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43話 ピエタ





「えへへ、お腹一杯! やっぱり夕食はピエタに限るね!」

「そうね。様々な民族や人種に合わせた料理を提供してくれるのは、あそこぐらいだもの」

「でもあそこの店主は偏屈すぎる。愛想が悪い」

「まぁ、レイ。いつもよりもツンツンしちゃって」


ベアトリスを先頭に、三人はルネサンスの螺旋階段を上っていく。本来なら打ち合わせが終わった時点で解散する予定だった。


だが、これから一人で改装作業を続けるユーマへ何か差し入れを持っていこうとベアトリスが言い出した結果、三人の手にはピエタで包んでもらった青年用の夕食と菓子が抱えられることになった。

イザベラはあぁ、と何かを思い出した様に呟く。


「確か今代の料理長はドワーフと人間のハーフだった気がするわ。だから種族の違いに適合した料理が出せるのかしら」


その言葉にレイは目を丸くする。


「……長命種と短命種。珍しい組み合わせ」

「そうねぇ。恋愛に種族なんて関係ない────そう言える時代になったのは良いことだと思うわ」


そこで一度言葉を区切る。


「でも長く生きていると、それだけでは済まないことも知ってしまうのよね」

「……イザベラは、少し考えすぎ。ベアトリスのこと、心配してる?」


イザベラは階段の上で「早く早く」と手を振るベアトリスを眩しそうに見つめた。


天井灯を受けたブロンドの髪は輝くようで、その無邪気さは自分にはもう持てない光のようにも見える。


イザベラはその光から目を逸らすように、レイへ微笑みかけた。


「いいえ。私はもっと自由な外の世界について触れて欲しいと思っているわ。……ベアトリスにも、貴女にも」


イザベラの言葉にレイは眉頭を強く寄せた。


「私には必要ない。私はベアトリスとイザベラだけ居ればいい」

「ふふ、嬉しいわね。でもその口説き文句は外の世界にもっと触れた後に言ってくれた方が響くわ」


むぅ、と膨れるレイと共にイザベラは階段を上り、ようやく大部屋に辿り着いた。それを皮切りにベアトリスは待ってましたとばかりに、扉をノックする。


「ユーマさん!少ないですが差し入れ代わりに夕食を持ってきました!アンジェラさんから隣の部屋に食材を置いても良いとの事なので、後で良かったら召し上がって下さい!」


すると中から微かに固い足音が響き、こちらに向かってくるのを感じる。イザベラはその足音を聞きながら、先程この部屋にいた時はこんな音だったかと微かに疑問を感じた。


足音は扉の目の前まで来ると、ピタリと止まる。


「丁度良かった。その食材を使いたかったんだ」

「え?」


言葉の意味を理解出来ずにいるベアトリスをそのままに、扉がゆっくりと開いていく。


「おかえりなさいませ、なんてな」


ユーマは照れ隠しの様に戯けて、扉を完全に開き切った。その奥に見える世界を目の当たりにしたイザベラは、抱えていた荷物を落としそうになる。そしてしばらくして白状する様に片手を上に上げた。


「……先ほどの発言を訂正するわ。外の世界っていうのは、私たちが思っているよりずっと広いみたい」




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