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僕が人を殺す理由  作者: アズキ


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第8話「追跡」

渋谷の街にパトカーの音が鳴り響く。

黒川は死体が発見された現場にいた。

早乙女も一緒に来ている。


死体の状態は体を複数箇所刺され、内臓が露出している所を見ると、同一犯であることで間違いなさそうだ。

死体の状態はかなり悪く、快楽のために殺された時見ていいと黒川は思っていた。


「これだけ警備がいて逃げられるとは…失態だ。

マスコミの対応が大変になるぞ。」


世間から警察が良くない評価を受けるのは目に見えていた。

ネットでの声は安全圏から投げられる批判。

それが肩にのしかかるように感じるのだ。

早乙女はまた死体の様子を見て吐き気を催しているらしい。


被害者が殺された当時は雨だったらしく、発見が遅れた。

血を雨が洗い流し、殺される時の無惨な音も雨が消す。


「死体の身元は?」


「サラリーマンです。30歳の。」


「共通点はサラリーマンってことだけか。

それでも、最初の人物には当てはまらない。

早乙女、被害者たちには共通点はないんだよな?」


「はい、今のところは。」


今のところは捜査は難航、ほぼ手詰まり状態だった。

監視カメラにはあの時と同じで仮面を被ったような人物が写っていることが分かっている。

手がかりはそれだけだ。

ほぼ完全犯罪をやってのけていると言える。


それなのに、上からは早く犯人を突き止めろなど、無責任な言葉を押し付けられるだけ。

だったら何かヒントをくれってんだ、と悪態をつきたくなるような状況だ。


場所を移動し2人は飯屋に入った。

つかの間の休憩というわけだ。

2人は注文をして、食事が届くのを待つ。


「それにしても、あれだけの警察の目をくぐって殺人なんて本当にできるんですかね。」


「さぁな、でも、犯人が相当やり手なのは間違いないだろう。

あれだけのことやって、手がかりが監視カメラに写ってた映像だけ…骨が折れるぜ。」


そのうち、食事が運ばれてきた。

腹を満たそうと食べ物を2人は口へと運ぶ。

早乙女の食べるスピードが遅く、黒川が先に食べ終わってしまった。


「なんだ?食欲ないのか?」


「はい、なんかこれからが不安になっちゃって…」


「そりゃ、マスコミの対応とか警察へと評価はすこぶる悪いだろうよ。

でも、世の中は俺たちが守らなきゃ救えない命だってあんだ。

見捨てる訳にはいかないんだよ、どんだけ悪口とか炎上してもな。」


黒川の言葉に元気を貰ったかのように完食した。

客が少なかったこともあり、その後2人は店に残り、事件について推理することになる。

と言っても、推理するようなものもない。


「犯人は仮面を被っていて顔が見えない。

被害者の全員が共通点はなし。

犯行現場は渋谷でしか起こっていない。

これだけのヒントじゃ犯人に辿り着くことなんてできねぇな。」


「せめて何か被害者の共通点さえあればいいんですけどね。」


「早乙女、今回の犯人は何のために殺人をしてると思う?」


「何のために?

復讐…って感じはしないんですよね。」


「俺もそう思うんだ。

復讐と言うよりも、何というか、快楽殺人に近いものなんじゃないかと思ってる。

検討が外れてないといいけどな。」


結局、ほとんど推理は進まずに、時間が過ぎていった。

勘定を払い、店の外に出る。

何の目的もないが、とりあえず渋谷に戻ることにした。

もしかしたら、犯人に繋がる何かが見つかるかもしれない。


夜道にはまだ人通りがある。

夜でも人の数が減らない渋谷は殺しには最適と言えるのだろうか?

これだけ多くの人間が歩いていれば、誰か1人が殺されようと気づく人間は少ない。

叫び声を上げて、それに反応する野次馬がいるだけだ。


たまたま通りかかった路地裏でだった。

暗がりに人がいる。

何気なく黒川はそっちを見たが、それは単なる人と人との関わりではないことが分かった。


ぐしゃぐしゃという音ともに1人の人間の腕が動いているのが見える。

黒川は呆気にとられ、その光景を見つめていた。

黒川が止まっていることに気が付かない早乙女が異変に気が付き、黒川に声をかけなければ、もっと硬直していたことだろう。


「先輩、どうしたんですか?」


その声で、路地裏の人間がこちらを向く。

そいつの顔には見覚えがあった。

顔と言うよりも仮面だ。

黒い仮面に目と口が不器用に描かれている。

そして手には何かを握っていた。


包丁だ…


そいつは黒川に見られていることに気がつくと、その場から逃走。


「待て!」


黒川がそのあとを追う。

途中で死体が転がっていることに気がつき、早乙女にそこを任せる。


「早乙女、そいつ任した!」


そう言って全力疾走する。

狭い路地裏を走っては曲がり、走っては曲がりを繰り返した。

気がつけば人がたくさんいる場所へと出た。

黒川は周りを見渡す。


人混みを掻き分け、必死に逃げる犯人の姿があった。

黒川も人と人との間をかき分け走る。

何度人を押し倒したが分からない。

「どいてくれ!」「警察だ!道を開けろ!」と何度言ったか。

それでも、人が多すぎて、簡単にはどいてくれない。


周りにいた警官たちにも応援を要求。

囲むようにしたかったが、途中で見失ってしまう。

がむしゃらに人混みをかき分けたが、既に時遅しだ。


犯人には逃げられてしまった。

人混みの中で見失い、人の波に飲まれてしまうのだ。

「クソッ!」と言葉を漏らし、地面を片足で強く踏む。

周りの人間たちは黒川のことを異常者のような眼差しで見る。

自分が何をしたのか自覚し、少し恥ずかしくなった。

そして、こんなことをしてる場合ではないことに気づく。


その場を離れ、早乙女が対処している場所まで戻った。

既に他の警察も出動しており、周りは封鎖されている。


「悪いな…逃げられた。」


「こっちもかなり酷いもんですよ…うっぷ。

さっきのご飯吐きそうで…」


「こりゃ、身元の解明に時間がかかるぞ。」


死体の状況は酷いもので、力任せに切断されている状況だった。

顔も思いっきり力をかけて横に真っ二つにされている。

その他の部位も、結合部を切るだけにはとどまらずに、さらに細かく切断されていた。


断面の周りは綺麗とは言えないもので、包丁で無理やりこじ開けたように思える。

おそらくは手で無理やりやった可能性もあるだろう。


今は死体の身元の解明を待つことになった。

黒川と早乙女は情報が来るまで、渋谷を巡回することなる。


まだ犯人が近くにいるかもしれない。

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