メティス先生によるイベント講座
「待たせたのよ!」
「おーおかえり、メティス」
「こんにちはメティスちゃん!」
「蟻ちゃんもハローハローなのよ!」
結構早かったな。ミカさんとなんか気まずい空気が流れてたから助かった。
「ミカさんが来たらここに呼んでと言ってたがメティス、何か話したいことがあるのか?」
「そうなのよ!君はお目当てのレアアイテムをゲットして、蟻ちゃんは新たな仲間をテイムしたのよ。なら、これからどうするかって話なのよ」
「なるほど。確かに決めておいた方がいいな」
「蟻ちゃんはもうこの街周辺で、テイムしたい虫はいないの?」
「はい!この街周辺にはもういません!なので、私もこの街から移動しても大丈夫です!」
ミカさんはテイムしたい虫の魔物を既に決めているらしい。だから竜の森で出てきた、キラーマンティスやランサービートルに大興奮したものの、テイムはしないのだとか。
「まぁ王都を目指すのは予定通りとして、王都に着いてからどうするかだな」
「そう言えば、あと一ヶ月もすれば大型イベントが始まるのよ?」
「大型イベント?」
「わ、私も知らないです」
「君達、最近始めたばかりだから知らないのも無理ないのよ。って事で、私が教えてあげるのよ!」
そう言いながら、ベッドの上で胸を張っているメティス。俺とミカさんは、各々のベッドに座っている。
「メティスちゃん講座、イベント編の始まりなのよ!拍手するのよ!」
「「わー」」――パチパチ
その拍手で満足したのか、メティスが喋りだす。
「イベントとは――」
イベントは大きく分けて三種類に分けられる。小規模イベント、大型イベント、特殊大型イベントだ。
今回メティスが言ってるのは大型イベント。大型イベントは約3カ月に一度行われる、全てのプレイヤーが参加可能なイベントだ。
別のサーバーを用意して、特別なフィールドへ移動したりと、結構大がかりなイベントである。
イベントの内容だが主に三つ。戦闘職が活躍するイベント、生産職が活躍するイベント、戦闘職と生産職が活躍するイベント。基本的にこの三つを約3カ月スパンでサイクルする感じ。
「じゃあ次の大型イベントはどんな内容なんだ?」
「次の大型イベントは戦闘職と生産職が活躍するイベントなのよ」
「って事は、みんな活躍できますね!」
次に説明されたのは特殊大型イベントだ。これは全員参加可能だけど、特に何ヶ月サイクルとかはない。突発に起こったり、決まった時期にするのだとか。
まぁ基本的には夏の花火大会とか、冬のクリスマスや大晦日、春のお花見に、秋はハロウィン等だな。ここは鉄板で、普通の大型イベントとは違い、みんなで楽しみましょうみたいなスタンスだ。
「季節イベントみたいなもんか」
「楽しみですね!」
最後に小規模イベントだが、これは運営が用意するイベントではなく、街や村が用意するイベントだ。
ハイルジスト王国や魔王国アインヘルの建国祭とか、とある街では料理コンテストやオークションとかもやってるのだとか。
「オークションは興味あるな。珍しい武器とか防具とか売りに出される可能性があるし」
「そういうのもあるのよ!ただ、15億ならちょっと懐には心許ないのよ」
「す、すごくお金が必要なんですね」
ふぇ~みたいな顔をするミカさん。まぁ普通ならそういう反応になるよな。俺もついさっきまでそんな感じだった。でもステータスUP系の鎧買ってたら15億なんてすぐ消えるんだと理解した。とはいえ、オークションに本格的に参加するなら大分先の話だな。
小規模イベントは建国祭のような一年に一回もあれば、一ヶ月に一回やるイベントもある。そして小規模イベントにも突発的なイベントも、もちろんある。
「ってな感じなのよ。イベントの括りは大勢が参加できるって事で、小規模であろうとイベントになるのよ」
「なるほど」
「何だかこれからが楽しみになりますね!」
確かにな。特に俺とミカさん⋯⋯いや、メティスもか。メティスの顔を見ればワクワクしている顔が隠せてない。去年はずっと一人でプレイしていたから、ろくに参加もできてなかったのだろうな。何にせよみんな、これからのイベントを楽しみにしてる。
「で、ものは相談なのだけど、来月には大型イベントがあるし、共有ハウスが欲しいと思うのよ」
「共有ハウス?」
「自分達の家みたいな感じですか?」
「そうなのよ!AWF内では自分用の家を持てるのよ。そこを拠点にして活動したいのよ。私も自分の作業場が欲しいのよ」
「自分の作業場か⋯。確かに俺も自分用のコレクションルームとか欲しいな」
「わ、私は⋯牧場みたいな広い場所が欲しいですけど、そんな家はないですよね⋯」
「そうなのよね⋯。蟻ちゃんはテイムしてる虫を放し飼いに出来るスペースも欲しいのは当然なのよね。ならいっそのことクランを設立してもありなのよ」
「クラン?なんでまた」
「クランはクランハウスってのを買えるのよ」
メティスの説明によればクランハウスはいわば、大勢が共有する拠点ハウスなので、普通の家よりもかなり大きく設定されている。
「ただ、クランハウスは基本的に早い者勝ちなのよ。今からクランを立ち上げても、良い拠点が残っているかどうか分からないのよ」
「でも残ってるかもしれないのですよね?ならクラン作って確認してみませんか?」
「だな。無ければ諦めればいいし、クランを作ったから何か不都合があるわけでもないし」
「それにクランってなんか家族みたいな感じで⋯なんか今よりもっと、ルヴァンシュさんやメティスちゃんと仲良くなれるかなって⋯⋯」
ミカさんに、そんなどストレートな事を言われた俺とメティスはお互い顔を見ながら
「「⋯⋯」」
「あっ⋯!ち、違うんです!今のは――!」
「ルヴァンシュ君、ここに天使がいるのよ」
「全くだ。聞いてる俺達も恥ずかしいな」
「だけど悪い気はしないのよ。君もそうなのよね?」
「当然だろ?寧ろ余計にクランを立ち上げたくなったな」
「は、恥ずかしいです⋯。い、今のは無かったことなりませんか⋯?」
「ならないのよ」
「というかずっと心に残るセリフだな。10年後でも覚えてる自信あるな」
「二人とも意地悪ですー」
そんな他愛もない話をしながら、話をまとめていく。
「じゃあ昼過ぎから魔王国の首都に行く。そして首都に着いたらクラン結成して、クランハウスを見て回るって感じだな」
もうすぐお昼だしな。一旦ログアウトして、先にお昼をすましてしまおう。ミカさんもログインしたばっかだけど、俺とメティスに合わせてくれるみたいだ。
「悪いなミカさん」
「いえ!私もお昼を食べにログアウトする予定でしたので!」
って事で13時からまた馬車で王都に向かう事にする。
「じゃ、また後で」
そう言ってみんなログアウトする。さて、昼は外食でいいか。俺は動きやすい半袖半ズボンを着て外出する。もう夏だからなー⋯暑い。
俺は家の鍵を閉め、さて行くかと歩き出そうとしたら、後ろから扉が開く音。振り返るとそこには白く艶やかなロングヘアーを靡かせ、涼しげな水色のワンピースを纏い、頭には麦わら帽子を被った少女が立っていた。
まるで絵本の中にいる妖精が飛び出てきたような少女は、どこか儚げで消えてしまいそうである。そんな儚くも美しい少女は、小さい手で飲み物を呷る様な仕草をしている。まるで「今から飲みに行く?」みたいなジェスチャーだ。
「メティス⋯⋯いや真理、飲んだらログインできなくなるかもしれないぞ」
「分かっているのよ。冗談なのよ」
「それで?そんな可愛らしい姿で何してるんだ?というかそんな服も持ってたんだな」
昨日真理の家に上がったけど、その時は大人用のぶかぶかな服を一枚着ているだけだったな。下を履いてたのかは知らないけど。
「外出する用は持っているのよ。というか古谷さんが買ってきたやつなのよ。私は大人用の服が楽でいいのだけど、流石に外出する時はこういうのを着てって口酸っぱく言われたのよ」
「⋯古谷さんも大変だな」
「今からお昼行くのよね?私も一緒に行くのよ!」
「まぁいいけど⋯恥ずかしいから肩には乗せないぞ?」
「そんなのわかっているのよ!でも疲れたら抱っこはするのよ!」
くっ⋯真理の病気の事を知っているからこそ、そのお願いを断りづらい。
「分かったよ⋯。で、何食べたいとかあるのか?」
「肉なのよ!」
結構ガッツリだな。まぁ俺も嫌じゃないからいいんだけど。
⋯⋯⋯
⋯⋯
⋯
家から歩いて5分のところにハンバーグ専門店の店があるからそこにする。やはり真理と歩いていると何かと目立つ。麦わら帽子を被ってるとはいえ、日本では白い髪は珍しいからな。
アルビノって肌も真っ白で日差しに弱いって聞くけど、真理の肌は普通だから火傷はしていない。
年齢的には大人とはいえ、体は子供だからな。いつ体調を崩すか分からないから、注意深く見ておこう。
ハンバーグ専門店に着いて、食べたい料理を頼むのだが、店の中でも目立っていたな。主に食べる量で。
400gあるハンバーグを10皿も頼んでやがった。店員さんと真理のやり取りは見てて面白かったな。
「このハンバーグステーキを10皿なのよ!」
「えーと⋯こちらのハンバーグステーキは一皿400gありまして⋯⋯」
「そんなの書いてあるのだから分かるのよ!」
「そのー⋯お子様には量が多いとおもいますが⋯⋯」
「見た目で判断するのはやめるのよ!食べれるから頼んでいるのよ!」
そう言われた店員さんは俺の方をチラチラと見て、本当にいいのかを確認してくる。
「この子は大食いなんで大丈夫です。もし残ったとしたら、俺が食べます」
そう言ったら店員さんも納得してくれた。それからどんどん運ばれてくるハンバーグステーキを大きな一口で食べ続ける。最初に一気に注文したのは、熱いのを冷ますためかな。
真理の一口は子供ながらにして大きいから、一皿食べるのが早い。そしてあっさり10皿を食べきった。
「ふぅ~、食べたのよ。でもお腹的にはもう5皿いけるのよ!」
「まじか⋯。カレー食べてる時も思ったけど、やっぱすさまじいな。ステーキ皿をこんなに高く積み上げたの初めてだな」
「君がいて助かったのよ。ステーキ皿って私だとちょっと重いし、背が低いから重ねるのも大変なのよ」
「真理もいろいろ苦労してるんだな」
結局真理はもう5皿注文して、合計15皿食べてたな。追加で5皿注文すると、店員さんからまだ食うのか!?って顔をしてたのが印象的だった。料理作る人もさぞ大変だっただろう。
会計はなんと約二万!真理が食べてたの一皿1200円だからな。俺が払おうとしたら
「ちょっと待つのよ。これ使うのよ」
と渡してきたのはブラックカード!いやまぁ買い物とか食事のほとんどをカードで払ってきたのだから納得か。
「でもいいのか?俺の分も入ってるぞ?」
「そんなの気にしないのよ。私も大人の女性なのよ?有り難く奢られるのよ!」
まぁ確かに大人だが、なんか幼女に奢られる大人って⋯。でも今更別々の会計でっていうのも店員に申し訳ないし、真理の言う通り有り難くご馳走になります。
さて腹拵えもしたし家に帰る。家に帰る最中、案の定食べ過ぎたのか分からないが、歩くのが疲れたと言い出した。
「いやもうマンション見えてるぞ?」
「こんな可愛い美少女のお願いを断るの?周りからの視線が――」
「分かったよ!おんぶでいいか?」
「抱きかかえるのよ!」
はぁー⋯ほんとこのお姫様は。まぁでもやらないと周りの視線がな⋯。俺は意を決して抱きかかえる。横抱きってやつで、右手だけで真理の体を支える。
「やっぱ楽なのよ!それに目線も高いのよ!」
俺は真理の笑顔を見てふと思う。真理はすごく賢いけど、たまに子供みたいにはしゃぐ事がある。
この高いところからの目線も、抱っこされることに慣れていないからの反応じゃないだろうか?ただそれを真理に指摘すれば、高いところからの目線に興味あっただけなのよ!と怒らせるだけだな。
真理の病気を知ってる身としては、真理が一人で住んで暮らしてる方が不自然だが、まぁ過去の話はもっと仲良くなれば話してくれるかもしれない。話したくないならそれでいいし。だから余計な詮索はやめておくか。
「俺が疲れるんだが?」
「さっき奢った借りがあるのよ」
「あっ!それ出すのずるいぞ!っていうか古谷さんにも毎回抱えてもらってたのか?」
「そんなのしたことないのよ」
「えっ!?そうなのか?」
てっきりわがままお姫様だから、古谷さんにも強請っていたと思っていたのだが。
「そんな事したら古谷さんに悪いじゃないのよ」
「俺にはいいのかよ」
「君はいいのよ君は!」
「そうか」
何だそりゃ。と思ったが、どうやら俺には、少しくらいわがままを言ってもいいと思っているらしい。相手は大人だからこそ、抱っこに少し抵抗があるが、真理が楽しそうなら悪い気はしない。だからかな?やっぱり俺は真理には甘いな。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




