第269話 集結された力
「ふうっ…。
真面目に戦わないとまずそうだな…。」
回復魔法で受けたダメージを癒しながら、体勢を整える皇帝。
「余裕かましやがって!」
ファルクが離れた間合いから[武技]を放つが、軽々と避けられる。
ロックも分裂体で取り囲もうとするが、皇帝はその素早さをフルに活かし、不利な位置にならないよう動き回る。
「くっ!
速すぎる…!」
攻撃力だけは皇帝を上回る2人だが、スピードにこうも差があれば、剣や槍を当てることができない。
一方、皇帝は隙を見ながら確実に攻撃を当ててくる。
ロックは分裂体に紛れているために、本体がダメージを負わずに済んでいるが、ファルクは攻撃を防ぐ術がなかった。
ミラの[シールド]やティナの回復魔法がなければ、とっくに死んでいる。
「ファルクさん!
一度ミラのところへ!」
ミラの【守護神の加護】の防御力は皇帝の攻撃を防ぐことができている。
ミラに触れていればその効果を享受することができる。
「チッ!」
一旦ミラの元へ移動し、息を整えるファルク。
「大丈夫!?」
「ああ…。
でも、このままじゃ、こっちが不利だぜ。」
「そうね…。」
モンスターの勢いは弱くなっているとはいえ、まだまだ大勢いる。
その中に【神の恩寵】スキルを使うものがいれば、魔王が復活する事になる。
皇帝と魔王が揃えば、ロックたちに勝ち目はない。
「やっぱりアレしかねえな。」
「そうね。」
「うん。」
3人は頷きあい、ロックを呼ぶ。
「どうしたの!?」
ロックが3人のところへやってくる。
分裂体で皇帝の相手をしているものの、非常に厳しい状況。
焦っているロックへ、ティナが打開策を告げる。
「ロック、もうあの手しかないわ。」
「…でも、そうするとみんなが危険に…!」
「どっちにしても、このままじゃやられちゃうよ!」
「ロック、俺たちを信じろ。」
沈黙する4人。
「…わかった。
その代わり、僕らからは離れてて。
近づいてあいつに狙われたら…守りきれない。」
ロックの言葉に頷く3人。
「…【スキルスナッチ】。」
その策は、ユニークスキルをロックに集めること。
ミラの【守護神の加護】、ファルクの【全能の権化】をロックに渡すのだ。
ロックの強さが上がる分、当然ミラとファルクは弱くなる。
だが、3人を信じて、その策を実行する覚悟を決めたロック。
「私のスキルも使いな。」
遠くから様子を伺っていたハンナが【神速】でやってきた。
「といっても、あんたからもらったスキルだけどね。」
「ハンナさん…。」
「【神速】があれば少なくともスピード負けすることはない。
モンスターや魔族はかなり勢いが弱くなってきてる。
【神速】がなくてもなんとかなるけど…、あいつだけは…ロックしか相手できない。」
「…ありがとうございます…!」
【スキルスナッチ】と【スキルギフト】をミラに渡し、ロックのスキルを戦うための構成へと入れ替えた。
++++++++++++
【分裂 ★★★★】
【剣神 ★★★★★】
【守護神の加護 ★★★★★】
【全能の権化 ★★★★★】
【神速 ★★★★】
++++++++++++
「みなさん…ありがとうございます。
絶対に死なないでくださいね…!」
「こんな時まで人の心配かい?」
「それはこっちのセリフよ。」
「勝ってね!」
「行ってこい!」
仲間たちに背中を押され、ロックは皇帝を真っ直ぐ見据えた。
そして、スキルを発動した。
「【全能の権化】!」




