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第268話 真の黒幕との戦い

「『あの人』というのは、俺のことかな?」



「っ!?」


いつの間にか1人の男が背後に立っていた。



「逝ったか……。」


その男は動かなくなったスライムを悲しげな目で見つめた。



「本物か…!?

 口調が違うぞ…?」


変身能力を持った敵がいたことで、真贋を疑うファルク。


「本物さ。

 もう堅苦しい話し方をするのはやめた。

 これが元々の俺だ。」


「どういうことだぁ…?

 あんたがアニキを…ギルマスを殺すように命じたのかぁぁ!?」


「…そうだ。」


「なぜだぁぁあああ!?

 あんたとアニキはバルキアを救った英雄じゃなかったのかよぉぉおお!?

 なぁ!!

 皇帝!!!」



スライムが変身した中で唯一生存が確認できた人物、それは…バルキアの皇帝だった。



「英雄さ。

 昔も今もな。」


「どうせまた偽物だろうがぁぁあ!?」


「残念ながら、本物だ。」


「ということは…、あなたが黒幕なんですね、皇帝。」


以前戦い、圧倒的な力の差を見せつけられた男と同一人物であることは間違いなかった。


その時と同等のプレッシャーを感じる。



「…そうだ。」


皇帝がロックを睨みつける。



「お前らのせいで全てが台無しだ…。

 浅はかな行動をしやがって…。

 これからこの世界がどんなことになるのか、想像できんのか。」


「それを考えた上で、あなたのやっていることは許せない。

 止めさせてもらう。」


それを聞いて皇帝は鼻で笑う。


「ふっ。

 どうやって?

 俺との力の差はお前が一番よくわかっているだろう?

 俺と直接手を合わせた唯一の人間だからな。」


「ボスモンスターを倒したことで、あなたの力も落ちたはず…。

 こっちは力をつけてきた。

 この間のようにはいかない…!」


「ふん。

 やってみろ。」


ロックは分裂体を皇帝へ差し向ける。


前回戦った時はあっさりと倒されていたロックの分裂体。


しかし、ロック自身が強くなり、さらにイシュメルたちが作ってくれた武器と防具が分裂体の強さも大きく引き上げていた。


逆に、ボスモンスター5体分の力が落ちた皇帝。


分裂体はかろうじて皇帝の一撃を耐えることができるようになっていた。


決して大きくはないが、攻撃も確実にダメージを与えられている。


もっとも、ステータスは3倍以上の差がある。


器用さや素早さに差がありすぎて、なかなか攻撃が当たらない。


それでも数の暴力で何発かは当てることができた。


しかし、魔族やモンスターが回復してすぐに傷が塞がる。


モンスターも含めれば回復魔法を使える敵は膨大で、スキルを奪って対応することは難しい。



「ふん…。

 小賢しい!」


皇帝が分裂体を倒しながら強引にファルクに接近した。


皇帝の一撃は、ミラが施していた[シールド]を破壊する。


スキルなしで[シールド]を破壊するのは異常な強さだが、【魔神化】を使う前の魔王の魔法と同等くらいの威力。


しかし、ただの攻撃がその威力なので、回転数が桁違い。



「ぐはっ…!」



[シールド]のなくなったファルクは次の一撃で吹き飛ばされる。


近くにいたティナやミラにも皇帝の攻撃の手が伸びる。


が、【守護神の加護】を打ち破ることはできなかった。



「チッ!」


皇帝はティナとミラを攻撃することを諦め、魔王を抱えて後退する。



「こいつを殺されてはたまらんからな。」


魔王に避難を命じる皇帝。


魔王はモンスターの群れの中にその身を隠した。



「じゃあ、まずはあいつからか。」


吹き飛ばしたファルクを標的に定める皇帝。


ファルクはティナの回復魔法により、すでに回復している。


ロックはファルクへの進路を分裂体で防ぐ。



「無駄だぁ!」



しかし、意に介さない皇帝。



「ぐ…おっ……。」



うめき声を上げたのは…皇帝だった。


ファルクへと一直線に進む皇帝へ、深いダメージを刻み込む一撃が直撃した。



「手応え…あり!」



分裂体に紛れた、ロック本体の[武技]による攻撃だ。


ミラのバフによりパワーアップした【剣神】の[武技]は、皇帝の攻撃力をはるかに上回っていた。


そして、皇帝が吹き飛んだ先にいたのは…、待ち構えていたファルク。



「おらぁ!!」



【全能の権化】【槍神】を持つファルクもまた、攻撃力だけであるが皇帝を凌駕していた。



「うぐぁ…!」



「よし!

 戦える!」


手も足も出なかった前回の戦いから、確実に前進していた。


「もう一発!!」


ファルクとロックが追撃しようとしたが、そこに皇帝の姿はなかった。



「ふうっ…。

 真面目に戦わないとまずそうだな…。」


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