第4話「警察」
渋谷の路地裏は閉鎖されていた。
立ち入り禁止のテープが巻かれ、マスコミや野次馬が集まっている。
いつもなら都会といえど人通りが少ない場所はあるというのに、今は全くそれを感じさせない。
黒川恒星は立ち入り禁止のテープを通り、死体を確認しに行く。
目の上に傷があり、いかにも頑固そうという印象を与える顔をしている。
身長も高い方で170後半はあった。
その後ろから、声をかけてくるものがいた。
黒川の後輩で相棒の早乙女圭だ。
「先輩、これが死体…うっぷ。」
死体を見て吐き気を催しており、今にも口からゲロが出てきそうだ。
顔も青白く、死体を見ただけなのに体調が最悪になっているようだった。
「なんだよ。死体なんて見てきただろ。
いい加減慣れろ、それでも俺の相棒かよ。」
事件を追っていると死体に遭遇することは珍しいことではない。
その全てがグロテスクという訳ではなかった。
放置され朽ち果てたものや、損傷が全くないものまで様々。
時々、グロテスクな死体を発見することはがあるのだ。
顔にウジが湧いていたり、見るに堪えない物がほとんどだと言える。
体は欠損していたり、無惨にバラされたり、人の仕業と思えないほど。
新人の警察官だとしたなら、今回の事件の死体を見て吐き気を催してしまうのは無理もない。
あくまでも「新人」ならの話だが。
被害者は体を複数箇所を何回も刺されていた。
傷跡からは大量に出血。
内臓もむき出しになり、腹から新しい生命体が生まれているかのような姿をしている。
神秘的に聞こえるかもしれないが、ゾッとするほど気色の悪い光景だ。
血は固まり、どす黒い色へと変色していた。
内臓が出ているところを見ると、刺されただけではなく、そのあと腹をえぐられたということが分かる。
通りかかった人が道に血が流れているのを見つけ警察に通報。
ひとたびパトカーのサイレンが鳴り響き、あたりの静けさは全くと言っていいほどなくなる。
マスコミやテレビの連中はネタを見つけたと言わんばかりにカメラを回したり、警察に質問を押し付けてくるのだ。
明日になればニュースで世間に情報が回る。
そして、ネットで話題に上がるのだろう。
自分は殺されないと強気な発言をして渋谷を訪れる者もいる。
警察ながらそんなやつが殺されたところで自業自得だと思えた。
顔の部分は目立った損傷はないため身元の特定を急いだ。
「遺体の身元は?」
「岡崎圭吾35歳。
サラリーマンで、独身です。」
「前の被害者との共通点はあげられるか調べてくれ早乙女。」
「はい!」
この事件は始まったばかりではないのだ。
既に今回で二件目。
1度目の被害者も渋谷で殺された。
まだ1度目だったこともあり、警備を設置するほどではなかったのだが、2回目が同じ渋谷となれば話は別。
明日から警察官が渋谷に配置されることだろう。
そして、それをネタに動画を撮る若者がうじゃうじゃ湧いてくるに違いない。黒川はそう思った。
「自分は殺されるわけがない」とほとんどの人間が思っているはずだ。
「これは…明日からここで張り込みですかね。」
「だろうな。
早乙女、居眠りとかしたらぶっ飛ばすからな。
真剣にやれよ。」
「分かってますよ。
でも先輩、こんな大勢の中から犯人を探すなんてアリンコのコンタクトレンズ探すようなもんだと思いますよ。
しかも、犯人が分かった時は既に人を殺してる時でしょうし、人が死ぬのを待っているような。」
「それ以外に方法がねぇんだ。
犯人も手がかりを残してない。
監視カメラの映像は確認してるらしいが、おそらく顔は写ってないだろう。」
そう話していると、黒川の携帯がなり、内容を確認した。
そしてタイムリーなことに監視カメラに映っていた犯人と思わしき人物の写真が送られてきていたのだ。
「俺の勘はドンピシャって訳じゃないが、9割は当たってたな。」
黒川は早乙女に写真を見せる。
犯人と思わしき人物は顔が写っていないというより、隠していた。
フードを被り、顔には覆面か仮面のどっちか分からないものをつけている。
そこには殴り書きされたような顔が描かれており、悪趣味だと早乙女は感じた。
「こいつと思わしき人物を探せばいいんですね。」
「そうだ。できる限り怪我人は出したくない。
しっかりやるぞ。」
「はい!」
一刻も早く犯人を捕まえることが重要だった。
事件が長引き、新たな被害者を出し続ければ責められるのは警察。
ただし、手がかりが少なすぎるのが現状だった。




