第275話 ロックの死
炎に包まれたロックを見ながら魔皇帝はため息をついた。
ピクッ
「む!?」
死んだと思っていたロックが、起き上がりざま魔皇帝に[武技]を放つ。
虚をつかれた魔皇帝は躱しきれず、頬から出血した。
「これが繋がりの力とでも言うつもりか?
煩わしい…。」
魔皇帝が空を睨むと、そこには1匹のドラゴンが飛んでいた。
「「ロックーーーーー!!!!」」
【豪龍化】でフォースドラゴンとなったファルクに乗ってやってきたティナとミラだ。
ミラの【気配察知】を頼りにロックを追って来たのだ。
間に合った【光輝の壁】がロックの命を救った。
さらに、ミラが【大魔術士】で[シールド]を張り、ティナは【大聖者】でロックの傷を癒す。
「みんな…!!」
魔皇帝があまりに強力なため、1人で戦うことを選んだロック。
だが、それを許す仲間達ではなかった。
他の冒険者たちも残った魔族を殺さずに無力化するよう奮闘している。
ロックたちの勝利を信じて。
「まあ、手間が省けるだけだ。
【魔神化】!!」
「しまった…!」
魔皇帝が纏う魔法がさらに凶悪になる。
近づいただけで死んでしまうだろう。
だが、ロックたちに諦める選択肢はなかった。
ロックはティナたちに目で伝え、ティナたちはそれを理解した。
「はっ!」
剣を持つ手に力を込め、魔皇帝へと立ち向かうロック。
魔皇帝の纏う魔法に触れ、[シールド]が一瞬で壊れた。
しかし、それ相応の力を魔法から削いでいる。
残った魔法の威力を、【守護神の加護】と【光輝の壁】で1/4まで落とす。
それでもなお、ロックの命に届きうる威力がある魔皇帝の魔法。
それに耐えられることを信じて、[武技]を発動するロック。
魔皇帝も身構えている。
ロックはギリギリまでタイミングを見極め、【神速】を発動し、魔皇帝の虚をつこうとする。
魔皇帝の死角から放つ[武技]。
この一撃に全てを込めたロック。
それでも。
無情にも魔皇帝には届かなかった。
魔皇帝は自分自身の強さを悟られないため、必要最低限の動きしかしていなかった。
抑制した力で動いていたのだ。
本気の魔皇帝は全てのステータスが今のロックの2倍近い。
[武技]を躱され無防備になったロックの胸を、魔皇帝の手刀が貫いていた。
「「ろ、ロックーーー!!!!!!」」
ドラゴンとなったファルクが魔皇帝へと襲いかかる。
ティナやミラもロックへ魔法をかける。
しかし、[シールド]も回復魔法もうまく発動しない。
なぜなら、死んだ者には効果を及ぼさないからだ。
「ふん。」
魔皇帝がファルクに魔法を放つ。
死なない程度に。
「まあ待て。
1匹ずつだ。
魔王の【従属化】スキルもちゃんと引き継いでるからな。
お前らも立派な魔族にしてやるよ。」
魔族を生み出すユニークスキル【従属化】。
これだけ圧倒的な戦いで魔族にされれば記憶はほとんど失うだろう。
そしてそれを防げるものはもう、誰もいない。
回復魔法を3人に施すティナ。
3人で魔皇帝に立ち向かう。
しかし、その度に手加減された魔法で殺されかける。
ロックが死んだことが信じられず、ロックの名前を呼びながら、何度も、何度も。
【神の恩寵】がないとはいえ、何時間繰り返したとしても魔皇帝のMPは尽きない。
【魔神化】が切れても、ロックのいない今、近づけるものすらいない。
「しつこいな…。
もうこいつはとっくに死んでいる。
ほら。」
自分の腕に刺さっているロックの遺体を、ティナたちの方へ投げ飛ばす魔皇帝。
「ロック!!!」
駆け寄る3人。
もちろん、もう動かない。
ロックの手を握るティナ。
そして、覚悟を決めた顔でファルクとミラを見た。
「ロックを…お願いね。」




