間に合えっ!
「はぁ、はぁ、はぁ。ここか。」
「きゅ、急に引っ張らないでくださいよ…。」
ノーティは肩で息をしながら大きな扉を見やる。扉は固く閉ざされていた。
「時間は?」
「1分オーバーです…。本当にごめんなさい。」
「いや、もたもたしてた俺も悪かったよ。そんなに気を落とすなって。それに、君一人で来ていたら間に合っていただろう?」
「うう、面目ない。」
ノーティはすすり泣く女の子をなだめるが内心はとても焦っていた。
(女の子の前では泣けない…。けど、俺はどうなっちまうんだ……)
「ねぇ、僕らってどうなるの?」
ノーティが泣きそうになっているとふいに遠くから声が聞こえた。
「知らないわよ…もう!試験が終わったと思ってランチに行ったのに!筆記試験があるなんてきいてないわよウォカース。」
「僕もだよ…困ったな。」
足音とともにだんだんと声が近づいてくる。
「きみ、この声の主だれなのかわかる?」
ノーティは涙声でそう言った。
「君ではないです。ユリアという名前があります。」
女の子もといユリアも涙声で応じる。
「わからない。でも普通に考えて私たち以外いないはず…。」
「あ、向こうから声が聞こえるよ。行ってみようよアマーレ。」
「まってよウォカース。」
だんだん足音が大きく、早くなっていく。
「リア充ぽいな…爆発すればいいのに。」
「ノーティ?」
「いや、なんでもないよ。」
ノーティは純粋そうなユリアに汚い言葉を教えたくないと思い口をつぐんだ。
「もう少しでこっちに来るよ。どうする?戦う?」
シュッ、シュッとシャドウしながらユリアは言う。
「いやいや、そんなことしなくていいよ。ここはそんな物騒な世界じゃないし。」
「えーっ。」
ユリアはそうふてぶてしく言い、しぶしぶシャドウをやめた。それが幼い子供のようでノーティはほっこりした。
「君たち、何してるんだい?」
男が話しかけてくる。どうやらユリアを制止している間にこちらについたようだ。
「あっ、遅刻しちゃって…。」
「わぁ、僕たちと一緒だね。」
男は柔和な笑みを浮かべてそう言った。
「あの、お名前教えてもらってもいいですか?」
聞いた後ユリアが、まぁ聞こえてたんですけどね。と言ってるのがノーティには聞こえた。少し目がうつろなのが怖かった。
「ん?僕はウォカース。ウォカース=ヤマトだよ。こっちが────。」
「自己紹介ぐらい自分でさせてよ。私はアマーレ=カーロ。ウォカースは私の彼氏よ!将来は結婚するんだから!んね?ウォカース?」
「そうだね。僕には君しかいないから。」
このバカップルはそういいながらお互いに見つめあい顔を近づけあい────。
「だーー!ちょうっとまてーーーい!!!」
ノーティは耐え切れず大きな声を上げてしまった。
「「?」」
このバカップルは何が悪いのかわからないといわんばかりのきょとんとした顔でノーティをみる。だがその顔はだんだん恐怖と焦りの表情に変わっていった。アマーレなんか口をパクパクしている。
「どうしたんだよそんな顔して─?」
ノーティが後ろを見ると眼鏡をかけた女性がこめかみに青筋を浮かべて仁王立ちしていた。
「あなたたち。試験の邪魔ですよ?」
「だれか…助けて。」
先ほどからほとんど話していなかったユリアの悲痛な叫びは誰にも届かなかった。




