第28話 管理される意味
ぶつかる。
その感覚が、もう消えなかった。
「……」
少女が離れたあとも、空気は完全には戻らない。
何かが変わった。
確実に。
「……」
レオンが一歩前に出る。
「ここまでだ」
低く言う。
「これ以上は、村の問題じゃない」
「……」
“使っている”男は、少しだけ首を傾けた。
「じゃあ、何だ」
「管理の問題だ」
即答だった。
「……」
その一言で、空気がまた変わる。
「……管理?」
僕は思わず聞く。
「……そうだ」
レオンは振り返らずに答える。
「これはもう、個人の判断で扱うには危険すぎる」
「……」
確かに。
ここまで来ると、誰か一人がどうこうできる話じゃない。
「……」
“使っている”男が、小さく笑う。
「管理、ね」
「……」
「面白い言い方だな」
一歩、前に出る。
「誰が決めるんだ、それ」
「……」
「正しさを」
はっきりと言う。
「……」
レオンは、一瞬だけ黙る。
でも、すぐに答えた。
「決めるんじゃない」
「……?」
「制限する」
「……」
その言葉は、冷たかった。
「……」
「通りすぎる言葉は、制御する必要がある」
「……」
カイルが小さく頷く。
「妥当」
「危険度、閾値超過」
「……」
ミラは、少しだけ楽しそうに言う。
「つまり、使わせないってこと?」
「そうだ」
迷いなく答える。
「……」
その瞬間。
「それは困るな」
“使っている”男が言った。
「……」
空気が、また張り詰める。
「……どうしてだ」
レオンが聞く。
「決まってるだろ」
軽く言う。
「使えるものは、使う」
「……」
「それだけだ」
「……」
シンプルすぎる。
でも――
強い。
「……」
「なあ」
男が続ける。
「さっき見ただろ?」
少女の方を見る。
「助かった」
「……」
「それが答えだろ」
「……」
レオンが、ゆっくりと首を振る。
「違う」
「……何が」
「結果だけで判断するな」
「……」
「それが常に正しいとは限らない」
「……」
男は、少しだけ笑った。
「でも」
一歩近づく。
「助かったのは事実だ」
「……」
「それでいいじゃないか」
「……」
ぶつかる。
完全に。
「……」
リナが、小さく言う。
「……どっちも正しい気がする」
「……」
僕も、そう思う。
どちらも間違っていない。
でも――
「……」
同時には成立しない。
「……」
そのときだった。
「……決める必要はない」
別の声が入る。
王都の男だ。
「……」
全員の視線がそちらに向く。
「……」
ゆっくりと前に出る。
「……?」
「どちらも正しい」
はっきりと言う。
「……」
「だが」
一拍置く。
「放置すれば、破綻する」
「……」
静かに続ける。
「だから」
視線が、僕に向く。
「管理する」
「……」
その言葉は、重かった。
「……どうやって」
思わず聞く。
「簡単だ」
即答だった。
「源を押さえる」
「……」
「……源?」
「お前だ」
はっきり言う。
「……」
空気が止まる。
「……」
リナが、小さく息を呑む。
「……」
レオンも、何も言わない。
ただ、見ている。
「……」
「お前の言葉が、起点になっている」
「……」
「なら」
一歩、近づく。
「管理すればいい」
「……」
その意味が、すぐに理解できた。
「……」
自由じゃなくなる。
使うかどうかも。
いつ使うかも。
誰に使うかも。
「……」
全部、決められる。
「……」
“使っている”男が、笑う。
「それはいいな」
「……」
「効率的だ」
「……」
「でも」
一歩、後ろに下がる。
「つまらない」
「……」
その一言で、空気がまた歪む。
「……」
「なあ」
男が言う。
「お前」
僕を見る。
「どっちがいい?」
「……」
言葉が出ない。
「管理されるか」
一拍。
「自由に使うか」
「……」
選ばされている。
明確に。
「……」
レオンが、低く言う。
「答えるな」
「……」
「今は判断する段階じゃない」
「……」
でも。
「……」
逃げられない。
これは。
いずれ決めないといけない。
「……」
そのとき。
少女が、小さく言った。
「……私は」
振り向く。
「……」
彼女は、ゆっくりと顔を上げる。
「……どっちでもいいです」
「……?」
「助かるなら」
はっきり言う。
「それで」
「……」
その言葉が。
一番、重かった。
「……」
誰も、すぐには何も言えない。
「……」
でも。
それが、現実だ。
「……」
王都の男が、小さく頷く。
「……決まりだな」
「……?」
「必要性は証明された」
「……」
視線が、再び僕に向く。
「……連れて行く」
「……」
「王都へ」
「……」
その一言で。
すべてが決まった。
「……」
戻れない。
もう。
ついに「管理」という概念が出てきました。
自由に使うのか、管理されるのか。
そして、主人公は“対象”として扱われ始めています。
ここから物語は一気にスケールが変わります。
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次話、いよいよ王都へ向かいます。




