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魔王国の首都に向けて


「ミカさんこんにちはー」


「ハローハローなのよ!」


「ルヴァンシュさん、メティスちゃん!こんにちは!」


「もうログインしていたんだな。待たせてしまっていたならすまない」


「大丈夫です!私もさっきログインしたばかりですよ!」


そう言いながら凄くニコニコしているミカさん。うーんその笑顔に癒されるね。


「そういえば二人はお昼何食べたんですか?私はナポリタン食べました!」


「ハンバーグステーキを食べたのよ!」


「お、俺もハンバーグステーキを食べたな⋯。き、奇遇だな⋯」


「二人共同じお昼を食べたなんて、そんな偶然あるんですね!」


「そ、そうだねー⋯」


俺は一緒に食べたということを、何となく隠したほうがいいかなと、ぎこちない返事になっているが、横でメティスはくすくすと笑っている。それを見てミカさんは顔を傾げている。


「そ、それより!そろそろ出発しようぜ!」


「そうですね!」


「さっ、魔王国の首都に向かうのよ!」


俺達は宿からチェックアウトし、冒険者ギルドに向かう。魔王国の首都には、また高級馬車で向かう事になる。


「そういえば魔王国の首都まで、また街を経由していくんだよな?」


「そうなのよ!街を二つ越えたら魔王国なのよ!」


「どんな街なのでしょう!」


「私も町の名前しか知らないのよ」


「そうなのか?てっきりその街を詳しく調べているのかと」


「調べてるわけないじゃないのよ!そんなのつまらないのよ!」


「そうだったな。目で見て知る方が良いんだったな」


「蟻ちゃんは攻略サイトとか掲示板は見たりしないの?」


「私は基本的には見ませんね。虫のテイム方法を調べた時にちょっとだけ見ました!」


やっぱりそうか。ミカさんは攻略サイトとか掲示板をあまり見ないイメージだな。ミカさんはこの世界を肌で感じたいタイプだと思う。


そんな話をしていると冒険者ギルドに到着する。ハイルジスト王国の第二の街、エンリットで受付したように、ここの街でも高級馬車を手配する。今回はお金を持っているから、メティスから借金をしなくて大丈夫だ。


前みたいに街の入り口付近で高級馬車を待っていると、ほどなくして馬車が来る。


今回乗るのは俺達だけなので、乗ったらすぐに出発する。


「次の街はどういう街なんでしょうか?」


「次の街はドライアースなのよ。まぁ私も街の名前しか知らないのよ」


そういえば御者さんに聞けばいいんじゃないのか?NPCとはいえ、本当の人間みたいなAIだから答えてくれるんじゃないだろうか?


「御者さん、少し質問いいですか?」


「はい、何でしょう?」


「ドライアースってどういう街なんだ?」


「ドライアースは温泉が有名でして、療養したい方や観光しに来る人が多くいますね」


「温泉!いいですね!」


「だな。まぁ今回は首都まで行くから寄り道はできないが、ポータルストーンを登録すれば何時でもいけるな」


「わ、私は温泉、少し苦手なのよ」


「そうなんですか?」


「すぐのぼせちゃうのよ」


確かに子供って大人と違って温度調整が未発達だったりするから、湯あたりすることが多いのだとか。こういうところでも苦労するのは大変だな。


そんな話をしているとドライアースに到着する。ポータルストーンを登録して馬車に戻ると、御者が何やらブツブツと独り言を呟いている。その独り言が終わると、顔をこちらに向け


「お客様、申し訳ありませんが、冒険者ギルドから連絡があり、一人追加で乗せることになりました。問題ないでしょうか?」


「問題ないぞ」


「私もなのよ」


「大丈夫です!」


「ありがとうございます。それではすぐにお連れしますので、少々お待ちください」


そう言って御者は馬車から離れる。


「冒険者ギルドから連絡があったって、どうやって連絡を取り合っていたのでしょう?」


「念話じゃないの?」


「念話か。そういうスキルもあるんだな」


「あるのよ。ただ、私達プレイヤーはフレンドやパーティ同士でボイスチャットが出来るから、そこまで必須スキルじゃないのよ」


「そうなのか」


ということは、NPC用に作られたスキルって事かな?当然だがNPCにもスキルはある。だがプレイヤーと違ってフレンドになったりしてボイスチャットは出来ない。


NPCもパーティ自体には参加できるが、ボイスチャットは利用できないらしい。確かにNPC専用かもしれないスキルだが、このスキルがあればNPCとも、何処でもやり取りが出来るんじゃないのかな?そんな事を考えていると


「いやーすまないね。待たせてしまったかね?」


そう言って馬車に入ってきたのは、背が高くスラッとしている老人。立派な白髪のヒゲを携えた仙人のような男で、頭には立派な悪魔の様な角が二本生えている。


「いえ、大丈夫ですよ」


「フッフッ⋯ありがとう異邦人の方よ」


仙人のような男は、感謝しながら席に座る。すると


「お客様、出発します」


御者が言って馬車がゆっくり動き出す。


「あぁ、やはり私達はおかしく見えますか?」


「そうだね。リビング一族にハーメルン一族、こっちのお嬢ちゃんは吸血鬼(ヴァンパイア)一族のようだね。リビング一族は基本的に誰かに仕えたりするのが本望とする一族だ。ハーメルンは森の中でひっそりと静かに暮らしていて、吸血鬼一族も基本的には外に出ない一族だからね」


「凄く物知りですね!」


「一つ間違いがあるのよ。私はお嬢ちゃんじゃないのよ!歴とした大人なのよ!」


あっ、メティスが子供と言われてちょっと怒っているな。


「ああ、そうだった。すまないね。吸血鬼一族は、吸血鬼になった時から外見が変わらないのだったね。子供に見えても立派な大人という事だね」


メティスは呆れた顔で、諦めたように話を変える。


「それで?おじい様はどうしてドライアースに来てたの?」


「私はただの療養だよ。最近仕事が多くてね、ようやく休暇が取れたとこなのだよ」


「それはお疲れ様なのよ。さぞ大変な仕事だと思うのよ」


「フフ、全くだよ。この歳になってまだ働けと言われていてね」


「だからお忍びでこんなところまで来たの?それとも何か理由があってここまで来て、温泉は次いでって事なの?」


ん?メティスは一体なんの話をしているんだ?どういう事か全く分からん。


「⋯⋯ほう。なぜそう思ったのかね?」


「おじい様は種族に詳しすぎるのよ。特にハーメルンなんてひっそりと暮らしている一族なのに、その実情を知っているのは、魔王国の事情に相当詳しい者なのよ。ただの研究者って線もあるけど、それはさっきの御者との会話で、その線は薄くなったのよ。僅かだけど声のトーンが上がっていたのよ。平然と喋っている様に聞こえたけど、私達と話す時とは明らかに違うのよ」


そう指摘された御者は、聞こえないふりをしていたにも関わらず、ビクッと体を強張らせる。AIといえど声のトーンの違いとかもあるのか。やっぱりこのゲームのAIは凄いな。


「そうね⋯⋯魔王国の中枢にいる貴族って線もあるけど、私の考えではもっと上なのよ。例えば⋯魔王様に近しい存在とか?⋯⋯なんて考察してみたけど、こんな話突拍子もないのよねー!」


「⋯⋯ふ、ふふ、ふははは!これは愉快!まさか私の正体を言い当てる者がいようとは!ここで私が否定しても、声のトーンとやらで嘘がバレるであろう?本当の事を言い当てられて、その後は冗談だと安心させられる。この安心させられる瞬間が一番危険なのだが、そこを狙っていたのであろう?」


「あら、バレてたの。でもおじい様はそこまで分かっているのなら、声のトーンを変えず、ポーカーフェイスで否定できたはずなのよ」


「ふふ、買いかぶりすぎだよ。それに君達とここで会ったのも何かの縁ではないかね。是非とも聡明な君の名前を教えてくれないか?」


「ほんと、食えないおじい様なのよ。メティスなのよ」


「食えないのはお互い様ではないかな?メティス君のお仲間も名前を教えてもらえないかな?メティス殿の隣にいるのだ、優秀なのだろう」


「る、ルヴァンシュです⋯」


「ふ、フォルミカです!」


「そういうおじい様はなんて名前なのよ?」


「ジルベルトという者だ」


「ふーん、そうなの。覚えておくのよ」


とメティスが言った直後、パーティチャットにメティスからの連絡が来る。


メティスは普通に言葉を返していたけど、実際はこの男をメティスは知っていた。


ジルベルト・グランツ。魔王国の宰相。


⋯⋯超大物じゃねーか。ほんと何でこんなところに。


俺とメティスとミカさん。そしてジルベルト宰相を加えての4人の馬車旅は、他愛もない話をしながらまったりと進む――わけもなく


「お、お客様!敵襲です!敵が近づいて来ています!」


「はぁ!?高級馬車は特殊な結界が張ってあって、魔物が近づかないんじゃないのかよ!」


「君!これは恐らく突発的に始まった特殊クエストなのよ!」


そういう事か!宰相って分かった時点で嫌な予感はしていたが⋯!


今はドライアースから出て少しの場所。この辺りは森が近くにあって、奇襲があるならそここらだろう。


魔王国とはいえ住めないような環境ではなく、普通にハイルジスト王国と似たような環境をしている。まぁ森の葉は紫とか青だったり、結構禍々しいが空は晴天だし、これが魔王国の普通なのだろう。おっとそれより――


「ミカさん!」


「分かっています!」


ミカさんはすぐさま、シルクちゃんから眷属召喚をして5匹、馬車の周りを護衛させる。アイビーちゃんはまだ育成途中だ。だから今回はシルクちゃんの眷属なのだろう。


すると思った通り、近くの禍々しい森から魔物が押し寄せる。俺も馬車の外に飛び出す。ミカさんとシルクちゃんは馬車を守ってもらう。


「数はそこまで多くなさそうだ」


そこら辺の雑魚はシルクちゃんの眷属に任せて、俺が狙うのはアイツだ。俺はそいつに鑑定を飛ばす



・牛魔人(ミノタウロス)

よく魔族と間違われるが、正真正銘の魔物。強い腕力で大きい戦斧を振り回す。戦闘狂で自ら戦いを好む。ランク:B級


なるほど。どうやら魔法系ではなく、近接系に特化した魔物らしい。


そうそう、最近気づいたのだが、なんか鑑定に敵のランクを表示させる設定があったわ。


このランクってのは、冒険者ギルドが推奨しているランクで、要は敵の危険度みたいなもんだ。


ランクはFから始まり、一番上はSSSだそうだ。F〜Dは下級、C〜Aは中級、S〜SSは上級、そしてSSSは最上級の危険度である。


ちなみにステータスUP・大のレベルを上げるなら、C〜Aの中級レベルの魔物を狩らないといけない。


そんな事より、今は目の前の敵だ。


「俺も進化したんだ。試し斬りには丁度いいか?」


右手に鋼の剣を持ち、【念動】で鋼戦鎚を浮かせて走り出す。さて、ランクBの近接系の魔物だ。正面からやりあえるのか試してみるか!



読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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