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ウィルの本当の姿と世界の広さ


ウィルは早速行こうと言っていたが、健康タイマーがもうすぐだったので、一度ログアウトして19時から皆でログインすることになった。


ウィルには申し訳ないけど少し待ってほしいと言ったら、あっさりOKしてくれた。魔王国で食べ歩きをしてくるとか。


ログインしたかどうかなんて分からないけど、どうするんだろ?と思っていたが、ログインして動けば、鱗も動くから分かるのだとか。まぁウィルにはログインって言葉は分からないから、「少し寝てくる」とだけ伝えている。


待ち合わせはさっきの食事処だ。俺達がログインしてそこで待っていると、しばらくしてウィルがやってくる。


「じゃあいこうか!」


俺達は店から外に出て歩き出す。


「そういえばウィルさん、先ほど角と尻尾を隠していると言ってましたけど⋯」


「あーそれね。一応隠しているんだ。純粋な竜ってのは目立つからね」


「純粋?」


「ほら、君達異邦人の中にもいるだろ?竜族が。ただあれは、正確には竜人族なんだよ」


そうなんだ。ちなみにプレイヤーはキャラ作成時、竜人族は作れるが、竜族は作成不可能なのだとか。


「竜人族の姿を真似る事も出来るんだけど、どうしても完璧には出来ないからね。特に真似ている竜人族からはすぐバレちゃうんだ。ならいっそ、角と尻尾を隠して普通の人間として振る舞うことの方が多いね」


「確かに今の姿だと、竜ってパッと見ても分かりませんね」


「どっちかっていうとエルフに見えるな」


「エルフならわりと見かけるから、そっちのがいいのよ」


「やっぱりそうかい?ならこのままでいくよ!」


と、気分よく歩いているが、実際どこに向かっているんだろ?いい場所を知っているからと付いて行っているが、街の外に出る方向なんだよな。


「ウィル、さっきから思っているんだが、何処に向かっているんだ?」


「えっ?街の外だよ」


「街の外に家があるのでしょうか?」


「あー違う違う。家はここから少し離れている場所にあるんだよ」


「離れた場所?他の街にでも行くのか?」


「街っていうか村だね」


「んー?そんな村があるの?魔王国から少し離れた場所に村なんて聞いたことないのよ」


掲示板を見たり、AWF内の本をよく読んでいるメティスも知らないのか。メティスはダンジョンやスキル、錬金レシピなんかの攻略系は掲示板では見ないようにしているらしいが、街や村の名前くらいなら普通に調べている。


地図の大体どの辺りにどんな街があるかは知っているが、特産品なんかは実際に訪れて、自分の目で見て調べたいらしい。メティスが街の名前に詳しいのはその為だな。


「そこはね、陸路から行くのは難しいからねー」


「陸路から難しいってそれじゃどうやって⋯⋯まさか⋯!」


「そう!そのまさかさ!」


「まさか旅に出てこんなに早く竜の背中に乗る事になるなんて思いもしなかったのよ⋯」


「ウィルさんの背中に乗れるんですか!楽しみです!」


「ふふ、僕だって誰かを乗せるなんて初めてさ!」


おいおい⋯まじかよ。竜の背中に乗って飛ぶなんて、まだ俺達しか経験したことないんじゃないのか?出来るだけ目立たないようにはしてるが、俺達は今から凄い事をしようとしてるんじゃないのか⋯?


「街の外に向かってるのは、変身を解くからか?」


「当然だろ?この姿で君達を乗せることなんて出来ないだろ?でも、僕本来の姿は大きくて目立つから街の外まで行くんだよ!」


って事で街の外に出て、そこから少し歩いたところまでいく。ここからだと、首都ヌヴェルヘルトがそれなりに小さくなっている。


「ここまでくれば大丈夫かな?君達も少し離れてくれるかい?」


そう言われたので俺達は少し離れる。するとウィルを中心に、風が渦巻いていく。


やがてその風は勢いを増し、暴風となり、巨大な竜巻が形成される。普通であれば、こんな近くで立っていれば、まともに立つことさえ出来ないだろうが、そよ風程度の風しか感じない。恐らくウィルが守ってくれているのだろう。


あと、雲一つない青空なのに、何故か竜巻の中だけ霧がかかったようにウィルの姿が見えない。そしてその巨大な竜巻が納まり、霧?が晴れると、そこには荘厳でありながら、美しい巨大な竜が静かにこちらを見ていた。


髪は黄緑色っぽかったが、竜の鱗はエメラルドグリーンのような深い緑が特徴的だ。太陽の光が鱗に反射してキラキラ光っている。


背中には二対四枚の翼が広がり、少し動くだけでその巨体を中心に風が渦巻いている。そして翼には、風の渦を思わせる模様が刻まれているのも神秘的である。


頭部には鋭くも美しい、純白の立派な角が二本伸びている。そして長くしなやかな尾の先端には、半透明の鰭のようなものが生え、ゆらゆらと揺れるたびに周囲の風まで揺らめいている。


俺はもちろん、メティスやミカさんも、その荘厳かつ美しい竜に言葉を失っていた。すると少し強めの風が俺達を撫でる。ウィルの事だから、感想を求めているのだろう。まずミカさんが口を開く


「凄く美しいです!こんな綺麗だなんて思ってもいませんでした!」


「確かに竜ってもっと荒々しいイメージだったけど、こればっかりは私もビックリしたのよ」


「だな。特に四枚の翼と白い角が神秘的だ。だが、格好よさも兼ねていて、これでこそ竜って感じだな!」


そんな俺達の感想を聞いて、嬉しくなったのかプルプル震え始め


「そうだよね!やっぱ僕って美しくも格好いいよね!いやー、やっぱり君達は分かってるね!」


と、普段の口調になりながら嬉しそうにしている。あんなに荘厳な佇まいだったのに、喋るとメッキが剥がれるというか⋯⋯


「これはあれだな⋯」


「残念美人ならぬ、残念美竜なのよ」


「黙っていれば完璧なのにな」


「ふ、二人共!き、聞こえちゃいますよ!」


「んー?何か言ったかい?」


「いや、格好いいと話していたんだ(黙っていれば)」


「そうなのよ(黙っていれば)」


「あ、アハハ⋯」


ミカさんは聞こえてないかヒヤヒヤだったらしいが、本当の事だから仕方ない。


「それにしてもデカいな」


「20mぐらいはあるのよ」


「どうやって乗るのでしょうか?」


「それはねー」


と言いながら大きい顔をゆっくり地面に下ろしてくる。すると俺達の体がフワッと浮いて、ウィルの頭の上に着地する。


「なんだ今の!?」


「僕の風の力で少し浮かせただけだよ。それより僕の頭の上なんて特別な人にしか乗せない特等席なんだよ?空の旅を存分に楽しんでね!」


「楽しみですね!」


「ちょ、ちょっとこれ、どこにも捕まる場所がないじゃないのよ!」


「落ちないから大丈夫だよ!さぁ、そろそろ行くよ!」


その掛け声とともに、二対四枚の翼を大きく動かし、地面から飛び立つ。あっという間にかなりの高度まで飛び上がる。


「ルヴァンシュさん!メティスちゃん!下を見てください!首都ヌヴェルヘルトがもうあんなに小さく!」


ウィルの頭の上ではしゃぐミカさん。俺もミカさんの隣に移動して下を見る。


「本当だな。というかすげぇ景色だ。これはリアルでもめったに見れる景色じゃないぞ。メティスもこっちに来て見てみろよ」


「き、君達!そんな頭の端ではしゃいでいると落ちるのよ!」


確かに。でも何故か落ちないから安心と思ってしまっている自分がいる。するとミカさんが


「メティスちゃん!風の防壁?があるから落ちないようになっていますよ!」


なるほど。と俺も触ってみる。なんか透明な壁があるみたいだ。それに


「そういやぁ、振動も感じないな。飛行機よりも乗りやすいと思うし、メティスもこっち来いよ」


「わ、私はここで――」


「メティスちゃんこっちです!私がついているから大丈夫です!」


メティスが断ろうとしたら、ミカさんがその手をギュッと握り、顔の端まで連れて行く。少し強引だけど、これがミカさんの良いところだよな。


「メティス、一緒にこの世界を見るんだろ?」


「わ、分かったのよ⋯」


言葉は弱々しいが、ミカさんの手を握るメティスの手は、何があっても離さないと思えるぐらいの力で握り返していた。


「す、凄いのよ⋯。これが⋯この世界⋯⋯」


「広いですね⋯!」


「あぁ⋯。でもこれでもまだ、ほんの一部なんだろうな。そう考えると凄くワクワクしないか?」


「君は本当に子供なのねって馬鹿にしたかったけど、私も子供だったみたいなのよ」


「子供でもいいじゃないですか!子供らしくはしゃいで、皆でこの世界を冒険しましょう!」


俺とメティスはお互い顔を見て


「「そうね(だな)」」


未知のアイテムやレアアイテムを求めて、まだ見ぬ大陸や魔物に思いを馳せる。だが今は一歩一歩出来るとこから始めようか。まずはクランハウスだな。


俺達は少しの間、この高度からの景色を眺めて、新たなクランハウスに向かう。



読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
村・・・竜の里にあるクランハウスだろうか?陸路からは行けないって事はクランハウスへのワープ機能無いと帰るのも一苦労だね
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