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僕の言葉がなぜか正解になる世界で ―無自覚の一言が、人も世界も動かしてしまう  作者: 三浦レン


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第20話 それでも止められない

 歪む。


 その感覚は、はっきりしていた。


「……過剰最適化」


 カイルの言葉が、頭の中で繰り返される。


 必要以上に、安全側に寄る。


 それは一見、正しい。


 でも――


「……違う」


 小さく呟く。


 これは、違う。


「……何が違うの?」


 リナがすぐに聞く。


「……選べなくなってる気がします」


「選べない?」


「はい」


 さっきの例。


 一人でも持てた荷物。


 でも、二人で持つことが“正しい”になった。


「他の選択肢が、消えてる」


「……」


 リナが黙る。


 それは、さっき感じた違和感と同じだ。


「……なるほど」


 レオンが言う。


「“最適解の固定化”か」


「……それ、いいんですか?」


 思わず聞く。


「状況による」


 即答だった。


「常に最適なら問題ない」


「でも」


「そうじゃない場合がある」


 短く言い切る。


「……」


 それは、さっきの事故とも繋がる。


「……つまり」


 カイルが整理する。


「言葉は、最適化する」


「だが」


「最適化が過剰になると、柔軟性を失う」


「……」


 ミラが小さく笑う。


「綺麗にまとまってるわね」


「……笑うところじゃないです」


「そう?」


 楽しそうだ。


「とても“それっぽい”じゃない」


「……」


 それっぽい、で済ませていい話じゃない。


「……次だ」


 王都の男が言う。


 声が少しだけ低い。


「もう一段階、試す」


「……何をですか」


「意図的なズレを入れる」


「……え?」


「条件を変える」


 そのまま、別の場所へ歩く。


 村の外れ。


 少しだけ人が少ない場所。


「対象、三名」


 カイルが言う。


 適当に選ばれた三人。


「……いいか」


 男が言う。


「今回は、“曖昧な指示”を使う」


「……曖昧?」


「具体性を削る」


 それは――


 さっきまでの逆だ。


「……やれ」


 男が僕を見る。


「……」


 少しだけ迷う。


 でも――


 やるしかない。


「……気をつけたほうがいいと思います」


 言う。


 曖昧に。


 あえて。


「……」


 一瞬、静かになる。


 そして――


「……何を?」

「どっちの意味だ?」


 反応が分かれる。


 迷いが戻る。


「……」


 さっきとは、明らかに違う。


「……記録」


 カイルが言う。


「曖昧指示、分岐発生」


「……」


 レオンが小さく頷く。


「戻ったな」


「……戻った?」


「選択肢が復活した」


 それは、いいことのはずだ。


 でも――


「……」


 違和感は消えない。


「……もう一度」


 王都の男が言う。


 今度は、別の場所。


 少しだけ危険な足場。


「……」


 同じ条件。


 でも、違う指示。


「……」


 少し考える。


 曖昧にするか。


 具体にするか。


 どちらも、結果が変わる。


「……」


 そのときだった。


「……アオイ」


 リナが小さく言う。


「どうするの?」


「……」


 わからない。


 でも――


 ひとつだけ、確かなことがある。


 どちらを選んでも、影響が出る。


「……」


 息を吸う。


 そして――


「そのまま進むなら、足元を見たほうがいいです」


 言う。


 曖昧と具体の中間。


「……」


 一瞬、間がある。


 でも――


「……ああ」

「足元な、確かに」


 動きが揃う。


 完全ではない。


 でも、バラバラでもない。


「……」


 カイルが言う。


「部分的統一」


「……中間か」


 レオンが呟く。


「……面白い」


 ミラが笑う。


「……」


 王都の男は、何も言わない。


 ただ――


 少しだけ、目が変わった。


 評価じゃない。


 確信に近いもの。


「……」


 空気が、静かに揺れる。


 そして――


「……やはり」


 男が言う。


「止めることはできない」


「……」


「制御も、完全ではない」


 それは、つまり。


「……どうするんですか」


 思わず聞く。


 男は、少しだけ間を置いた。


 そして――


「連れていく」


 はっきりと言う。


「予定通り、王都へ」


「……」


 決まった。


 完全に。


「……」


 リナが、小さく息を呑む。


「……アオイ」


「……はい」


「行くことになるね」


「……そうですね」


 否定できない。


 ここでは、もう足りない。


「……」


 レオンが言う。


「ちょうどいい」


「……え?」


「ここで終わる話じゃない」


 その言葉は、少しだけ前向きだった。


「……」


 ミラは、楽しそうに笑っている。


「やっと外ね」


「……」


 カイルは、すでに記録をまとめ始めている。


「……」


 僕だけが、少し遅れて理解する。


 止められない。


 言葉も。


 そして――


 この流れも。


 だから。


 行くしかない。


 外へ。


 その先へ。

ついに「村の中の話」が終わりました。


ここからは外の世界。

もっと広く、もっと危険な場所で、言葉はどう動くのか。


ここまで読んでいただいて面白いと感じていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

次章、いよいよ本格的に物語が動き出します。

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