第二話 ~嵐の後~
皆さま、学業、仕事、家事、そうでない方も一日お疲れ様です!
プロローグ、第一話、多くの方に読んでもらえて、恐縮です。
ということで出血大サービス、第二話先行公開です!!
目の前で一つに束ねた金色の髪を激しく揺らし、凛々しい顔をゆがませながら、ジークは小言を並べ立てている。
「ヴァルカン……! 貴様というやつは……なぜ私たちの到着を待たなかった?
団体行動すら出来んのか!」
君はそんなことも理解できんのか? と言いそうになったが、さすがに口にすれば剣を抜かれそうだったので、説明してやることにした。
「理由はいくつかある。その一、団体行動はめんどくさい。その二、到着が遅い。その三、めんどくさい」
「……同じものが二つあったぞ!」
「これは失礼。主語が抜けていたな。三つ目はこうだ。君がめんどくさい」
「……っっ!」
私が軽口をたたくと、目の前の女、ジークはわなわな震えだした。
だが、彼女はそれを抑えて、こう言った。
「ではなぜ、わざわざ我々に知らせるような真似をしたのだ……?」
そうだ。私は小竜の魔力反応を探知して、出発前にミラに騎士団に伝えさせていた。
「ここは王国の中でもはずれの方、さすがの私でも魔力を探知してから到着までに時間がかかるのでね。甚大な被害が予測された。それが君たちを呼んだ理由だ」
そう言って周りを見ると、第三騎士団副団長であるドラグの指揮ですでに人命救助と、復興作業が進められていた。幸いにも死者は出ていないようだ。
「君も子供のように喚いてないで、復興作業を手伝いたまえ。そこにいる少女の方が、よほど大人らしいぞ」
そう言って私は近くにいた、小竜に襲われていた少女とそれを守ろうとした男の方を見る。彼らも先ほどまでは緊張感がある様子だったが、騎士団の多くが助けに来た今、安堵の表情が見えた。
いや、少女の方はまだ少し、手が震えているな。
「ふん……!今回はその少女に免じ、貴様を叩き切るのは取りやめて、私も復興作業に移るとしよう。許したわけではないぞ……!」
そう言ってジークはその紺碧の瞳で最後まで私をにらんだのち、去っていった。
「……さて、私も復興作業といこう」
あぁ、そうそう。
「勇敢なお嬢さん、でかいトカゲが来て大変だっただろうが、安心しろ。騎士団がこの村もすぐに元通りにする……これは、私からのプレゼントだ」
私はまだおびえる少女にそう言葉をかけ、前腕部の収納口から飴を一つ射出し、少女に手渡す。いつも糖分補給用に持っているものだ。
少女の目には少し輝きが戻った。
「ロボットさん!ありがとう!」
私は手を振りながらその場を後にする。
「よし……。ミラ、スキャンデータをもとに損傷が激しく、村人の生活における重要度が高いものを探せ。」
【スキャン開始。】
私はそう言って、弟子に分析を依頼しようとする。
『……』
なにも返ってこない。そうだった。通信装置が不調なのだった。それを思い出し、私は通信装置がついている側頭部あたりを何度かたたく。
『ザ……ザザ!……せい……先生!』
どうやら繋がったようだ。
「やっと繋がったか、ミラ、早速だが……」
『やっと繋がったか、じゃありませんよ!高速飛行モードはまだ使用しないでくださいってあれほど言いましたよね!』
確かに言われた気がする。そして、使った。
『交換した魔石があまり質のいいものじゃないから、高速飛行モードで振動が加わると、不調が起きるんですよ……』
「なるほど、だがまあ君なしでも小竜を倒したぞ、意外と何とかなるもんだな」
『はあ……今回は良かったですけど、次も私の話聞いてなかったら、どうなっても知りませんからね』
「まあそう怒るな、次は気をつける。それはそうとミラ、スキャンデータをもとに損傷が激しく、村人の生活における重要度が高いものを探してくれ」
『了解。……井戸の損傷が最も深刻です。このままじゃ水不足が起こってしまいます』
「よし、では井戸を修復するとするか」
そう言って私は井戸の方に向かう。
井戸を実際に見てみると、確かに水をすくうバケツ、ロープ、滑車までもが壊れ、壁も粉々になっていた。
ロープとバケツは予備があるかもしれない。滑車と壁をどうにかするか。
まずは材料が必要だ。壁は崩れた石をそのまま使うとしよう。
ただ、滑車は材料の再利用が出来なそうだ。どれにしようかと思い、周囲を見渡すと。私の目に復興作業中の騎士が着ている鎧が目に入った。
あれだ。
私はそう思い復興作業中の一人の騎士に近づいた。
「その鎧を少しの間貸してくれないか?復興に必要だ」
「ヴァ……ヴァルカン殿!もちろん構いませんが……何にお使いで?」
「ありがとう。使い方はあちらで説明する。脱ぎながらついてきてくれ」
私はそう言って井戸があったところまで歩き始める。鎧の貸与を許してくれた騎士もちゃんとついてきている。
ほどなくして、井戸があった場所に到着した。
さて、始めるか。
「連環魔壁展開」
【連環魔壁展開。】
私は井戸の壁があった場所に連環魔壁で井戸の壁と全く同じ形、わかりやすく言うと、巨大なバームクーヘン型と屋根、そして小さな型二つを作り出した。
「盾を……型に?」
騎士がそうつぶやく。
「魔術は工夫次第で何にでも使える。なかなか面白いだろ? 鎧を貸してくれ」
私はそう言って、鎧を受け取る。
次に、銀色の玉――飛行・砲撃・力場制御端末銀の星を鎧から排出し、鎧と崩れた石を対象設定して力場を発生させ、浮かせると、型に唯一穴が開いている箇所から大量の崩れた石を入れ、鎧はそのままにしておく。
「んん? 僕の鎧は何に使われるんでしょう? ヴァルカンさん」
「わからんのか? 材料だ」
「材料?」
「ミラ、鉄の融点まで『紫電光線』の出力を調整」
『わかりましたけど、先生、もしかして……』
「いいから調整だ」
『はあ……出力調整……完了。』
それを聞くと同時に私は紫電光線を起動し、鎧を溶かし始める。
「ちょ……ちょっと!! 貸すとは言いましたが、溶かしていいとは言ってません!」
「鎧くらい弁償してやるから焦るな」
『先生…… 無茶苦茶です……』
穴を通して、バーククーヘン型に溶けた鎧が注がれていく。一部は小さな二つの型、少し溝がついた円柱と小さなバームクーヘン型に注ぎ入れる。
やがて鎧をすべて溶かし終わり、紫電光線を切る。
五分ほど待ち、自然冷却させた後、冷却用に搭載していた『魔術凍結噴霧』を銀の星に放たせる。
鉄から蒸気が立ち上った。
連環魔壁も解除する。
そこには鉄の薄壁で石が固められ作られた、井戸の壁ができていた。応急措置としては問題ないだろう。
次に、小さなバームクーヘン状の金属部品と、少し溝がついた円柱に潤滑剤を付ける。これらが実際に回転し、ロープにつながったバケツをあげたり下げたりする役割を持つ。
私は、銀の星を使い、それらを組みあげ、屋根に接続する。
「よし、完成だ」
村人にロープとバケツの予備がないか聞き、手に入れてくると、ロープをバケツに結び付け、円柱部分の溝にロープを掛ける。
これで村人も水が汲めなくて困ることはないだろう。後ろでは、鎧を貸した騎士が半泣きになっている。新品は後で買ってやればいい。そう考えていると、ジークがこちらに近づいてきた。
なんだ? まだ怒っているのか? 幼稚な奴め。だが、そんな思いとは裏腹にジークの表情は険しかった。そこに先ほどまでの子供じみた怒りはない。
「ヴァルカン」
低い声で私を呼び、黒く変色した何かを差し出す。
【スキャン完了。】
『先生……これ、竜の鱗のようですが、異常を発見しました』
「異常を発見? どういうことだ?」
返答を聞く前にジークが口を開く。
「ついてこい、お前に直接確認してもらいたい」
第三話は明日、10/25(日)21:00更新予定です。




