1章 バレンタイン
番外編とストーリー編一気にスタートさせます!
ハロウィンに続いて今回もドタバタ...
紫月の件が片付いて、一週間、早かったような遅かったような充実していたといえる濃い一週間だった。あれ以来、紫月と鬼灯はなんだかんだで遊びに行ったり映画を見に行ったりとすっかり仲良しだ。その二人に振り回される蓮は可哀想でならない。いつも多くの紙袋を抱えて二人の後ろをついて返ってくる。まぁ、あれが本望というのだから仕方ない。そして、最近はやたらと家のキッチンからチョコレートの香りがする。嫌というほどに、チョコレートの香りがするのだ。キッチンに飲み物を取りに行こうと、キッチンに入るとものすごく怒鳴られ、追い出されてしまう。どういうことなんだ一体。
「あーあぁ、なんで俺の家なのに出入り制限されなきゃいけねぇんだよ」
「ホントだねぇ〜でも、たまには外に出るのもいいじゃ〜ん」
剣剥はいつも通りニタニタとした調子で菊の状況を面白がっている。
「お前と蓮は許されるのになんで俺がだめなんだよ。意味わかんねぇ。なんか知らねぇの?」
そう、菊以外はみなどの部屋にも出入り制限がかかっていないのだ。
「あはぁ、どーだろー口止めされてるしいえないなぁ〜」
「あぁはいはいもうわかりましたぁ。どっか飯食いに行こうぜ」
「やったぁ〜!あいあいさぁ〜」
公園でウロウロしていた二人はそのままファミレスへと向かい、時間を潰すのであった。
一方、その頃
「ようやく出ていったわよ。本当に剣剥くんはもっと迅速に協力してほしいわ」
「そうだな。まだ紫月に敵意もあるみたいだし。でもまぁ出ていったのだから良しとしよう」
何やらキッチンで怪しげな会議が行われていた。
「二度と帰ってこれないようにいたしましょうか。」
その様子を見ていた蓮は満面の笑みで提案するも即座に却下された。
「とにかく!取り掛かろう。」
「そうね。業、霧、菊がしばらく帰ってこれないように特訓してきてあげて。」
「「了」」
紫月は二人の首にメッセージを書いたプレートと術式を書き込んで菊の方へ向かわせた。
「よし、これでしばらくは安全よ。存分に作りなさい、鬼灯ちゃん♡」
「紫月、あまりそういうのは見逃せません。」
その様子を蓮が凄まじいほどの殺気をまといながら言った。
「あら、何がいけないのかしら。ねぇ、鬼灯ちゃん♡」
ブチッ
その瞬間、何かが切れる音が聞こえた。
「あまり調子に乗られると困るんですよね。いい加減ムチを入れるときみたいです。」
「えぇ、どうかしたのかしら。怖いわ鬼灯ちゃん♡」
その瞬間、蓮の殺気が何倍にも膨れ上がった。
「紫月、あんまり調子に乗っていると本当に殺されてしまうぞ」
「そうかしら、その時は、守ってくれない?ねぇ、鬼灯ちゃん♡」
そう言いながら、紫月は不敵な笑みを浮かべながら鬼灯の腕に抱きついた。
「殺す殺す殺す殺す殺す.......................」
「あぁなった蓮は私には止められないぞ?」
「えぇ〜そんなぁ。ひどいわ、鬼灯t」
ドゴォン
「あぁあぁもう、早くチョコ作らなきゃなのに!邪魔するならふたりとも出ていって!」
鬼灯のその一言で今にも攻撃しそうな二人がピタリと止まった。
「えっと、その、鬼灯様、それはつまり?」
「鬼灯t....グッ、ちょっと話しなさいよこの嫉妬メガネ」
「いやです、あなたには一発やっとかないと気がすみません」
「そんなに私が羨ましいのかしr」
「うるっさいなぁ。出てってくれていいんだけど?」
ビクッ
「「ゴメンナサイ」」
「はい、ふたりともわかったようで何よりだ。さぁ、始めようか」
「私さっきから最後まで話せてn」
「さぁ、始めましょう鬼灯様。」
紫月の一言を蓮が遮り、ようやくチョコレート作りが始まった。
ーーーーー
「お前、霊のくせに頼み過ぎなんだよ。」
菊が自分の財布を見つめながら剣剥のことを睨む。
「ファミレスなんて久しぶりだったし〜めちゃくちゃ美味しかったぁ」
菊はやれやれと言った様子でレシートを見つめていた。
(んでも、責任感じてた割にはだいぶ元気になったみたいだし良しとするか)
「いやぁそれにしても、周りからは一人であんなに頼んでるように見えてるんだよねぇ?それってめちゃくちゃ面白いじゃん!菊、有名人だよ?」
剣剥が茶化しながら楽しそうに菊の隣を歩く。
「あぁ!もう、次はゼッテーおごんねぇかんな!今回だけだ」
「あいあいさぁ〜」
「ある程度時間潰せたし、とりあえず家に帰るか。」
なんやかんやで、二人は家に帰ろうとする、そのときだった。
急な霊圧が空からやってくると感じると同時に、眼の前に業と霧が現れた。
戦いが始まる寸前、首にかけていたプレートが激しく光り、四人は異空間へ飛んだ。
「てめぇら、急に来て何しやがる、鬱憤でも晴らしに来たか?」
菊が挑発的な言葉をかけると同時に、業と霧がプレートを聞くに投げ渡した。
〈二人が特訓に付き合ってくれるわ。異空間へ飛ばしてあげたから存分に戦いなさい。戦い終わったらこの術式を使えば外に出られるわ。ファイト♡ 紫月〉
「なんか、鬼灯と存分に関われるからってキャラ変しすぎだろ。」
「まぁ、いいんじゃなーい?関係ないし〜」
「それもそうだな。うっし、言いなりになるのも癪だから、ここはひとまず帰るとするか」
そう言って、プレートに書いてある術式を使い、菊は業と霧を相手にせず、帰還した。
これはきっと、プレートを渡しちゃいけないやつだ。
二人が帰還してようやく業と霧は理解するのだった。
「あーあ無駄に警戒して損したぜ。」
菊は口をとがらせ、鬱憤を晴らす。
そんなとき、剣剥がハッとしたように菊に話しかける。
「そういえば〜、ファミレス行く前に学校行くって言ってなかった?」
「んな!忘れてた。サンキューな剣剥!ダッシュで行けば閉門までまだ間に合うか」
二人は学校の方へと走り出した。
ーーーー
「ふたりとも失敗しちゃったの⁉️えぇ?プレートを先に渡しちゃった?何してるのよ!ま、いいわ。水晶見たら、ふたりとも学校へ向かっているみたいだし、帰ってきなさい。」
水晶越しに業と霧の報告を受け、紫月はホッとしたような複雑な表情をしていた。
「鬼灯ちゃん、あんまり時間がないわ。完成度はどのくらい?」
「あぁ、あと10分ほどで完成だ。」
「んー、ぎりぎりね。頑張って完成させましょう!そこのメガネも手伝いなさい。」
「僕に命令していいのは鬼灯様だけです。思い上がらないでください。」
「ほーんと可愛くないんだから。」
やや小競り合いがありながらも急いで完成に取り掛かるのだった。
ーーーーー
学校にたどり着くと、菊は面倒くさそうに校門の前に立っていた。
「めんどくせぇなぁ、もう帰っていいだろ。今思えば、わざわざ来る必要もねぇし」
「えぇ?先生からも逃げちゃうのぉ〜?」
「あぁ?逃げねぇよ別に。」
「そういえばぁ〜出さなきゃいけないプリントって何ぃ?」
「別に、なんでもいいだろ。お前には関係ないね。」
「そんな事言わないでさぁ〜教えてよぉ〜」
「いやだ。もう、うるせぇからここで待ってろ。何なら先に帰ってろ。じゃあな」
「扱いひどくなぁい?まぁいいけどぉー。あはっまた後でねぇ〜」
お互いにぐずったうえで、ようやく菊は校内に入り、剣剥は家に帰った。
菊が学校に来るのをしぶていた理由は2つあった。
一つはお決まりの霊のせい。
実は学校には七不思議や地縛霊が未熟なガキの弱みに付け込むためにわんさかいるのだ。
そしてもう一つは....
「灰崎!プリントを持ってきたぞ、これでいいだろ。もう俺に構ってくんな。それに、これ以上変更することなんてないんだよ。良い教師ヅラしたいなら他でやれ。」
ガラッと大きな音を立てて職員室のドアを開け、菊は担任の下へ歩き、プリントを渡した。
「あぁ、もう、来てそうそう荒々しいんですよ三途川くん。もう少し礼儀というものを」
いかにも清楚そうな、銀髪の髪に特徴的なロングヘアを後ろで結った執事のような教師が菊を事細かに指導しようとするが、それを遮るように菊はプリントを押し付けた。
「うるせぇな。お前に言われる筋合いねぇんだよ。黙って受け取れ」
「親御さんにはしっかりと見せたんでしょうね。この字面は、黒川さんに似ていますが。」
「グッ、なんでもいいだろ。とにかく、俺はこれ以上付き合う気はねぇんだよ。」
きれいに的を射抜かれたが、菊はそれでもプリントを押し渡そうとする。
すると、急に灰崎は立ち上がり、菊の手を引いた。
「なっ」
菊の手を引いたと同時に、柔道のような技で菊を回転させ、その手にプリントを握らせた。
「てめぇ...ふざけんじゃねぇよ!こんなん、いらねぇって何度も..んぐっ」
白い手袋をつけた手で、灰崎は菊の口を抑え、そのまま満面の笑みを浮かべてつげた。
「再提出です。はい、また明日。」
ピシャッという音とともに、菊は職員室の外へ放り出された。
ドアの向こうからは楽しそうな職員たちの声が聞こえてくる。
「あぁ、くそ。俺の進路なんてどうでもいいだろうが。」
そして、菊にしては珍しいことにプリントを握りしめ大人しく家に帰るのだった。
ーーーー
「ただいまぁ〜調子はどう?鬼灯ぃ〜?」
ガラッとドアが開いて、剣剥が帰ってきた。
「なっ剣剥だけか。もうすぐラッピングも終わる。菊はどうなったんだ?」
玄関に来たのは鬼灯だった。
不器用だからなのか、エプロンにはチョコレートが付いている。
「今学校にプリント届けてるよ〜もうすぐ返ってくるから急ぎな〜」
鬼灯の様子に微笑みながら剣剥は家に上がった。
「そうか、ありがとう。片付けを頼んでもいいか蓮、紫月。」
「まかせなさい!」「了解しました」
剣剥が帰ってきたことでより一層家の中が忙しなくなる。
5分後、ようやくキッチンも片付き、机にはラッピングされたチョコレートが乗っていた。
「初めてチョコレートなんて作ったぞ...こうやって作るのだな、難しい。だが、我ながらいい出来栄えだ。ありがとう紫月。」
服を着替え、チョコレートを見つめながら鬼灯は紫月に礼を言った。
「いえいえ〜でも、女の子なのにバレンタインを知らないなんて...どうやって育ってきたの!?喜んでくれたようで何よりだけれど。」
「私は学校が終わったらすぐに迎えが来ていたからな..そういうのには縁がなかった。」
「しみじみするのはいいけどぉ〜帰ってきたみたいだよぉ?」
剣剥がそう言うと同時に玄関のドアがガラリと開いた。
「あーあ、あのクソ教師舐めやがって...」
ぶつぶつと文句をたれながら菊が家に帰ってきた。
「ほら、鬼灯ちゃん、渡してきちゃいなさい。」
「あ、あぁ、なんだか新たあると気恥ずかしいが..菊、」
「おぉ、ようやく家が開放されたんだな。一体何作ってたんだ?」
「その、これを渡したくて。みんなに手伝ってもらっていたんだ。」
そう言って鬼灯は菊にチョコレートを手渡した。
「え、これって...いいのかもらって?」
「もちろん、それに、自信作なんだ。」
「そ、そうか、、、、、、自信作か、、、、みんないるしな。」
菊は鬼灯の作ったチョコレートを恐る恐る口に入れた。
その瞬間、、、、、
「グッ、ゴホッ、、ウッ、、、蓮、紫月、てめぇら一体鬼灯の何を見てたんだ?」
チョコレートを口に含んだ菊が急に咳き込みだした。
「ど、どうした菊?」
「鬼灯、蓮、紫月、味見したのか?このチョコレート。くっそショッぺぇ」
「味見?溶かして砂糖を入れて....はっ!砂糖.....」
鬼灯はハッとして、目で紫月に確認をお願いする。すると、
「あらあら、これ、塩ね。」
「そうですね。塩と書いてあります。別に気づいていたわけではないです。」
塩の容器を覗き込む紫月に合わせ、壁によりかかる連が食い気味に同調する。
「おい、蓮。てめぇぜってぇ気づいてただろ。」
「そうなのか蓮。言ってくれればよかったのに。」
その様子を見て、菊と鬼灯は蓮を問い詰める。
「そんな、鬼灯様。すみません僕の管理不足です。今の今まで気づきませんでした。」
蓮は鬼灯だけに真摯に対応し、菊を視野に入れようともしない。
「おい嘘つけ蓮、てめぇふざけやがってこのクソメガネっ」
「まぁまぁ、いいじゃ〜ん。部屋戻ろぉ〜」
「おい、はなせ剣剥っ一回アイツをぶっ殺さねぇと...」
このままではいつものように激しい戦闘が始まってしまう。
そんなとき、剣剥が菊を取り押さえて部屋へと引き戻していった。
呆気にとられている鬼灯とすれ違う際、剣剥はぼそっと呟いた。
「今までで初めてだよ。菊がチョコレートを受け取って食べたの。よかったね〜」
「えっ?」
そして二人はいなくなった。
「良かったわね鬼灯ちゃん♡嫉妬しちゃうわ。」
「だいぶ反省してないようですね、死神」
茶化しながら喧嘩を始める二人をよそに、鬼灯はそっと気持ちを噛みしめるのだった。
少し長めです。いかがでしたでしょうか...
菊のストーリー予定中です。
お楽しみに!




