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僕の言葉がなぜか正解になる世界で ―無自覚の一言が、人も世界も動かしてしまう  作者: 三浦レン


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第29話 正しさを決める場所

 王都へ連れて行く。


 その一言で、全部が変わった。


「……」


 誰も、すぐには動かなかった。


 でも――


 止める人も、いなかった。


「……準備をする」


 レオンが言う。


 短く、いつも通りに。


「……」


 その声で、空気が少しだけ戻る。


 動き始める。


 さっきまでの対立は、ひとまず止まった。


 でも――


 消えてはいない。


「……アオイ」


 リナが近づいてくる。


「……行くんだね」


「……はい」


 迷いは、なかった。


 もう、選ばれているから。


「……怖い?」


「……少しだけ」


 正直に答える。


「でも」


 続ける。


「知りたいです」


「……何を?」


「どうなってるのか」


 この力が。


 この世界が。


「……そっか」


 リナは、小さく笑った。


「なら、いいと思う」


「……」


 その言葉で、少しだけ楽になる。


「……」


 カイルは、すでに何かを書き込んでいる。


「移送開始、条件変更」

「対象の優先度、上昇」


「……」


 ミラは、いつも通りだ。


「いいじゃない」


 軽く言う。


「退屈しなさそう」


「……」


 レオンが、ちらりと僕を見る。


「お前は」


 一拍置く。


「自分で考えろ」


「……はい」


「向こうでは、誰も止めてくれない」


「……」


 その言葉は、少しだけ重かった。


「……」


 王都の男が、前に出る。


「出るぞ」


 それだけ。


 説明も、確認もない。


「……」


 でも、誰も反論しない。


 従うしかない。


「……」


 歩き出す。


 村の外へ。


 今までより、もっと遠くへ。


「……」


 振り返る。


 村が見える。


 いつも通りの場所。


 変わらないはずの場所。


 でも――


「……」


 もう、同じじゃない。


「……行くぞ」


 レオンの声。


「……はい」


 前を向く。


 足を動かす。


「……」


 道は、静かだった。


 風も弱い。


 音も少ない。


 でも――


 頭の中は、ずっと騒がしい。


「……」


 管理する。


 使う。


 信じる。


「……」


 全部が、正しいようで。


 全部が、間違っている気もする。


「……」


 そのときだった。


「……止まれ」


 王都の男が言う。


「……?」


 全員が足を止める。


「……何かあるんですか」


 レオンが聞く。


「……前」


 短く答える。


「……」


 視線を向ける。


 道の先。


「……」


 人影。


 一人じゃない。


 複数。


「……」


 近づいてくる。


 ゆっくりと。


「……」


 その中の一人が、前に出る。


 整った服。


 装備も、整っている。


「……」


 明らかに、村の人間じゃない。


「……遅かったな」


 その男が言う。


 王都の男に向かって。


「……」


「連絡は受けている」


 続ける。


「対象はそいつか」


「……」


 視線が、僕に向く。


「……」


 何も言えない。


「……」


 男が、一歩近づく。


「……へえ」


 少しだけ、興味深そうに見る。


「……普通だな」


「……」


 その一言に、少しだけ引っかかる。


「……」


「もっと、こう……」


 言葉を探す。


「特別かと思っていた」


「……」


 その瞬間。


 少しだけ、空気が変わる。


「……」


 レオンが、一歩前に出る。


「評価は不要だ」


「……」


「連れて行くだけだろ」


「……」


 男は、少しだけ笑った。


「まあ、そうだな」


「……」


「ただ」


 一拍置く。


「確認は必要だ」


「……?」


「……」


 その男が、こちらをまっすぐ見る。


「……一つだけ、やれ」


「……」


 何を?


「……」


「今ここで」


 はっきり言う。


「何か言ってみろ」


「……」


 空気が、止まる。


「……」


「通るかどうか」


「……」


「見せてみろ」


「……」


 それは――


 試験だ。


 完全に。


「……」


 レオンが、低く言う。


「やる必要はない」


「……」


「これは移送だ」


「……」


 男は、肩をすくめる。


「だが」


 軽く言う。


「上が納得しない」


「……」


「証拠がいる」


「……」


 その言葉は、冷たかった。


「……」


 全員の視線が、僕に集まる。


「……」


 逃げられない。


「……」


 でも。


 やるしかない。


「……」


 何を言うか。


 どう言うか。


「……」


 そのときだった。


 頭の中に、ひとつだけ浮かぶ。


「……」


 シンプルな言葉。


「……」


 息を吸う。


 そして――


「気をつけたほうがいいと思います」


 言う。


 目の前の男に。


「……?」


「……」


「足元、少し不安定なので」


「……」


 一瞬、沈黙。


「……何だそれは」


 男が言う。


 少しだけ呆れたように。


「……」


「それが?」


「……」


 そのときだった。


「……っ」


 男の足が、わずかに滑る。


「……」


 一歩、バランスを崩す。


「……」


 すぐに立て直す。


 でも――


「……」


 足元を見る。


 確かに、崩れやすい土。


「……」


 空気が変わる。


「……」


 男が、ゆっくりと顔を上げる。


「……なるほど」


 小さく言う。


「……」


 さっきとは違う目。


「……」


 興味。


 明確な。


「……」


「通るな」


 はっきり言う。


「……」


 その一言で。


 すべてが決まった。


「……」


 レオンが、小さく息を吐く。


「……これでいいだろ」


「……ああ」


 男は頷く。


「十分だ」


「……」


 そして。


「……連れて行け」


「……」


 その言葉で。


 本当に、決まった。


「……」


 王都へ。


 完全に。


「……」


 戻れない。


 もう、完全に。

ついに「外の評価」が確定しました。


村の中の出来事ではなく、世界側から見られる存在へ。

ここから物語は一気に広がります。


面白いと感じていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

次話、ついに王都へ――空気が一変します。

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