第127話 アルカトル防衛戦13
「ミラ!?」
「…[スタン]、
[スタン]。」
「うっ!」
ミラの硬直を与える状態異常魔法がティナにかかった。
ロックには効かなかったようだ。
身動きの取れないティナに杖を振り下ろすミラ。
ガキッ!
ロックが杖を防ぐ。
次の瞬間、マンティコアが強烈な勢いでロックに噛み付き、腕の肉を噛みちぎっていった。
そのまま駆け抜けるマンティコア。
「よし、今だ!
身動き取れない状態なら、こっちのスキルを封じてる妙な能力も使えまい!」
魔族たちも弱体化の正体がスキルを使えなくする、ということに気づいたようだ。
最初の魔法を放った時、無条件にダメージをくらうかどうかでロックの本体がどれなのかも把握している。
「はっ!」
突然正気に戻るミラ。
魔族たちの予想を裏切り、魔力を上げるスキルを使い、ミラに【乗り移り】を使っていた鵺のスキルが封じられた。
「なに!?
あの状態でもスキルを封じることができるのか!」
「[ミドルヒール]!
[ハイキュア]!」
マンティコアに噛みちぎられたロックの傷と、ティナの状態異常を癒すミラ。
「[アローレイン]!」
接近してきていた魔族たちに[武技]を浴びせるティナ。
想定外の事態に、敵は捌ききれずにまともにダメージを受ける。
「くっ!
[オールヒール]!」
回復魔法を唱えるが…、発動時の淡い光が発光しない。
「…!
くそぉぉお!!
なんの能力使ってやがるんだ!!」
スキルを封じられ…、実際は奪われているのだが、激昂する魔族。
「…ぐふっ!」
怒りで視界が狭くなった隙をつき、ロックの分裂体たちが回復役だった魔族を葬る。
戦場と違い、本体が近くにいれば随時指示を送ることができるので、分裂体の動きの幅が格段に向上する。
これで3体撃破し、数の上での不利も小さくなってきた。
しかし、リーダー格の魔族には余裕すら感じる。
その魔族が、ニヤッと笑った。
「お前たちは確かに強いし、こちらのスキルを封じられるのは脅威だ。
しかし、それでも勝つのは私たちだ。
想定の範囲内で動いてくれて感謝するよ。
予定通り、貴様を連れて帰るとしよう。」
もう1人の魔族もニヤニヤしている。
「…やれ!」
リーダー格の魔族がなんらかの合図を出した。
身構えるロックたち。
…
「な、なに?
何が起きるの!?」
怯えるミラ。
「ふふ。
ロックとやら、武器を捨てるがいい。」
勝ち誇ったようにそう言い放つ魔族。
…しかし、ロックは身構えたままで、武器を捨てたりはしない。
「…え?」
よほど想定外だったのか、口をあんぐりと開ける魔族。
「もしかして、【呪怨】があなたたちの切り札だったのかしら?
さっきモンスターがロックの腕を食いちぎっていったものね。」
「ぐっ!
な、なぜ効かん!?
ステータス差があろうと、媒体があれば体の自由を奪うくらいはできるはず!?
…ぐっ!?」
突然、リーダー格の魔族の挙動がおかしくなった。
そう思った次の瞬間、もう1体の魔族へと剣で斬りつけた。
「な!?
何してるんだ!?」
残っていたモンスターへも攻撃を始める。
「まさか、【乗り移り】か!?」
斬りつけられた魔族はロックたちの方を見る。
3人とも好機とばかりに攻撃を開始している。
つまり、動いている。
【乗り移り】を使った術者は動けなくなる。
「もしや!?」
魔族が振り返ると、分裂体だと思っていたうちの1体を、他の2体が庇うように動いている。
その1体は微動だにしていない。
「お前が本体か!!」
それは、最初に魔法で切り刻まれ、突っ込んでいったロック。
あえてリスクを犯すことで、本体ではないと思わせるための作戦だった。




