イベント当日と謎のイケメンエルフ
お昼に一度ログアウトして、13時からログインする。お昼はメティスと食べに行ったが、相変わらずの食べっぷりだったな。
ログインして少し経つと、ミカさんもやってくる。
「じゃあイベントに行くか!」
「はい!」
「出発するのよ!」
少し前に運営から大型イベントの通知メールが来ていた。そこに【イベントは各国の首都から参加可能。イベントNPCがいるので、話し掛けてイベント専用フィールドにいけます】との事だ。
って事でみんなで首都ヌヴェルヘルトに移動する。もちろんミカさんはシルクちゃんとアイビーちゃんを連れていく。
連れて行っても、他の眷属はちゃんと巣で待っているし、もしキラーアントが攻めてきても、巣の中にいる眷属達が戦ってくれるらしい。便利だな。
ちなみに俺はキラーアントを5124匹倒した。ドロップした内訳はこんな感じ。
◆キラーアント
・キラーアントの甲殻 4799個 コモン
・キラーアントの大顎 3334個 コモン
・キラーアントの酸袋 1841個 アンコモン
このキラーアントは装備品のドロップはしないみたいだ。強さもそこまで強くないし、これだけ倒してもレベルはほとんど上がってない。スキルも似たようなもんだ。
キラーアントの素材に関してだが、メティスの話を聞いて、キラーアントの甲殻と大顎はギルドで買い取ってもらう。その理由は甲殻は鎧とかの素材に使えるが、まぁ他にも良い素材の鎧とかがあるからな。中級者レベルなら、卒業するぐらい序盤用の素材だ。
大顎も似たようなもんだな。武器とか色んなものに使えるが、他の代用品でも問題ないのであまり売れないのだとか。
キラーアントの酸袋は色々と用途があってそれなりに売れるとの事だ。酸を使った鍛冶での特殊な加工とか、あとは投擲や薬品等に使ったりする。
それに酸袋の外皮だが中級者ぐらいまでが使える、腐食耐性が付いた装備が作れる。腐食耐性が付いた防具はそこまで多くないので、そういった理由でそれなりに売れたりする。
これはワールドマーケットで1個5000シルで売り出す。錬金術でも使ったりするけど、ある程度の数を既にミカさんから買い取ってるのだとか。キラーアントはほとんどミカさんが倒したから、めっちゃ素材持ってそうだな。
さて、久しぶりにやってきました首都ヌヴェルヘルト!今日はイベント初日とあって凄い人集りだな!
「凄い数の人ですね!」
「みんな首都で待ち合わせしているのよ」
「メティス、肩に乗ってもいいぞ」
「あら、君から肩に乗ってもいいって言うなんて珍しいのよ」
「この人の数じゃ迷子になる可能性があるからな」
「私は子供じゃないのよ!」
そう言いながら俺の足を叩いているが、結局俺の肩に乗るメティス。
「首都にイベント専用NPCがいるってことだけど、どこにいるんだろう?」
「恐らく冒険者ギルドじゃないの?」
って事で冒険者ギルドにいく。冒険者ギルドの中もいっぱいだな。受付に話を聞くと、首都ヌヴェルヘルトの中心に噴水のある広場があるのだが、そこにいるとのことだ。
冒険者ギルドでキラーアントの素材を買い取ってもらい、噴水広場に向かう。ちなみに甲殻と大顎は全て売ったけど、大した金額にはならなかった。
首都ヌヴェルヘルトの中心、噴水広場にはやはり人が多く大混雑している。イベント専用のNPCはどこかと探していると
「君、イベント専用NPCは噴水の前にいるのよ。プレイヤーが次々に消えていってるのが見えるのよ」
肩に乗っているからか、奥の方まで見渡せるメティス。俺達は人をかき分けてNPCのところまでいく。
ようやくNPCの前まで行くことができ、話しかけると
「私はイベント専用NPCです。私の力でイベント会場に飛ぶことが出来ます。イベントの説明等はイベント会場でされます。イベント会場へ着きましたら、まずは運営が用意した拠点へ行き、イベントの参加登録をお願いします」
なるほど。出入りは誰でもできるけど、イベントの参加を登録していないと、イベント自体には参加できないのか。
「わかった」
「イベント会場へ行きますか?」
「お願いする」
そう言った瞬間、俺の視界は真っ白になり、少しの浮遊感を感じた後、視界が晴れる。するとそこは――
「これはすげぇな⋯⋯」
先程まで首都ヌヴェルヘルトにいたのに、今は目の前に大きな砂浜があり、その先に海がある。キラキラと太陽の光を反射してすごく綺麗だ。
「ここがイベント会場⋯すごく広くて綺麗な場所です!」
「海が透き通っているのよ!」
「エメラルドグリーンの海だな。小さな魚もいっぱい泳いでいるな」
海が透き通っているから、色んな魚が泳いでいるのが確認できる。これはテンションが上がるな!
周りにプレイヤーが結構いるのだが、普通に海で泳いだり遊んだりしている。もちろん魚釣りをしているプレイヤーもいる。
「さて海はまた後で確認するとして、まずは運営が用意した拠点に行かないとな」
「どこにあるのでしょうか?」
「こういうのは大概、無人島の中心にあるものよ」
この無人島は三日月っぽい形をしていて、海とは反対側には大きな山脈がある。というか結構でかいな、この無人島。
俺達が転移してきた場所は島の中心付近らしく、少し歩いたところに拠点も確認できた。よし、早速向かうことにする。
向かっている最中、前からチャラそうな男三人組が俺達の方へ向かってくる。なんか嫌な予感しかしないな。俺は関わらないように道を譲る形で左に避けたのだが、その男三人組はわざと俺の前に立ちはだかる。
「君達三人パーティ?俺達も三人パーティなんだけど一緒に組まない?」
「すまないが結構だ」
「はぁ~?君に聞いてないよ?」
「後ろの可愛いお嬢ちゃんと肩に乗っている美少女ちゃん、どうかな?俺達と組まない?」
「断るのよ」
「あの⋯その⋯⋯私もお断りします」
「えぇ~?そこを何とかさー。俺達こうみえて結構強いしさ、イベントも三人より六人の方がいいと思うんだよね、おれ」
「そうそう。ランキング報酬とかも俺達なら取れると思うんだよ」
断っているのにしつこいな、こいつら。面倒なのに絡まれたか。
「さっきも言ったが断る」
「君達には言葉を理解する知能がないの?」
「あ゛ぁ〜?⋯⋯ん?あれ?よく見たら有名人のメティスじゃん!」
「やべ!俺写真撮っとこ!」
「ちょっと!許可してないのよ!勝手に撮らないでくれる!」
「おいお前らいい加減にしろよ!」
なんなんだこいつら!平気でマナー違反するし、礼儀もないし。ミカさんも怖がってるし早いとこ追い返したいのだが。
「うるせぇな!ちょっとぐらいいいだろ!」
「ちょっとぐらい?君達は言葉を理解出来ない猿なの?私達は断っていたのよ!」
「そういう事だからもうどっかいけ。二度と俺達に近付くな」
そう言って俺達は進もうとすると、またチャラ男三人組は俺達の前に立ち塞がる。
「おいおい、俺達は親切でパーティを組もうって言ってるんだぜ?」
「俺達と組めば君達にも利があるから誘ってるんだよ。断る方がおかしくないか?」
「ならここではっきり言おう。お前等みたいな奴と組めば利があるかもしれないが、イベントを心から楽しむなんて無理だ。だからお断りだ」
「私もそう思うのよ。人に嫌がることをしてる君達とどうイベントを楽しめばいいのよ。君達のやってる行為は迷惑行為なのよ。蟻ちゃんもそう思うのよね?」
ミカさんは何も言わないが、コクコク頷いている。
「ほら、今ならGMコールで通報してやらないでやるから、さっさとどっか行け」
「⋯⋯黙ってきいてりゃ迷惑だと?」
「もう頭にきたぜ!おいテメェ⋯!」
三人組が俺達に近付いて、肩に乗っているメティスに手を伸ばしてくる。俺はその手を止め、もう一人の男の手も掴んで二人を抑えるが、残る一人まではどうしようもない。
残る一人のチャラ男はミカさんに近付き、手を伸ばしているとこだった。くそ!こうなったら剣を動かして、PK覚悟であいつを倒すか!そう決意して【念動】を起動させた瞬間――
「おいおい⋯⋯怖がってるかわいこちゃんに手を出すなんて卑怯な真似をしてんじゃねぇーよ」
チャラ男の手がミカさんに触れようとした瞬間、少し背の高いエルフ?のようなイケメンの手に止められている。
「お、お前誰だよ!」
「俺様?俺様は通りすがりのイケメンってな」
「お前には関係ない話だろ!」
「関係ねぇーよ?だが見ちまったらほっとけねぇだろ?かわいこちゃんが怖がってるのに見て見ぬふりは男が廃るってもんだ」
「この――!」
「おい!お前達か?迷惑行為をしているのは?」
なんだ!?いきなり目の前にスーツを着た黒服の男が現れた。
「おぉ!仕事が早いねぇー、GMは」
「GM⋯ゲームマスターか」
「そうそう!俺様が通報しといたのよ!」
「それで状況は?」
俺達はいきなりこの三人組に絡まれたこと、断ってもしつこくつきまわれたことを説明した。
「あとは許可なくいきなり写真を撮られたのよ!」
「それはこいつが有名人で――!」
「有名人であろうと、本人が拒否しているのに撮影するのは規約違反だ」
このゲームは、髪の色とか弄れるし、顔とかにはフィルターが掛かるらしいが、プロポーションは弄れない。それで特定される可能性があるから、許可なく盗撮は規約違反なんだよな。
ちなみにこのゲームでは、スクリーンショットに意図せず他人が写り込んだ場合、撮った方には警告が、写った側には通知が届く。いま知らない誰かから撮られた可能性があるって。
これは設定でパーティやフレンド、クランになら撮られても警告がでないように出来る。それでも知らない誰かが写る時があるから、みんな写真を撮る時は結構慎重になる。
写真を撮られた側は、運営を通して撮影者に削除を依頼できる。撮影者がその依頼に応じなかった場合は、規約違反としてアカウント凍結の対象になる。運営は撮影時の注意点を次のようにまとめている。
・風景を撮ったら、たまたま他のプレイヤーが写った:撮影者と写った側に通知が届き、必要なら削除を依頼できる。
・断られているのに、特定のプレイヤーを狙って撮った:明確な迷惑行為として処罰対象になる。
・撮影画像を使って現実の本人を特定したり、個人情報を公開したりした:さらに重い違反になる。
今回のチャラ男三人組の行為は、特定のプレイヤーを狙った盗撮にあたる。
「お前達のアカウントを一週間凍結する。撮影した画像については、運営からの削除指示に従わなければ、アカウントの永久停止の対象になる」
「ちょっ!?ちょっと待ってくれよ!1週間?イベント終わるじゃねぇか!ふざけんな!」
「そうだぞ!俺達はイベントを楽しむ権利はねぇってのか!?」
「それほどの事をしたのに自覚がないのか?まぁいい。このゲームを始める前の規約に同意したはずだ。ルールを破って楽しむ者と、ルールを守って楽しむ者。当然私達が守るのは後者だ。このゲームをまだ続けたいなら、しっかり反省するように」
そうGMが言い終わった瞬間、チャラ男三人組は強制ログアウトしたのか、その場で消えていった。GMは俺達の方に向き
「この度はご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした」
「運営が悪いわけじゃありませんよ」
「そう言っていただけると幸いです。では私はこれで。これからも良き異世界ライフを」
そう言って消えるGM。残ったのは俺達と謎のイケメンエルフ。
「すまない、助かったよ」
「いいのいいのー!困ってる時はお互い様だろぉ?」
「私からも礼を言うのよ!」
「その、ありがとうございます!」
「もしかして俺様の勇姿に惚れちゃったか?俺様ってつくづく罪な男だぜ⋯」
こいつもチャラ男と同類に見えるが、助けてもらったからあまり強く言えない。
「なんなの?この自意識過剰な男の自信は。口を開けば下品な男なのよ」
「め、メティスちゃん⋯」
メティスがほんと、どストレートに言うなぁ。
「げっ!?俺様ショック〜。せっかく助けてやったのに」
「助けてくれた事には感謝するのよ」
「はい!本当に助かりました!」
「感謝してる?ならかわいこちゃん達!俺様とこの後、お茶しないー?」
「ご、ごめんなさい!」
「断るのよ!やっぱり口を開けば下品なのよ!」
「お前⋯」
「冗談だって!だからそんなに睨むなよ、鎧の騎士さんよぉ」
俺の顔が鎧なのに、睨んでることがバレたか。しかし、メティスとミカさんに断られた時、ほんの一瞬だけすごく悲しい顔をしたような気がした。気のせいか?
「本当か?」
「当たり前だろ?助けてくれた恩人のパーティに手を出すほど、俺様、人間腐ってねぇのよ」
「⋯⋯助けた?俺がお前を?」
「君、知り合いだったの?」
「えっ?さ、さぁ⋯?」
マジで誰だっけ?俺こんなやつ助けたっけ?⋯⋯あっ!
「お前1ヶ月ぐらい前に、街で男共に絡まれてた男か!」
「そうそう!思い出してくれてよかったぜぇ!じゃないと、本当に不審者になるとこだったからな⋯⋯」
なんだ?最後はなんて言ったか聞こえなかったが
「あっそうだ!俺様の名前を教えておくぜ」
「いやいらんが」
「そう言うなよぉ!一度目は偶然、二度目は必然って言うだろぉ?俺様達が出会ったのも必然だろうよ。俺様の名はレイ・アミティエス。気軽にレイ様って呼んでいいぞ?」
「レイな。俺はルヴァンシュだ」
「ふ、フォルミカです!」
「名乗るのは癪だけど、メティスなのよ」
「えーと⋯鎧野郎がルー君で、かわいこちゃん二人がミカちゃんにメティス様だな!」
「おい!鎧野郎ってなんだ?そしてルー君ってなんだ!?」
「なんで私は様なのよ!」
「えぇ?いいじゃんかよ。俺様が男を名前で呼ぶなんて極僅かな人間だぞ?その極僅かの中に入ってるんだから栄誉だぞ。メティス様はなんというか、小さいのに偉そうって感じだからだな。でもまたそれがプリティーでオールオッケーなのよ!」
「そんな栄誉いらないんだが?」
「下品男!馬鹿にしてるのね?私のこと馬鹿にしてるのね!」
「ん?やべっ!?もうこんな時間か!俺様ちーと違うかわいこちゃん達と待ち合わせしてるからよ、また何処かであったらそん時はよろしくな!」
そう言って運営が用意した拠点に走っていくレイ。なんだったんだ?あいつ。
「まったく!失礼な男なのよ!」
「でも、根は悪い人じゃなさそうですね」
「こら蟻ちゃん!毒されたらダメなのよ!あの男はこのゲームでは有名で、色んな女性にナンパして迷惑かけてるのよ!」
「そうだぞ?ミカさん。俺が前に出会った時も女の件で言い争っていたからな」
「そ、そうなんですか⋯」
と、苦笑いするミカさん。ミカさんは純情だから、あの人にあまり近付けたくないな。それはそうと、俺達も拠点に向かうか。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




