第四話 ~天才の秘密基地~
皆さま本日もお疲れ様です!皆さまのおかげで100PVを超すことが出来ました。
これからも精進してまいりますので、応援の程よろしくお願いします。
今日は第四話、第五話同時公開です。
家々を越え、谷を越え、私はミカドレア王国の中心、王都の端の方に位置する山へ着地する。
【銀の星収納。】
そして、滝が流れている場所の裏側へ水を受けながら進んだ。
一見するとただの岩場だが、私が岩の一部に手を当てると、ウィーンという機械音とともにそこに液晶画面が現れた。そこにパスを入力すると、岩場が動き始め、奥への道が開けた。
私は迷わず道を進んでいくと、やがて奥から光が差してくる。最奥までたどり着くと、たくさんの液晶画面と、工具類、そして、私のこの世界での唯一の弟子、ミラが立っていた。
「おかえりなさい。先生」
「ああ、研究サンプルを持ち帰ってきた、早速、解析の準備を頼む」
「もう出来てますよ、サンプルはこっちのポッドに入れてください」
「ああ」
私は銀の星で浮かせていた魔物の死骸をミラが指定したポッドに放り込む。
「義鎧も脱いでください」
「照準系に何か異常があるかもしれない、確認しておいてくれ」
そう言って、ヘラクレスのマスクを脱ぐと
ガコンッという音とともにフレームエイトが胸、腕、胴、足の順に外れていく。
「分かりました。ムラクモ、回収して損傷箇所を確認。整備ドックに回して」
『御意』
ミラがそう指示すると、天井から複数の機械アームが伸び、ヘラクレスの各パーツを回収していく。ムラクモとは、魔導工学にまだ精通していないミラを補助するため、私が開発した魔導演算補助知性だ。この研究所にあるほとんどの設備へアクセスでき、解析や整備、装置の制御まで行える。
もっとも、半分はミラの世話係として作ったようなものだが。
「しかし、竜鱗を腐食するほどの侵食能力ですか、なかなか手ごわそうですね」
ミラが、コンピュータで解析を回しながら言う。
「あぁ、離れた位置ではあったが、村周辺の湿地も侵食されていた。いつ影響がフエル村に出るかわからん。解析を急ぐぞ」
私はコーヒーをマグカップに注ぎ、それを飲み干すと、ミラの隣のコンピュータを起動する。
一時間後、私とミラは互いの解析結果を共有した。
「先生、この腐食能力はかなり厄介ですね」
「あぁ、この能力は感染する。さらに生物を狂暴にさせるおまけ付きときた」
「それだけではありません。時間が経つと、感染した相手の細胞を破壊し、その組織を作り替えていくようです」
そうだ。単に凶暴化させるだけなら、まだ対処のしようはある。だが、この腐食は感染した生物を内側から作り替え、別の存在へと進化させる。放置すれば、何が生まれるか分からない。非常に危険だ。感染源を突き止め、一刻も早く止めなければならない。
「まずは、解析結果をもとに解毒装置を作る。まずはあの湿地を浄化しなければ……いつフエル村の住民が被害にあうかわからん。解毒の魔術式はもう完成済みだ」
そう言って私は魔術式が映し出されたモニターをミラに見せる。
「流石です先生。私も手伝います。ムラクモ、この魔術式をインストールして!回路を組むわよ」
『御意』
「板についてきたな」
昔のひよっこ魔術師はどこに行ったんだか。
「先生のせいですよ」
せい、とはなんだ。そこは普通、先生のおかげと言うところではないのか。どうやら、まだ言葉遣いを教える必要があるらしい。私はムラクモに教育用プログラムを追加しようと密かに決意し、作業場へ向かった。
工具類を手に取り、解毒装置のフレーム製作に入る。金属を削り、部品を組み、機構を形にしていく。
昔とは変わらず、ものづくりに没頭している時間は楽しい。
そういえば、この世界に来たばかりの頃も、こうして限られた材料から装置を組み上げたものだ。
ステラの暴発が起きた後、私はこの世界の平原で目覚めた。
最初は爆発でどこかに飛んできたのかと思ったが、どうやらそういうわけではなさそうだった。ビアン先生を探したが、どこにもその姿はなく、この世界では当てがないことが確定的になった。
水も食料もない状態で歩き続け、このミカドレア王国にたどり着いたわけだが、魔術という未知のものを目の当たりにし、好奇心が抑えられなかった。そこからは気が向くままに研究に没頭して、ヴァルカンという名前で魔術を用いた発明品を売り、日銭を稼いだ。
元の世界に戻りたいと思ったことはない。
私にとっては、作った発明品が世で活躍すればそれでいいのだ。それがどこの世界かは重要じゃない。
そうこう考えているうちに、装置の筐体部分が出来上がった。あとは回路を組めば正常に動き出すだろう。
「先生、回路が完成しました」
ミラが輝く魔石が組み込まれた小さな基板を持ってくる。
「ちょうどいいタイミングだ」
私はそれを装置に組み込む。いつ見てもミラの回路は素晴らしい。彼女の魔力制御には目を見張るものがある。あとは工学を極めれば、いずれは私と並ぶ存在、いや、それ以上になるかもしれない。
本人には絶対に言わないが……
回路を組み込み終わると装置が発光し始めた。
「よし、完成だ」
『魔術回路、正常に動作しております。流石でございますな、お嬢』
「ありがとう、ムラクモ」
『大殿。先ほどヘラクレスの整備も完了いたしました。損傷部位は予備パーツへ交換済み。アーシルの制御ユニットも修正を終えております』
ムラクモが時折古風な口調になるのは、言語学習をさせる際、侍映画ばかり見せたためだ。
私自身、侍というものが大好きで、一種のファンでもある。そのため、かつて好んで見ていた映画を再現し、学習用の資料として与えたのだが、どうやら侍大将に仕える家臣の口調を重点的に学習したらしい。まあ、試験的に行ったものなので、これはこれで悪くない。だが、私としてはもう少し威厳があり、重厚な話し方を期待していたのだが。
いや、今はそんなことはどうでもいい。早く解毒装置で湿地を浄化しなければ。
「よし、早速出発する。解毒装置の名前はそうだな……『テレサ』にしよう」
「わかりました。ムラクモ!」
『御意、大殿、出陣の準備を』
私は最後に飴玉を口に放り込む。
そして、天井から伸びてきたアームが私に魔導義鎧のパーツを装着させる。
【ヘラクレス、起動。】
私は銀の星を展開し、解毒装置『テレサ』を浮かせる。本体は自動販売機くらいの大きさがある。本当はもっとコンパクトに、もっと言えば、ヘラクレスに組み込みたかったが、時間がなかった。今は一刻を争う状況なので仕方がない。
「正面ゲートオープン」
ミラが開けてくれた道を通って、さっきの岩場に出る。
「出陣だ」
アーシルの光が滝の水飛沫を切り裂く。私は『テレサ』を伴い、腐食に蝕まれた湿地へ向けて飛び立った。
第五話も同時公開しています!ご確認ください。




