クラン会議とクランクエスト
サイハ村の村長ジグバとの話が終わり、俺達はクラン会議をすることにした。
場所はクランハウスの一階大広間である。大広間にポツンと座る三人と妖精一匹。
「さて、まずは近くの村、ひいてはこの拠点に危機が迫ってるとのことだが、その原因がキラーアントという魔物だそうだ」
「アントというぐらいだから、私も蟻だと思うのよ」
「大元は恐らく、キラーアントの女王だろう。この魔物もフィールドボスだと思うけど、ミカさんはこの魔物をどうしたい?」
「テイムしたいです!出来れば女王を!」
まぁそう言うだろうと思っていたよ。少し前に、みんなで話をしてた時に聞いたことがある。テイムしたい虫は他にどんな虫がいるんだと。その時、ミカさんは蟻と言ってたな。なら捕獲を前提に動くか。
「ならまずはその女王を探さないとな」
そんな話をしていると、妖精が急に飛び上がる。するとホログラムのディスプレイが現れる。
「これはクラン機能か」
クラン機能は基本的に妖精の近くで扱える機能だ。クラン情報やメンバーの情報、設備ポイントの振り分けやクラン引っ越しなどが出来たりする。
基本的に全員がこのクラン機能を触れるが、引っ越しやクラン解体などの項目はクランマスターしか触れない。
そのクラン機能の中の一つの項目、クランお知らせにビックリマークが付いている。俺はそのお知らせをタップする。
「クランクエスト?」
「クラン全体で対処する依頼って事なのよ」
「さっきのジグバさんからの依頼になってますね」
俺はそのクランクエストのお知らせをタップして、詳細を確認してみる。
「なになに?キラーアントの群れがサイハ村に押し寄せようとしている。このままではサイハ村が壊滅してしまうだろう。まずはキラーアントを倒して数を減らそう。クランの力を結集してサイハ村を救出せよ。キラーアント0/100000!?」
俺は見間違えかな?と鎧の指で目を擦り何度も確認した。だが表記は間違いなく十万匹となっている。
「十万匹がサイハ村に押し寄せたら、流石にどうしようもないのよ」
「す、すごく大量にいますね⋯」
「これクランクエストなのか?ちょっとしたイベント規模じゃないのか?」
「そうでもないかもしれないのよ?そもそもこのサイハ村自体が、普通に行ける場所じゃないのよ。あの大山脈を越えないといけないってことは、それなりの実力が必要なのよ。それを私達はウィルの背中でショートカットしたのよ」
「本来であれば、強くて数が多いクランが大山脈を越えて、このクランクエストを受注するはずだったって事か?」
「恐らくなのよ。そうじゃなきゃ私達三人で十万とかいうふざけた数を要求しないのよ」
「ルヴァンシュさん!ミカさん!これ見てください!詳細の下の方に期限が書かれてますよ!」
そのミカさんの声で俺達は詳細の下の方に目をやると、本当に期限が書かれていた。期限は2ヶ月か⋯
「これってどうなんだろ?長いのか?」
「もしクラン人数が20人だったとして、その一人一人が一日にキラーアントを100匹ノルマにすると、2000匹狩れるのよ。それを約60日繰り返せば12万匹なのよ。少しは余裕があるのよ」
「でも私達は三人しかいませんよね⋯」
「一日でキラーアントを650匹狩らないといけないのか」
「違うのよ。私は非戦闘員なのよ?なので君と蟻ちゃんが1000匹ずつなのよ」
「まぁ一日1000匹ぐらいならいけそうだが、出てくる頻度によるなぁ」
数字自体は多いが、わらわら群れているのなら何とかなりそうなんだよな。ただ、なかなか出会えないとかだと相当きついだろう。
「運営もサイハ村を本気で潰そうって訳じゃないから、余裕持って期限は2ヶ月にしたんじゃないの?」
「も、もし期限までに倒せなかったらどうなるんでしょ?」
「そりゃサイハ村が壊滅するじゃないの?もう一つの異世界であるなら、村が魔物によって滅ぼされるなんてこともあり得るのよ」
「私達三人で、本当にキラーアントを10万匹倒せるのでしょうか?」
「正直分からんな。キラーアントの強さもそうだし、どれぐらいの頻度で出てくるかも分からんからな」
「私はそんなに心配していないのよ。私の考えが当たっているなら私達でも問題なくいけるのよ」
「そうなのか?メティスがそう言うなら、問題なさそうだが⋯」
「もしメティスちゃんの考えが外れていたら?」
「その時はサイハ村は諦めるのよ」
「おい!あっさりだな」
「仕方ないのよ。そもそもこの場所にトップクランすら辿り着いてないのよ?そんな場所で三人でクランクエストなんて、本来であればクリアするのが難しいのよ」
た、確かに⋯。俺達はウィルの背中に乗ってきたが、それ自体が本来の攻略ルートじゃないからな。ならメティスの考えが当たっている事に賭けようか。
「それはそうと、キラーアントが最低でも10万匹いるってもはや軍だな」
「それ、あながち間違ってませんよ!蟻には軍隊アリなんて呼ばれる種類もいるんです!」
「どうせキラーアントも普通の蟻より大きいんじゃないの?そんなのが10万匹ってもはや国なのよ」
「蟻という大国を相手にするのか⋯」
「普通より大きいってことは、巣の中を探検できるって事ですかね?こんな貴重な経験、なかなかないですよ!すごく楽しみじゃないですか!?」
「う、うん⋯」
「とりあえず期間は2ヶ月あるし、まだ焦るときじゃないのよ。君達は他に話したいことがないの?」
「あっそれなら私があります!」
ミカさんが勢い良く手を上げる。
「シルクちゃんとアイビーちゃんの巣を何処かに作りたいのですが⋯⋯」
「何処でもいいんじゃないの?」
「そうだなー。アイビーちゃんの巣は確か地面に作られていたよな。魔界樹の隣でも作ったらいいんじゃないか?」
「シルクちゃんはどんな巣なのよ」
「シルクちゃんは土の中でも、糸を張って空中に巣を作ることも出来ます!」
「シルクちゃんとアイビーの巣は俺達が決めるんじゃなくて、作りたい場所を決めてもらったほうがいいか」
「そうですね!そう伝えておきます!」
俺とメティスは特に話したいこともないので、クラン会議を終える。
ここからは自由行動になる。まぁ大体いつも自由にしているのだが。俺は大浴場が気になったのでそっちを見に行く。
大浴場には脱衣所があるのだが、俺はリビングアーマーという種族。当然脱衣することは出来ない。なので鎧のまま入ることにする。
お湯に浸かるとじわじわと体が温まってくるのが分かる。
「ゲームとはいえ、本当に浸かっているみたいだ。気持ちいい」
油断していると本当に寝そうになってしまう。俺はお湯に浸かりながら目を瞑り、リラックスしていると、ブブブブと少しうるさい音が聞こえてくる。
なんだ?と思って目を開けると、大人の男性ぐらいの大きさの蜂が俺の近くを飛び回っている。
「うおっ!?ビビった⋯。あぁ、アイビーちゃんの眷属召喚か。眷属なのにわざわざ挨拶しに来るなんて律儀だな」
ちなみにアイビーちゃんはもっとデカい。最初はビビったが、ミカさんの従魔と分かれば怖くはない。むしろ可愛いまである。
蜂眷属はこちらの様子を伺い、満足したら何処かに飛び去っていった。俺は再び目を瞑ってリラックスしていると、また羽の音が聞こえる。戻ってきたのかな?と目を開けると――
「おい、何をしているんだ⋯?」
俺の目の前には眷属蜂に抱きかかえられて飛んでいるメティスの姿がある。そしてそのメティスの頭に妖精のリリィがちょこんと座っている。
「蜂眷属は楽でいいのよ。君がいない時は、この子に抱えられて移動するのよ!」
「それはよかったな。で?ここは男湯だぞ?」
「そのわりには、お風呂に入る格好じゃないのよ」
「俺は鎧が本体だからな」
「じゃあその鎧の格好って常に裸じゃないの?」
「そうかもしれんが、その言い方はやめてくれ」
意識すると余計に恥ずかしいんだよ。
「そういえば、ミカさんは何してるんだ?」
「自分の魔力を使って、シルクちゃんとアイビーちゃんの眷属を増やしているのよ」
「巣を作るってなると、女王だけじゃ手が回らないだろうからな」
確かアイビーちゃんは一応ミツバチなので、分蜂して働き蜂と一緒に巣を作るらしい。だが、ミカさんにテイムしたことで分蜂が出来ていないから、ミカさんの魔力を使って働き蜂を産む必要があるとか言っていたな。
まぁあんな巨大な蜂の巣を作るなら、女王だけじゃ無理だろうし。シルクちゃんの巣はどうなるんだろ。
「メティスはこれからどうするんだ?」
「私はこれから村に行くのよ。この世界の人と交流は大事なのよ!」
ってな感じで蜂眷属に抱えられながら村の方に飛んでいく。リリィも連れて行くのかな?
さて、俺はこの後どうするか⋯。やはり期限が2ヶ月あるとはいっても、不安だからキラーアントを狩りに行くか。少しでも討伐数を稼がないとな。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




