↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギテック ~地球の天才科学者、異世界へ行き最強S級冒険者になる~  作者: 痺れるたんたんめん
第一章 ―鋼喰らいの蛇―
PR
11/15

第十話 ~機神と獅帝、蛇を穿つ・後編~

皆さまお疲れ様です。

第九話は正午に投稿しています。ご確認ください。

「ミラ、ジークが奴の魔力を引き出す。即座に解析しろ。私は送られてきたデータをもとに、テレサのプログラムを書き換える」

『久しぶりの無茶振りですね。腕が鳴ります……!』

≪ぬぅぅっ! 小癪な手を使いおって! この程度の麻痺など!≫


 ナーガが全身に力を込め、その巨体を持ち上げる。麻痺が、完全に解けた。


「さっきはよくもやってくれたな! 集え、雷!」


 ジークがゼファリスを空へ掲げる。

 暗雲が渦巻き、その中心から赤雷がほとばしった。


「天雷墜撃(フォルジュラ)!」

≪何度やっても同じことよ! 腐障毒吹(カース・ブレス)!≫


 ナーガの口から放たれた禍々しい毒液が、空から落ちる赤雷を迎え撃った。赤雷と毒液が激突し、森全体を揺るがす衝撃が走る。最初は互角に見えた。

 しかし、次第に赤雷が毒液を押し返し始める。


≪なっ……馬鹿な!?≫

「うぉぉぉぉぉっ!」


 毒液の勢いが弱まり、赤雷がその奔流を貫いた。

 赤い稲妻がナーガの顔面へ直撃する。


≪ぬわぁぁぁっ! 貴様ぁぁぁっ!≫


 怒り狂ったナーガは、槍のように尖った尾をジークへ突き出した。


「雷装(トール)」


 ジークの全身を赤雷が覆う。

 彼女は迫り来る尾を紙一重でかわし、その側面を駆け抜けた。


≪おのれ! ちょこまかと……!≫

「悔しかったら、お得意の腐食でも放ったらどうだ?」

≪貴様に言われずとも! これならどうじゃ! 腐毒散布(ポイゾナス・ミスト)!≫


 ナーガの鱗の隙間から、紫黒色の霧が噴き出した。

 気体となった腐毒が、逃げ場を奪うように広範囲へ拡散する。


「雷域(テレス)!」


 ジークがゼファリスを地面へ突き立てる。

 放射状に広がった赤雷が障壁を作り、押し寄せる腐毒を残らず弾き返した。

 その間にも、私のもとには膨大な解析データが送り込まれていた。


「ミラ、解析データをもっと早く送れ!」

『やってますよ!!』

「君の実力はこんなものじゃないだろ!」

『まったく、弟子使いが荒い人です……!』


 解析速度がさらに上昇する。

 視界を埋め尽くすほどのデータが羅列され、私は送られてきた情報を受け取るとほぼ同時に、テレサへ新たなプログラムを書き込んでいった。


「よし……!」


 あとはプログラムを組み込み、最終調整を行うだけだ。


「がはっ!」


 背後から、ジークの苦しげな声が聞こえた。


 何だ!?

 横目で確認すると、ジークが地面に膝をついていたが、ナーガの攻撃を受けた様子はない。


「くそっ……限界が来たのか!」


 傷は塞がっても、それまでに蓄積した疲労や魔力の消耗まで消えたわけではない。ましてや、ゼファリスを解放しての初戦闘だ。むしろ、ここまで耐えたこと自体がおかしい。


≪フッフッフ……調子に乗っておったが、結局はその程度か。残念よのう≫


 ナーガが愉悦に満ちた声を漏らす。


≪だが、まだとどめは刺さんぞ。先に、先ほどから怪しい行動をしておるS級を片付けてやろう≫


 ちっ、気づいていたか……! あと少しだというのに。


≪死ね! 腐障毒吹(カース・ブレス)!≫

「ミラ!」

『了解! 銀の星(アーシル)、自動防御へ移行!』


 八つの銀球が私の前に並び、幾重もの障壁を形成する。魔壁(イージス)だ。


 腐毒液が障壁に激突した。

 最初の一つが、瞬く間に侵食される。

 二つ目、三つ目。銀球が次々と濁り、どろどろに溶け落ちていく。


「まだだ……あと少し……!」


 六つ目までが一気に崩壊した。

 七つ目にも腐食が広がる。

 残るは……あと一つ。


「耐えてくれ……!」


 だが、願いは届かなかった。

 最後の銀の星(アーシル)にも亀裂が走り、形を失って溶けていく。

 防壁を失った腐毒液が、目前まで迫る。


「やめろぉぉぉっ!」


 倒れたジークが叫ぶ。


 あとワンコードだというのに……!

 その瞬間、私の目の前で、小さな氷の花が咲いた。


「〈咲け、氷柱! 氷姫蓮花(ニブル・ガーデン)!〉」


 氷の花は無数の枝を伸ばし、爆発的に広がっていく。

 次の瞬間、巨大な氷壁となって私の前に立ちはだかった。

 腐毒液が氷壁へ直撃し、白い蒸気が辺りを覆う。

 私は声のした方へ視線を向けると、茂みの奥に、負傷した肩を押さえながら立つドラグ殿の姿があった。


「あきらめるな、若人!!」

「ドラグ殿……!」


 あんた、最高だよ。

 私はすぐに視線を戻し、最後のコードを打ち込む。それと同時に、氷壁が腐食に耐えきれず、弾け飛んだ。だが、その先にはすでに起動したテレサが待ち構えていた。眩い光が放たれ、腐毒液の勢いを完全に殺す。

 そのまま解毒魔力の光は腐毒を押し返し、ナーガの巨体を貫いた。


≪ぬっ!? なんだ、これは! ぐっ……苦しい! 我の力が……!≫


 ナーガは苦しみだし、その巨体を地面へ叩きつけながらのたうち回る。体を覆っていた腐食魔力が急速に弱まり、鱗の色が濁っていく。


「ドラグ!貴様の作ったこの好機、無駄にはせん!」


 ジークがゼファリスを支えにして立ち上がると、大地が震え、赤雷が周囲にはじけ飛ぶ。

 立っていることすら、限界のはずなのに、それでも、彼女の目は死んでいなかった。


「道は……私が切り開く!」


 ゼファリスから、赤い万雷が放たれた。


「雷霆(ケラノウス)!」


 ナーガを再生させないよう、威力を抑えた万雷が巨体へ突き刺さる。赤雷は弱体化した鱗だけを的確に砕き、次々と引き剝がしていくと、ナーガの無防備な皮膚が露出した。


「行け! ヴァルカン!!」

「上出来だ、ジーク!」


 私は大地を蹴った。


「ミラ! 残存エネルギーをすべて右腕へ集中させろ!」

『了解! 全残存エネルギー、右腕部へ集中!』


 魔力が右腕へ流れ込み、装甲の隙間から紫の光が漏れ出す。

 私はナーガのもとへ駆け、その巨体の前で足を踏み込んだ。大地をしっかりと捉え、腰と上半身を限界までひねる。右肘の排出口が開き、蓄積した魔力エネルギーが、一気に噴き出す。


「もう脱皮はできんぞ」


 爆発的な推進力を得た拳を、ナーガへ叩きつける。


「終わりだ! 超推進打撃(ロケットパンチ)!!」


 ズンッ、と腹の底まで響く鈍い音が鳴り、拳がナーガの巨体へ深くめり込む。

 邪魔をする鱗は、もうない。

 拳はむき出しになった皮膚を突き破り、奴の体を貫いた。


≪がっ……!≫


 ナーガの全身から力が抜け、巨体は轟音とともに地面へ倒れ込むと、やがて輪郭を失うように溶け始めた。

 私は、その姿が完全に消滅するまで見届けた。もう、再生する気配はない。

 息を吐くと、ジークのもとへ駆け寄った。


「大丈夫か、じゃじゃ馬」

「うるさいぞ、機械オタク」


 ジークは疲れ切った顔で、それでも愉快そうに笑った。


「しかし、すさまじい力だな。全力のゼファリスは」

「誰が全力だと言った?」

「……なに?」

「轟雷剣(ゼファリス)の力は、まだ三割しか解放していないぞ」


 ジークは目を丸くする。


「さっ、三割だと!? なぜすべて解放しなかった!」

「三割でこの有り様の奴が、何を言っている。悔しかったら、もっとそいつを使いこなせ」

「ふん! もう使いこなせている!」

「まったく……」


 私はゼファリスへ手をかざす。


「轟雷剣、ジークに使用者権限を付与」

【使用者権限付与を受理。】

「君に権限の一部を渡した。三割までの力なら、これからは自由に使える」

「本当か!」

「各解放段階には、それぞれパスワードを設定してある。三割までが第一段階。パスワードは、先ほど言ったとおり『獅帝』だ。使用者権限と既存のパスがあれば、パスワードの変更もできる」

「残りも教えろ!」


 ジークは至近距離まで詰め寄ると、私の鎧へ勢いよく人差し指を突きつけた。

 涙を流した後だからか、少し赤みがかった紺碧の瞳に見上げられる。

 まったく、わがまま娘め。


「君が三割の力を使いこなせるようになったら、次を教える」

「ちっ……まあいい。すぐに使いこなしてやる」


 ジークはぷいっとそっぽを向く。


「それは楽しみだ」


 私が皮肉めいた口調で返すと、突然、ゼファリスが赤く発光し始めた。



【ツイニワレヲカイホウシタナ……タンキュウシャヨ】

「!?」


 ジークが剣を取り落としそうな勢いで驚く。


「しゃ、しゃべったぞ!? なんだ、これは!」

「雷轟竜(ゼファー)だ」

「雷轟竜(ゼファー)? あやつにしては、ずいぶん知性の低そうなしゃべり方だな」

「まだ意識を三割しか解放していないからな」

【イチネントジコメタ……ヤクソクトチガウ】

「何を言う。最高の舞台で暴れさせてやるという約束は守っただろう? これからはジークが好きに解放してくれるしな」

【ヒサシイナ、ムスメ。ワレハオマエヲノットリ、マタコノヨデアバレテヤルゾ!】

「誰が乗っ取らせるか!」


 ジークがゼファリスを地面へ叩きつけそうになる。

 こいつも、相変わらず厄介な奴だ。殺したというのに、これほど強く自我が残っているとは。死骸を加工するときにも、ずいぶん苦労させられた。まあ、最高級の素材を前にして、研究しないという選択肢はなかったのだが。


「できるものならやってみろ。管理者権限だ轟雷剣、第一雷包を閉じろ」


 機械音声とともに、ゼファリスは発光を止めた。


「行くぞ、ジーク。早く帰って糖分補給だ」

「いや、まずは後始末だ」

「そんなもの、騎士団にお任せする」

「駄目だ。負傷者を運ぶのも手伝え」

「銀の星(アーシル)は全機壊れているんだぞ。もう飛べない。それに、エネルギーもすっからかんだ」

「飛べなどと一言も言っていない。担いでいけ」

「冗談だろ……」


 結局、私はジークに押し切られ、重労働を手伝うことになったのだった。


 ◇◇◇


 ミカドレア王国東部、某所。


「ひどい怪我ですね、ベム」


 月明かりも差し込まない森の中。黒いフードをかぶった男が、傷だらけのベムに声をかけた。


「すまぬ。小生の読みが甘かった。S級冒険者が、あそこまで手強いとは……」

「いえいえ、構いませんよ」


 フードの男は穏やかな口調で答える。


「あなたの実力ではヴァルカンに勝てないことは、最初から分かっていました。殺せれば幸運、その程度です」

「……そうか」

「今回の目的は、腐食の脅威を人々に知らしめることでしたからね」

「その目的は、確実に達せられただろう」

「ええ。ラストもよく働いてくれました」


 男は胸元で両手を合わせ、乾いた音を鳴らした。

 フードの奥で、口元が不気味にゆがむ。


「今頃は、地獄を謳歌していることでしょう」

「……そうだな」

「またすぐに戦いが始まります。ベム、今は傷を癒やし、次に備えなさい」

「相分かった」


 ベムがその場を立ち去る。

 足音が完全に聞こえなくなってから、フードの男は一人、月夜の下でつぶやいた。


「ここまでは計略どおり……」


 夜空を見上げ、さらに笑みを深くする。


「さあ、ここからが本番です……フッフッフ……」


 フードの下から漏れ出した笑い声が、静かな月夜に響き渡った。


 ――第一章 鋼を喰らう蛇 完――


読んでいただき、ありがとうございます。

ついに第一章完結です!ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。

色々な感想を抱かれる方がいると思います。これからももっと精進して、皆さんに楽しんでもらえるような作品にしてまいります。

さて、ここからの更新なのですが、プロットを練り直すため、五日~一週間ほどお休み期間に入ろうと思います。しかし、楽しみにしていただいてる方が少しでもいる中で、長期間待たせてしまうのもどうかということで、明日はお休みで、その後、二日に一回、日常回?を投稿しようと思います。

現在考えているのは

・ジークとエドワードの休日デート?

・ジークとドラグの一日

・ミラとエドワードの出会い

・ミラとムラクモの一日

などです。どれが需要あるでしょうか?

では長くなりましたが、日常回、第二章でまたお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。