早く、ノーマのレーザーが敵機のエンジンを貫く。直後、またもコックピットが爆発した。マルスは困惑した。
「なぜ脱出しなかったの?」
「おそらく、脱出すれば爆発する仕組みね」ソレイユが答える。
「でも、最初の機体は脱出したよ!」
「最初のは熟練パイロットだったのよ。射出座席が装備されていたんでしょう。でも“セレクターズ”は仲間を消耗品として扱うの。捕虜になるくらいなら、死を選ぶの」
「理解できないよ」
「私にもね」
そこへ西郷の指示が入る。
「撃墜された機体の捜索は第7艦隊が行う。マルス機はGA104便をフォローし、プレスト海軍基地まで誘導せよ」
プレスト海軍では、西郷の指示は最優先だ。ソレイユはマルスに操縦を任せ、空戦データを艦隊へ送信。旅客機へ通信を入れる。
「GA104便、こちらプレスト海軍“ファントム”。敵機はすべて排除しました。もう大丈夫です」
通信は客室にも流れ、歓声と安堵の声が上がった。
「こちらGA104便、心から感謝する!」
“ファントム”の名は、プレスト海軍のロボット部隊として知られている。
「左翼が損傷していますが、火災はありません。操縦は大丈夫ですか?」
「操縦は安定している。このまま空港まで飛べる」
すると管制塔から通信が割り込む。
「GA104便、至近のダグラス社滑走路に着陸せよ。乗客の移送と救護はプレスト海軍が手配済みだ」
「こちらGA104便、了解。ダグラス社滑走路へ向かう」
続けて、ソレイユの声。
「我々が誘導します。今から指示に従ってください」
通信内容は客室に聞こえた。思いがけない救援と整然とした指示に、乗客たちは次第に落ち着きを取り戻していった。
「こちらGA104便、了解」
機長は、マイクが客室とつながったままだったことを思い出し、あわてて接続を切った。
2026年8月13日加筆




