第17話「些細なこと」
火曜日の朝。
今日からまた学校が始まる。
白石は正直「行きたくない」と思っていたが、義務だと体に染み込んでいるのと、休みだとしてもやることがないため、行くことを余儀なくされていた。
身支度を済ませて学校へと向かう。
学校がある日は大抵、朝ごはんを食べないで登校する。
そのため、昼頃になるとお腹がなるのだ。
学生であれば、友達と外食をしたりもするだろうが、白石は誘われない。
自分から行くのも何だか場違いな気がする、と動こうとはしなかった。
渋谷駅から電車に乗り、学校へと向かう。
いつものルーティンだ。
USBメモリ、小野の一言、これにより、今の白石には悩みが薄れているため、殺しの場所を気にすることもなかった。
学校に着き、席に座りスマホをいじる。
そして、いつものようにクラスメイトが次々に教室に入ってきて授業が始まるまでの間、雑談をするのだ。
「おはよう。なぁ白石、今日遊びに行かない?」
友達に誘われた。
自分と2人ではなく何人かで遊びに行くのだろう。
「どこで?」
「近くのゲーセンだよ。」
「前、ドタキャンしたよね?」
「あ、あの件は悪かったって。」
白石が友達の目を鋭い目つきで睨みつける。
友達はその目を見て恐怖を感じていた。
今まで1度もそんな目を見たことがなかったからだ。
思い出しただけで、腹が立ってくる。
「誘われたけど、財布を家に忘れて取りに行って、目的地でみんなを探したけど、誰もいなくて。
挙句の果てに、1時間後に遊ばなくなった、の連絡。
次やったら殺すぞ。」
友達がこの言葉をどう捉えたのかは分からない。
しかし、今の状況の白石なら本当にやりかねなかった。
最近、気性が荒くなっている気がするのだ。
イラつくとすぐに人を殺したくなる気がした。
「冗談だよ。」と笑ってやり過ごす。
止めたのは法律でもエゴでもない。
白石の中で、「イラついたから」という理由が気に食わなかったのだ。
もっと自分には他の理由があるのではないかと考えていた。
そのヒントが小野の言葉のような気がしている。
まだ、その答えには辿り着くことはできていなかったが…
「なんか…変わった?」
「何が?」
「本当に人が変わったみたいで…」
「俺は俺だよ。」
「そ、そうだよな、ハハ…。」
そう言いながらも、友達は白石のことを恐ろしげな目で見ていた。
友達だったはずの人が怪物にでもなってしまったかのように。
白石はその状況が面白く感じた。
授業は2限目で終わる。
その後は約束通り、男子6人でゲーセンで遊ぶことになった。
楽しいと思えたはず。はずなのに…
些細なことが気になり、イラつき、殺意が芽生えそうになる。
そのメンツは白石のことをそんなによくは思っていないと感じる。
白石が勝手に思っていることだが、おそらくだが当たっているだろう。
1人が消えれば、全員で心配するくせに、白石のことは置いていくのだから。
その度に帰りたくなる。
誘ってくれた友達が自分を陥れるために仕組んだ罠のように感じてしまう。
友達に鋭い眼光を見せるとやっと反応してくれる。
自分で自分を追い込み、それが外へと発散されそうになっていく。
理由さえ分かれば、衝動的にでも目の前のクラスメイトを殺すことができそうなのに…
それが出来ずにとても苦しい思いをする。
そうなればどんなに…
とあることに気がつく。
それは紛れもない理由であった。
突如、白石の頭の中に降ってきたのだ。
その嬉しさに酔いしれ、イラつきを忘れてしまった。
クラスメイトと解散し、いつもよりも少し早歩きで家に帰る。
やっと見つけることができた気がしたのだ。
理由を。




