18章 強化
あれから、勝負はあっさりとついた。というよりも、強制的に中止させられた。
ザザ、というノイズ音がどこからか聞こえてきた。
『チャンバラはそこまでよ』
「んなっ、、どっかから見てられんのかよ。」
そういって、菊は銃途とほぼ同時に距離を取り、一度剣剥を戻した。
「えぇ〜なんか、やだなぁ〜いいところだったのにぃ〜」
いつになくキレ気味の低い声で剣剥が言う。
「っち、本当だよ、邪魔すんな」
『あなた達、私に逆らえる立場かしら?まったく、すぐ調子に乗るんだから。まぁ、いいわ。襲撃の日程が決まったから、いや、もともと決めていたのだけれど、あなたには、敵らしい服に着替えてもらうことにしたの。受け取りなさい。』
紫月がそういった途端、目の前に黒服が現れた。
「これ、、、、」
『私のオリジナルブランドってやつよ?あなたの特性に合わせて、霊圧を隠せるようにしてみたの。一度来てみなさい?』
怪しい雰囲気をまとったその服を、菊はためらいもなく着た。
『どう?さっきよりも、筋肉負担もカバーしてくれるから、霊圧を開放できる時間も量も格段に上がるわよ。』
「どうだ、剣剥?悪くない気はするんだが、、、一回中憑いてみてくれねぇか?」
「菊がそう言うならぁいいよぉ?戦ったあとだから多分きついよ?」
「おう、これでだめなら着ねぇ。立ってられたら着てやることにする。」
『へぇ、私の自信作ブランドをためそうってのね?驚いて失神しないでよ?』
そういって、剣剥が菊に憑くと、、、、、、
「まじかよ、、、」
本当に憑かれたのか解らなくなるぐらい、いつものだるさも体中の激痛も感じなかった。それどころか、さっきまでの傷も、溢れ出るほどの霊圧も綺麗に波長が整えられ、傷口がみるみるうちに塞がっていく。
「これ、どういうことだ?傷口が塞がっていってるぞ?」
菊が紫月に向かって問いかけると、
『垂れ流しだった霊圧、活用できないかと思って。あなた達人間は武器としての扱い方としてしか霊圧の使い方を知らない。あなたのお父さんも、おじいさんも、一切そういう使い方はしていなかったでしょう?私達霊は怪我をしても死なない代わりに霊圧を活用してすべてをコントロールしているの。』
「そ、そうなのか?でも、、、、すげぇ。。。。」
菊は思わず呆気にとられてしまった。そうこうしているうちに、あっさりと菊の頬の傷も打撲などもすべてが何もなかったように治ってしまった。
「でも、いいのかよ。俺の傷も治して、強化服も与えて」
『構わないわ。あなたがどうしようと、私には関係ないし、それに、この作戦を利用すれば日頃の恨みもはらせるのだから。鬼灯ちゃんは私がもらうけれど。邪魔さえしなければそれでいいわ。決行の日まで練習相手になってあげるし、練習中に死んだら困るしね。』
紫月は遠回しに菊をディスって会話を終えた。
「あぁ?舐めてんのか?いいぜ、今からでも練習相手になってやるよ」
菊が挑発的な笑みを浮かべると、紫月の声が再び響いた。
『ふふっ、元気ね。いいわ、その意気。とはいえ、今のあなたじゃ、私の足元にも及ばないの。だからこそ、この装備を与えたんだけど。練習相手になるのは後でにしましょう。今日は他にもやることがあるのだから。』
「他のやること?」菊は眉をひそめた。
『そうよ。襲撃の計画を練り直すための準備。それと、あなたたちの連携がどこまで通用するか、少し試しておきたいわね。剣剥くん、あなたもそれでいいわよね?』
「まぁ、いいよぉ〜僕は菊と一緒にいればそれで退屈しないからぁ」剣剥は肩をすくめ、相変わらずの軽い口調で応じた。
『じゃあ決まりね。準備が整ったら、例の場所に集合して。詳細はそこで伝えるわ。』紫月の声が消え、同時に菊と剣剥の周囲に漂っていた圧力も消えていった。
菊は舌打ちしながら剣剥の方を見た。「ったく、あいつのペースに振り回されるのはイラつくな。」
「でもぉ〜おかげで、その新しい服の性能もわかったじゃん?」剣剥がにやりと笑う。
「それはそうだけどよ……」菊は自分の体を改めて確認した。着心地の良さだけでなく、霊圧の流れが格段にスムーズになっていることが実感できる。これならば、これまでのように無理をして戦う必要もない。
「まぁいい。次に会った時には、絶対にあいつの鼻をへし折ってやる。」菊が拳を握りしめると、剣剥は小さく笑った。
「それ、楽しみだなぁ。でもぉ、その前に僕たちもちゃんと練習しないとねぇ〜次の襲撃、結構危ないかもよ?」
「おう。わかってるさ。」菊は真剣な表情で頷いた。剣剥の言葉には重みがある。紫月の言動や行動がいかに癪に障ろうとも、彼女の知識と力は本物だ。彼女が「危険」と言うからには、それ相応の準備が必要になるだろう。




