ガルガンディア大山脈と巨大な大木
シルバーウィークの休みは、世間は5日あるが、俺は3日⋯⋯。悲しみだが頑張って執筆しよ
『そろそろ出発するよー』
「頼む」
「ん」
「お願いします!」
そんな返事を返すと、巨躯とは思えないほど軽やかに動き出すウィル。飛んでいるのに風や振動が感じないのはウィルが何かしているからなんだろうが、本当に快適だな。俺達はウィルの頭の上で座って雑談をする。
「そのウィルがオススメする家って魔王国領内にあるのか?」
「そうだよー。首都ヌヴェルヘルトから南にいけばある村なんだよ」
「南?確か南って大きな山脈があって、山脈の向こう側はいけないはずなのよ」
「そうなのか?誰か登ったりとかしてそうだけどな」
「ですね。あとは遠回りとかもしてそうですけど」
「山脈には強力な魔物が出てくるのよ。登ってる最中に戦闘なんて難しいのよ。あと山脈は遠回りも出来ないのよ。山脈の向こう側と分断するかのように聳え立っているのよ。まぁこれは聞いた話だから真実かどうか分からないのよ」
ちょっと胡散臭いな。遠回り出来ないとはいっても、山脈の一番端の方は高さが低くなってて向こう側に行きやすいとかあるんじゃないのかな?
「その話は本当だよ。魔物はたしかに強力だけど、どっちかっていうと地形が問題だね。それと遠回り出来ないってのも本当だよ。ほら、見えてきたよ」
俺達は立ち上がり、進行方向へと顔を向けるとそこには――巨大な壁と言えばいいだろうか?それが大陸の端から端まで延々と続いている。
空から見ればよく分かるのだが、山脈は遥か彼方まで途切れることなく続いており、遠回りする事が不可能なのもよく分かる。
「あれが魔王国で最も大きい山脈、ガルガンディア大山脈だよ」
「そう、ガルガンディア大山脈というのね」
「凄く大きい山脈ですね⋯!登るのが大変そうです!」
「あぁ。あの大きさの山脈を登ってる最中に敵に襲われるんだから、たまったもんじゃないな」
「村はあの大山脈の先にあるんだよ。少し高度を上げるね。山脈の山頂付近には飛んでる魔物も多いからね。絡まれると鬱陶しいんだよ」
鬱陶しいとは言うが、倒せないとは言わない。ウィルは戦うこと自体が面倒だと思うタイプだから、こういう言い回しなんだろうな。ウィルが本気出せば簡単に倒せてしまうんじゃないかな?
というか、ドラゴンモードのウィルに喧嘩を売る魔物がいるのか。勝てないのに戦いを挑んでくるから鬱陶しいってことなんだろう。
ウィルは高度を上げて、目下のガルガンディア大山脈を飛び越える。大山脈の山頂付近に、小さな羽虫みたいなのがわらわら飛んでるのだが、よく見るとワイバーンの群れらしい。危険地帯すぎる。俺達が歩いて山を越えるには、もっと強くならないと無理だな。
ガルガンディア大山脈を越えるとそこは――まず俺の目に飛び込んできたのは巨大な一本の大木である。大山脈に遮られて見えなかったが、まさかこんな大きな木があるとは。
険しい地形に、ワイバーンまで群れている大山脈。その先の未知なる場所となると、どんな危険地帯が広がってるのやらと思っていたが驚いた⋯。
そしてその巨木の周りには草原や森が広がり、その中を川が流れている。大山脈の向こうとは思えないほど穏やかな風景だ。
「穏やかな風景だなぁ」
「そうですねー。長閑です」
「あの大山脈の先がこんな穏やかな場所とはビックリなのよ」
『そうだろー?ほら、見えるかな?あの大木の近くに村があるだろう?』
よーく見てみると、家がちらほらあるのが見える。そこまで大きくはない村だ。村は大木の周辺ではなく、少し離れたところにあるようだ。といっても、歩いて数分の場所だから周辺といってもいいのかな。
「本当だ。あの村に俺達の条件に合う家があるのか?」
『んー⋯まぁ正確にはあの村ではなく、大木の近くにだね』
「村には住まないのか」
『でも村の一員には変わりないよ?もし住むって決めたら、ちゃんと村の一員とも仲良くするんだよ』
「それは任せるのよ!」
「私も仲良くします!」
「善処しよう」
そんな話をしていると、すぐに村の上空にまで到達する。ウィルはゆっくり降下しているのだが、何やら下が騒がしいと思い、上から覗き込むと、下に人集りが出来てるな。
まぁいきなりこんなデカい竜が村に降りてきたらビックリするか。いやそれとも、ウィルの事を知ってるから出てきたのかな?
ウィルが下に到達すると、村人?達が近くに集まってくる。俺達はウィルから降りると、ウィルもいつもの人型に戻る。
「おぉ⋯!ウィルナード様!よくぞお越しくださいました!」
「ウィルは村人達と知り合いだったのか」
「まぁね。旅をしていた時に、たまたまここを見つけてね、この村の危機をちょっと救っただけなんだけどね」
「へぇー。ウィルも優しいところがあるんだな」
「もっ、てなに!僕はいつでも優しいじゃないか!」
「ウィルナード様、今日はいったいどのようなご要件で?」
「んー?ほら、あの大木の近くに空き家があったでしょ?あそこに住んでくれるかもしれない人達を連れてきたんだよ」
ウィルがそう言うと、村人の代表?らしき老人がこちらを見る。
「おぉ!それは歓迎すべきですね!⋯ただ、こちらの鎧の方はまだしも女性二人、それも一人は幼子。本当にあの場所で住まわせても――」
と最後まで言い終わる前に、ウィルから強烈な圧の様な物が漏れ出す。村の代表はもちろん、村人達はブルブル震え出す。
「この人達は僕の友達なんだ。その意味が分からない馬鹿ではないよね?」
失礼な村の代表だなと思っていたが、ウィルが怒ってくれているなら俺は黙ろうか。ウィルが言わなかったら俺が言ってたな。
「め、滅相もございません。私はただ、彼女達を心配して――」
「なら不要な心配だね。彼女達も自分も身を守れるぐらいには強いからね」
「そ、そうですか。では要らぬ気遣いでしたな。竜であらせられるウィルナード様の友であるなら、子供であっても侮るのは失礼でした。どうかお許しを」
ウィルはチラッとミカさんとメティスの顔を伺い
「問題ないよ」
「感謝します。⋯⋯では、あの件をこの方達に任せても?」
「うん。もし住むことになったら、任せてもいいよ」
「それは助かります!」
「おい、ウィル。あの件とは?」
「まぁそれは後に分かることさ。君達にとっては利がある事だとおもうんだ」
「まぁ後で分かるならいいか」
「じゃあ家まで案内するよ!ついてきて!」
ウィルは巨木に向かって歩き出すので、俺達もそれに続く。数分歩くだけで巨木に辿り着く。近くで見るとめちゃくちゃ大きいのがよく分かる。あれだ、よくファンタジーで出てくる⋯⋯そう!世界樹みたいな感じだ。
「大っきい木ですね!」
「そうね。何か役割がある木かもしれないのよ」
「ウィル、これって世界樹だったりする?」
「違うよ?」
違うんかい!
「でも近い物だね」
「近い物?」
「うん。これは魔界樹っていう木だよ」
「魔界樹⋯?」
「実は世界樹っていう木もあるんだよ。世界樹の役割はこの世界に空気を作り出すこと。じゃあ魔界樹は――」
「魔素を作り出すことじゃないの?」
「メティスさんはやっぱり賢いね」
「すまん、魔素ってなんだ?」
「わ、私もわかりません⋯」
「全く君達は⋯。少しぐらい本を読むのよ!魔素っていうのは魔法を使う上で欠かせない物質なのよ」
「ちなみに魔素が集まり変換されると魔力になるんだよ」
なるほど、酸素みたいなもんなのか。恐らく魔素ってのは目に見えないが、そこら辺に漂っている物質なのだろう。
魔素は魔界樹がある世界ならどこにでも漂っている。ただ魔界の方は魔素がもっと濃いのだとか。
魔力は生物が利用可能な形になったエネルギーとでも言えばいいか?生物の中で魔素が変換されると魔力になる感じだ。人間界に魔界樹が植えられる前は、魔法なんて存在しなかったのだとか。
つまり、世界樹や魔界樹というのは世界を維持する上で重要な役割を担っている。
「実は魔界樹って人間界にはないんだよ」
「人間界以外にもあるのか?」
俺がそういうとメティスはポカンと口を開けながらこちらを見てる。ミカさんは苦笑いをしている。えっ?常識なの?
「君、オープニング見てないの?」
「あー⋯飛ばしたな」
「はぁー⋯詳しい事は省くけど、この世界には人間界、魔界、神界があるのよ」
「へぇー、初耳だな」
「オープニング飛ばしてなかったら、皆知ってることなのよ」
「うっ⋯そ、それで?魔界樹って人間界にはないんだろ?なんでそれが人間界にあるんだ?」
「それは、魔王国の初代魔王が国を作る為に、魔界から魔界樹の苗木を持ってきてここに植えたからさ。魔族にとって魔力は命の次に大事だからね」
「じゃあ魔族は元々、魔界に住んでたって事なのか?」
「そうだよ?初代魔王が人間界も支配する為に、魔族がこっちに来て侵略してたのさ。ただそれも昔の話で、今は魔族も平和なものさ」
「今は平和なら、魔族さんは故郷に帰らないんでしょうか?」
確かにな。昔は人間界を支配する目的だったが、今の魔王国は人間界を支配する目的がなくなった、あるいは出来なくなったからじゃないのかな?なら故郷に戻るのもありだと思うのだが。
「この魔王国に住む魔族は、魔界に戻れなくなったんだよ。この近くに魔界へ通ずる道があったんだけど、それが魔界側から閉ざされたんだよ。あれは初代魔王が勇者達に負けてからすぐの事だったねー」
「恐らく魔界という世界から、魔王国は切り離されたのよ」
「うん、僕もそう思うよ。初代魔王は魔界で最強の魔王だったからね。それが勇者達に敗れた。魔界は恐れたんだと思うよ。魔界に通ずる道から、勇者達が攻めてくるのを」
おいおい、ちょっと待て。なんか結構、重要な話してない?この話とかもっとストーリーを追って分かる話とかじゃないの?
「メティスはこの話は知ってた?」
「私も初耳なのよ」
「じゃあ魔王国は魔界から見捨てられた国なんですね。そう考えると、なんか淋しいですね」
「そうだね。そういった過去があるから、未だに神聖ユースティア皇国は魔王国を敵視しているんだよ。今の魔王は平和主義者とはいえ、それを認めないんだ。本当に困ったもんだよ」
と溜息をつく。確かジルベルトさんも現代の魔王は平和主義者だと言ってたな。そのウィルの言葉にメティスは顎に手をやり、深く考え出す。また何か引っかかるところでもあったのだろうか?まぁ考察はメティスに任せればいいか。
「まぁー魔界樹と魔王関係の話は一旦置いといて、君達の家なんだけど、ほらそこにあるよ」
いや切り替えがすごいな!というか魔界樹の横に大きな家があるからずっと気になってたが、魔界樹とか魔界の話の事も気になりすぎて言い出せなかったんだよ。
「じゃあ中を見させてもらうか」
「楽しみですね!」
メティスはまだ考え中でああなったら長いから、俺達だけで先に中を見てみるか。楽しみだな!
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




