面接官の人大丈夫かな?
面接室の扉を開けると、1人の女性が座っていた。端正な顔立ちではあったが、顔は疲労困憊を色濃く感じさせていた。目の下には濃いクマがあり、目が死んでいる。
終いには「ちっ、なんで残業に次ぐ残業のあとにこんなこと…」と呟いている始末だった。
「面接番ご…」
ノーティがそういいかけると面接官は水を前にした猫のように、わかりやすく跳ね上がった。
ノーティがギャグアニメかなにかかな?と思っていると面接官が
「い、今の!会社には内緒しといて下さい!ね!ね!」と死んだ目を見開きながら早口で言った。
ノーティが返答に困っていると、面接官が
「き、君に内定あげるから!お願い!言わないで!」
ノーティは内心嬉しかったが、喜びと同時に疑問が湧いた。
クマ?残業に次ぐ残業?…ブラックじゃね?
「いやいやまさか、そんなことないだろ。そもそも、天界一の異世界運営カンパニーだぞ?絶対ありえな…あっ…。」
経営部だ!
ノーティはせっかくなので、経営部について聞いてみることにした。
「面接官さん!あなたは経営部所属ですか?」
面接官は
「そうよ。」
と短く答えた。
「この会社…いや経営部はどうなってるんです…。」
「zzz」
「おい!なんで寝てんだよ!よく見たら涎垂れてるし!」
幸せそうな笑みを浮かべて机に突っ伏している。流石に起こすのは忍びないと思い、ノーティはこれ以上の質問を諦めた。寝顔が可愛いと思ったのは秘密だ。
そして、「もういいや」といいながら面接室を出た。
ノーティは天界ネットでこの会社の経営部での仕打ちが酷いと知ったが、それは一部だけの話で、経営部でも定時で帰る人はいる。とも追記があったのでそれを鵜吞みにしていた。しかし、そのことについてあの女性を見て改めて疑問を抱いた。
「たくさん部署があるうちでなんで経営だけ忙しいんだろ。てか!天界一の会社なのにあんなになるくらい酷いのかよ~!」
ノーティは一人で嘆きながらとぼとぼと待合室に戻った。かなり時間がたっていたのだろう、
待合室の大きなモニターにはすでに合格者の面接番号が表示されていた。
「えっと、縦一列に24個で横にひふみよ…14個だから…359人か!思いのほか少ねぇなぁ…」
「あー!また計算ミスしてるー。369人じゃない?」
心拍数が上がる。聞き覚えのある声…
「その声はマーティロか。」
やべぇ。やっぱし彼女いない歴=年齢の俺に女の子とのコミュニケーションはつらいな。
「ピンポーン!せぇーかーい!ノーティは合格したみたいだね。おめでとー!」
「あ、ありがとう、マーティロはどうだった?」
「ボク?ボクも合格だったよ!面接官さんと仲良くなっちゃった〜。」
「わぁお、前世は陽キャだったでしょ?」
「陽キャなにそれ?うーん、まぁよくわかんないけどなんかそんな感じがしなくもないなぁ。」
にへへ、とまんざらでもない笑みを浮かべるマーティロ。
「カテゴリーにすら頓着しないなんて…これが真の陽キャか…。」
そんな他愛のない会話をしていると横から
「ちょっといい?」
と声をかけられた。
「さっきの計算間違ってたわよ。」
またそのツッコミかよ。