26章 償い
少年を無事に封印することに成功した菊は暗闇の意識空間からそっと目を覚ました。
「んん...個々は、俺ん家か?」
「菊ぅ〜おきたぁ〜?おはよぉ〜大寝坊だぁ〜」
「一晩続いた戦いに加え、闇憑の封印で、体力も限界だったのだろう。まる三日寝てたぞ」
やけに重い体をのっそりと起こし、部屋を見回すまでもなく鬼灯と剣剥が一斉に話しかけてきた。一呼吸おいて顔を上げると、そこには蓮に剣を突きつけられ、拘束された紫月がいた。
「蓮、剣を置いて拘束を解け、話をさせろ」
菊がやれやれといった声のトーンで蓮に指示をする。
「それはご命令ですか?僕は三途川家に仕えてはいますが、菊様の指示に従うなどと...」
「蓮、いいから剣をおろして。私は大丈夫だ。万が一は守ってくれるのだろう?」
「しかし、鬼灯様....今回だけです。鬼灯様のご命令だからです」
蓮は鬼灯の一言でようやく剣をおろし、拘束を解いた。
「早く殺してくれればいいのに、復讐もできない、挙句の果てに闇憑に乗っ取られる始末、慈悲なんていらないわ。早く私を殺しなさい。」
輝きの失った眼で、紫月は菊に首を差し出すようにして跪いた。
「それがお前の覚悟...贖罪か、」
「えぇ、そうよ。さぁ、早く殺して。」
「はぁあ、イサギがいいのか悪いのか。そんなんで俺等がハッピーになると思ってんのか」
大きなため息と不敵な笑みで、菊は紫月に言い放った。
「お前が一番わかってるんじゃねぇのか?所詮”死”なんて逃げでしかねぇってことに。」
「わかったような口を聞かないで、私は何も成し遂げられない。無力なの」
紫月はボロボロと涙をこぼしながら淡々と話す。
「みんなも守れない、復讐すらも成し遂げられない、死神のくせに闇に囚われた。それに、大きな被害を催したでしょう?死者も出たでしょう?」
「あぁ?死者なんて一人も出てねぇよ。人間様なめてんじゃねぇぞ?」
「そんな、はず、だってあなたが殺さないことも知っていたから、だから業と霧も連れてきて、それで、どういうこと?」
「まぁ、そんなことはどうでもいいんだよ。結論、お前は死者も出してないし、上の判断は闇憑による正常な判断ができていなかったためということになる。だが、」
「それでもっ、私が犯そうとしたことは変わらない、だから、早く死なせて。未練なんてないわ。」
「うるせぇなぁ、話は最後まで聞け。俺はお前に未練があろうとなかろうと、謝りたかろうがどうでもいいんだよそんなこと、俺はお前の復讐劇でストレス発散したし。」
「じゃあ、どうするっていうのよ。」
「言わなくても分かれよ、かったりぃな、クソ。俺等といっしょに生きろって言ってんだよ。死んですべての責任から逃げねぇで、前を向け、そして、死ぬまで俺に尽くせ。」
照れくさそうにしながらも、菊は紫月の手を取り、盟約を交わした。
「なによ、それ、そんなの、わかってるの⁉️私はあなたの身内を殺そうとしたのよ?」
「だとよ、鬼灯。お前はどうするんだ?」
「何を言っている。答えはすでに決まっているだろうに、、、、、紫月、私と一緒に遊びに行かないか?復讐のために費やした苦しみも悲しみも消える訳では無いが、解り合って、支えることは私にだってできる、それに、、、ここには男しかいないからな。女友達というのがほしかったというのも含まれているのだ。恋バナ、、とやらも教えてくれるのだろう?」
そう言って鬼灯も紫月に手を差し伸べる。
「本当に、あなた達って重度のバカじゃないのかしら。....ごめんなさい、謝って許されるわけじゃない。私は、あなた達に尽くすわ。」
「ったく、最初からそうしてればいいんだよ。それに、あんな小細工さえなければ霊圧調整できる服も天才的発明だ。」
「あなたに褒められてもあまり嬉しくないわ。さっさと霊圧を調整できるようになりなさい。さぁ、鬼灯ちゃん!一緒におでかけに行きましょ?」
「ははっ。あぁ、そうだな。まずはどこに行こうか?」
楽しそうな笑い声とともに、菊の部屋から二人が出ていく。
「鬼灯様っまだ信用できたわけでは、、、お待ち下さいっ」
それを追いかけるように蓮も二人の跡を追いかけた。
「なっ、おい待てっ。調子に乗ってんじゃねぇぞ!...ぐぁ”あ”っ」
菊が二人を追いかけようと、走り出したその時、全身に激痛が走った。
「ざぁんねーん、菊ぅ。この戦いで一体何体の霊が出入りしたと思ってるのぉ?」
「なん、だと?剣剥、お前なんか知ってんな!」
「あはぁ〜僕らみんな手の内で転がされてたってことだよー」
「おい、ちゃんと説明しろ。」
痛みに耐えながらお喧嘩腰な菊に、剣剥は更に茶化そうとするが、、
「まぁまぁ、お互い未熟だったんだ、そうカッカすんなよ。」
「一件落着なのだ。落ち着いて聞かんか」
「いなくなったと思ったら、てめぇ何してたんだよ、銃途っそれに、紅朱」
「お主らも二人だけじゃ力の向上に限界があると考えた。だから紫月の計画を利用して、騒ぎを大きくしようとお主が助けた少年に闇憑をつかせた。それだけよ」
悪意すらないという雰囲気のまま、銃途と紅朱は笑った。そんな二人とは裏腹に菊は口を開いた。
「じゃあ、封印した餓鬼は?まさかお前、」
「少年は俺が見つけたときには闇憑になっていた。だから利用した。別に、意図的に闇憑にしたわけじゃねぇ。そこは勘違いすんな。」
「僕達を強化するためだったんだって〜本当にムカつくよねぇ」
「まぁ、片付かなそうだったら俺が前線に出てたさ。それに、少年をあんな簡単に封印できたのは俺のおかげだ。あんまり図に乗るな」
「あぁはいはい、そうかよ。じゃあとっとと消えろ邪魔クセェ」
「はいはい、仰せのままに。じゃなー」
そう言って剣剥、紅朱、銃途は菊に憑依した。
「あ”ぁ”....結局俺は無力ってことかよ。....クソが。」
人がいなくなり、暗くなった部屋、菊は一人、もう一度眠りについたのだった。
死神動乱篇、完結です!最後までお読みいただきありがとうございます!
新章、二人が覚醒した今、新たな敵が立ちはだかる。
紫月や業、霧、蓮、銃途、紅朱も加わり、戦いはさらに激しさを増していく。
今後もよろしくお願いします。見守っていただけると幸いです。




