第277話 戦いのあと
ここは魔王城があった国、レイナルド。
バルキアの戦いからもう3年が経った。
蔓延っていた亜人のモンスターも倒し尽くして、少しずつ人が増えてきた。
「国王様!!
畑仕事なんてしないでくれよ!!」
「そんな呼び方しないでくださいよ!
それに、国王になったつもりはないんですってば!」
「亡きマーティン様の忘れ形見…。
1人息子のあなたが国王じゃなくて誰がなるってんだ!」
「もう…勘弁して下さいよ。
カイルさん。」
魔皇帝を倒した僕は、自分の生まれ故郷、レイナルドへ戻ってきた。
レイナルドに生息していた亜人系のモンスターは食用はもちろん、素材にする部位もほとんどない種族。
それに人と同じような場所に生息する厄介者なので、仲間になった冒険者の皆さんに協力してもらって、全て排除することができた。
その後、もともとレイナルドに住んでいた人たちを探して、一緒に移り住んだ。
その1人がなんと、カイルさん。
カイルさんは父さんに仕えていた兵士だったみたい!
「自分の主人を守れず、おめおめと生き延びてしまった」っていう理由で、カイルさんは人との関わりを避け、ヨムじいさんの村に住んでいたらしい。
僕がレイナルド国王の息子だと知った時は、涙を流して喜んでくれた。
僕がレイナルドへ帰りたいって話したら、カイルさんも当然のように付いてきてくれることになったんだ。
世界一の鍛冶師であるイシュメルさんと、大賢者であるティルマンさんもなぜかレイナルドへやってきた。
ちなみにティルマンさんへは【大賢者】を返却済み。
本人はいらないって言い張ったけど、【大賢者】が引き継いできた記憶…歴史を失うのはあまりに大きな損失だ。
そう話すと、
「次の【大賢者】にも、信じられる相手ができたらいいけどな。」
と言っていた。
話の流れからするとティルマンさんにとって僕たちもそうなんだと思うけど、面と向かって言われてなんだか恥ずかしい。
イシュメルさんと気が合うみたいで、お互いの知らない話をしてよく盛り上がってる。
【大賢者】を持ってるティルマンさんの知らない話ができるイシュメルさん、すごい…。
ヨムじいさんの村にいた鍛冶師ミルドさんとの合作でできた装備は、歴史上初の傑作だったみたい。
2人が作ってくれた装備がなかったら、きっと魔皇帝は倒せなかっただろうな。
それから、最後に【大賢者】を使ってたロヴェルさんも、モンスターや魔族との戦いでものすごく活躍していた。
ティルマンさんにも感謝だ。
【大賢者】といえば、モンスターに頼らない生きるための知恵なんかも結構引き継いでいたみたいで、ティルマンさんはレイナルドのあちこちで引っ張りだこだ。
カイルさんをはじめ、帰ってきてくれた元レイナルドの住民の皆さんも、当時のことを思い出しながら復興に励んでくれている。
ここは元々、モンスターがいなかったけどみんなちゃんと暮らしてたからね。
ギルドは…。
今も存続している。
モンスターはまだ世界中にいるけど、全ての大陸から姿を消すのは時間の問題だ。
モンスターを倒すため、というより、レイナルドで培われた『モンスターに頼らない生き方』を共有するために機能している。
それに、お互い困ったことがあったときに助け合うための繋ぎ役としても。
でもこれは、全世界をつなぐ組織が出来上がっていたからこそできたこと。
皇帝がやってきたことは全部が悪事じゃなくて、世界のためになったことも本当にたくさんある。
それを思い知らされるたびに、別の道はなかったのかと考えてしまう。
…考えても仕方ないことだけど。
とにかく、ギルドはある意味、皇帝がいた時代よりも重要な役目になってるんだ。
そのトップに立ったのが、レイカさん。
他の国のギルド職員からも憧れられてたからな。
聞くところによると、僕たちの繋がりがあったこともトップになった理由の一つみたい。
レイカさんなら安心だ。
ただ、全てがうまくいっているわけじゃない。
モンスターという名の資源は確実に減ってきていて、何度も争いが起きそうになった。
でも、各国の最高戦力のS級冒険者は全員が一緒に戦った仲間。
諍いがあるたびに、S級冒険者同士で話して、和解させてくれてる。
争って勝ったとしても、一時的な利益しか生まない。
依存していた資源を失った世界で生きていくためには、奪い合うことじゃなくて、知恵を出し合い、助け合うことが必要。
身をもって体験した人たちの言葉だからこそ、少しずつその想いが伝わっていってくれてるみたいだ。
もちろん、もっと力を持った独裁者が現れたり、僕たちの次の世代になったときに、争いが起きるかもしれない。
そう考えたら、”みんなが安心して暮らせる世界” であり続けることはすっごく難しい。
けど、少なくとも今はその世界に近づけてると思う。
信じて、進み続けるしかないんだ。




