クエスト7-4 ようやく訪れた至福のひと時
俺達が宿泊する温泉宿、月蛍亭。
その温泉掃除……というよりベタリキの毒液の除去を手伝う事にした俺達。
「さあ、やるぞー!」
「ああ」
「へーい」
汚れてもいい服装に着替え、口を覆うように布を巻き、掃除用具と毒消しを片手に温泉の入り口でリズが号令をかける。
彼女とタンデは長い髪を縛って纏めており、服装や口に巻いた布も相俟って様変わりした印象を受ける。特にリズ。
浴場はというと、相変わらず毒液で汚れており、前は垂れ流されていた毒液が垂れ流されていないくらいしか変化箇所が見当たらない。
「これらの毒をこの桶に移してください。処分は我々が行います。何かあったら呼んでください」
月蛍亭の従業員はそう言って大きな桶を複数用意し、見本を見せるかのようにショベル(大きい方)で毒をこそぎ落とし、すくい取る。
俺達も手にしたショベル(大きい方)を使って撤去しようとする……が、こびりついてうまく取れない。
「結構こびりついてるな」
「ここはぼくの出番だね! 水よ……フラッド!」
リズは毒液に魔法をぶつけ、毒液をふやかす。
「おっ、いけた」
水を含んだせいか少し重くなったものの、今度はあっさりとすくって取ることができた。
「おぉ……」
「よし、この調子でどんどんやろう」
「このくらいなら楽勝だな」
タンデの言葉通り、あっという間に桶は毒液で一杯になった。
これもまた、チャナ村での修行の成果だろうな。
とはいっても、修行してから随分経っているが。
「じゃあ、こいつを頼むぜ」
「かしこまりました。おーいグンジョウ! 運ぶぞー!」
「はーい! 今行きまーす!」
撤去作業中の人とは別の従業員が2人がかりで桶を持ち、そのまま浴場を出る。
「大丈夫かあいつら?」
「大丈夫だろう。こっちはこっちのやるべき事をやるぞ」
「あいよ」
その後も黙々とショベルを動かし、作業を続ける。
「そういえばさ」
ふとリズが詠唱以外で声を発する。
「ん?」
「ピスさんはどうしたの?」
「ピスは買い出しに行ってるぞ。もう少ししたら戻ってくるんじゃないか?」
「買い出し? 何の?」
首をかしげるリズに、俺は作業を行いながら答える。
「全員分の昼飯だ。宿屋の主人にも何か必要な備品があればピスに頼むように言ってある。ボックスで山ほど荷物積める事を考えると、ピスが適任だろう」
「皆様ー! お昼ご飯の時間なのデス!」
ピスの言葉に、従業員の人達とタンデが待ってましたとばかりの反応を見せる。
「それじゃ、休憩すっか。冒険者の皆さんも、お昼ご飯にしましょう」
「よっしゃぁ! 昼飯だ!」
「はーい」
「キリのいいところまでやるので、先に行っててくださーい!」
従業員の人の呼びかけに俺はそう答え、作業を続ける。
「分かりました!」
「さっさと来いよー! じゃないとお前の分も食っちまうぞ?」
「お前それやったら許さねぇからな?」
「へいへい」
「じゃあシンヤ、先行ってるね」
「さてと……」
皆が行ったのを確認すると、しゃがんで片膝をつき、風の大精霊の指輪をはめた手で左足首を掴む。
キリのいいところまで、というのはぶっちゃけ建前で、実際のところは精霊剣である実験を行うためだ。
目を閉じて意識を集中し、イメージを練り上げる。
思い浮かべるのはいつものファルコンソードではなく、ブーツ。ゲームのスピードアップアイテムとかでありそうな、翼のついたデザインのブーツだ。
リズは風の大精霊の指輪を駆使して、杖を生み出した。
であれば、俺もファルコンソードとは違うものを生み出せるのではないかと考えたのだ。
名前は……
「スピードブーツ!」
3Dプリンターでガワを作り上げるかのようにブーツの立体図を頭の中で構築、その思念を指輪へと送り込む。
目を開けてみると、左足は今履いてるブーツではなく、半透明な羽飾りのついた深緑色のブーツへと変化していた。
「ほう、気付いたか勇者よ」
唐突に風の大精霊フォリウムの声がブーツから聞こえた。
「新たな名前があれば、我が剣は新たな姿を得る。火の奴を手に入れれば教えてやろうと思ったが、それよりも早く見つけるとは、中々やるな」
「仲間のおかげだ」
「何だつまらんな」
なんで?
「まあいい。火の奴を手に入れたあかつきにはそいつの応用を教えてやる。ではさらばだ」
フォリウムはその言葉を最後に喋らなくなった。
俺はブーツを元に戻すと、昼食を取りに向かう。
……………………
………………
昼飯を食ってからも、作業は続く。
従業員曰く、この毒液を何とかしないと次に進めないのだそうだ。
まあ、臭いとかも取り除こうにも大元をどかさないと意味が無いし。
リズが毒液に魔法で水をかけて回り、それを俺とタンデ、それから従業員の方々で桶に集め、それを別の従業員が持っていく。
「あー畜生、全然終わんねー!」
「やらなきゃ終わらねぇぞ!」
「んなこたぁ分かってらぁ!」
「がんばれー♡」
と、こんな感じで時折文句を垂れるタンデに対して野次を飛ばしたり、リズが茶化したりしつつも手を動かす。
こまめな休憩と毒消しの服用を挟みつつも作業を続け、日が完全に暮れる前には浴槽に溜まった毒液を全て取り除く事に成功した。
「ふぃー……やーっと終わったぁ……」
タンデはショベルを放り出し、地面に座る。
俺もショベルを置き、服で汗を拭く。
「いやはや、これほどまでに早く終わるとは……ありがとうございます」
従業員の1人が、俺たちに声をかけ、頭を下げる。
他の従業員も、同じように頭を下げた。
「いえいえ、皆さんの協力のおかげです」
「そうそう、世の中助け合い……ごめん水と何か甘いものちょうだい」
「はい、すぐ持ってきます!」
何度も魔法を使ったためか、リズもヘトヘトだ。
かく言う俺も汗だくで、鍛錬とはまた違うタイプの疲労が重くのしかかる。
「んで……これで終わりか?」
「実は、その……こちらは男湯でございまして……できれば女湯の方も……」
「うっへ、まだあんのかよ……」
タンデは地面に倒れ込んだ。
「ともあれ、今日の作業はこれでおしまいです。皆様お疲れ様でした。後片付けは我々がやっておきますので、ゆっくりお休みください」
「では、お言葉に甘えて……じゃ、戻るか」
「はーい。明日も頑張ろうね」
「かったりぃ……」
「店の人の前でそういうこと言わないのー」
「やめろ! 耳触るんじゃねぇ!」
「邪魔になるからさっさと出るぞほら!」
騒ぎ出すリズとタンデを追い立てるようにして浴場を後にし、脱衣所で服を着替える。
その後は冒険者ギルドの酒場で夕食を済ませ、再び月蛍亭に戻って就寝する。
夕食にわざわざギルドを使ったのは、達成した依頼の報告と夕食を同時に済ませる今までのルーチンワークに沿った流れだ。
……………………
………………
次の日は、昨日と同じく浴槽に溜まった毒の除去作業を行った。様子は昨日と概ね同じなので特に言うことはない。
「こ、今度こそ終わった……」
夕焼けを背に、タンデが地面に座り込む。
「本当にありがとうございました。これなら、あと1日で元通りにできるでしょう」
「他に出来ることはありませんか?」
「後は細かいところの掃除くらいですが……ここまでしていただければ充分です」
「だったらもういいんじゃねぇか? オレはもうやらんぞ」
タンデはそう言ってあぐらをかき、頬杖をつく。
「ああ、構わない。無理を言って悪かったな」
「じゃあ最初からやらせるなよ……」
「力のある奴がいると思ったし実際そうだったろ……晩飯奢るからそうカッカすんなよ……」
「ったく、しゃーねぇなぁ」
タンデの尻尾が急にピンと立つ。
猫のこの状態は確か機嫌がいい時ってどっかで見たな。
顔はやれやれって感じだが、尻尾を取り繕う技能をタンデは持ち合わせていないらしい。
「さて、陽も落ちる頃です。今晩と明日は、ゆっくり身体をお休めください」
「ぼくはやめるって言ってないですけど?」
「は?」
リズの回答に、タンデが素っ頓狂な声を上げる。
「お前おっさんの話聞いてたのか?」
「ぼくは言ったよ、ただ待ってるのは嫌だって。サイッコーの温泉を提供してくれる為なら何でもするって!」
「じゃあ寝てろよ。何でもするんだろ?」
「そういうことじゃないのー!」
口論する2人……厳密にはリズに対し、月蛍亭の主人は歩み寄る。
「あのー……お気持ちは嬉しいのですが、これからの作業は我々だけで充分です」
「でもでも、何か少しくらい……」
その会話を聞いて、俺はふとある可能性を思いつく。
「もしかして、店の者以外に知られるとあまりよろしくない作業だったりします?」
「そういうことでございます。手伝ってくれた貴方達の事を信じないわけではないのですが、我々も商売です。工夫を知られる訳には……」
「分かりました。リズ、聞いての通りだ。これ以上は却って店に迷惑がかかる」
「そういうことなら、仕方ないか……温泉、楽しみにしてますね!」
「はい、必ずやご期待通り……いえ、それ以上の体験をお届けします」
月蛍亭の人々に見送られ、その日はギルドで夕食を取り、宿に戻って寝た。
……………………
………………
そして2日後。
火の大精霊に対する情報を集めたところ、どうやらオニガミネの近くにある巨大な火山、エンキ山の頂上にあるとの事。
山登りということでいくらか道具を買い足し、ルートの確認をしつつ、討伐系の依頼をこなしていた。
「プッシュ・ウィンド!」
踏み込む瞬間にスピードブーツの靴底からプッシュ・ウィンドを発動し、一気に距離を詰める。
すぐさまスピードブーツを送還し、すれ違いざまに相対する巨大な鬼の仮面の魔物、ジャメンキを斬り伏せる。
攻撃した瞬間に手に来る衝撃は凄まじいが、普通に斬るだけでは傷のつかないジャメンキをいともたやすく粉砕できる威力を見せた。
プッシュ・ウィンドによる突貫は前にも何度かやったが、剣よりもブーツの方がやりやすいし、手も塞がない。
咄嗟の反撃とかなら話は変わってくるかもしれないが。
「シンヤ、何だ今の?」
「風の精霊剣の応用だ。ブーツへと形を変えて、靴底から突風を出して加速する……といった具合にな。リズが杖に変えているのを見て思いついたんだ」
「えっ、ぼく?」
「ああ。きっかけをくれた事、感謝する」
「そんなことより温泉入りたい……」
「温泉開くのは夕方からだって朝宿屋の主人が言ってたろ」
「分かってるけど……よーし、こうなったらひたすら魔物をボコボコにしよう! 働いた後のご飯が美味しいように、働いた後の温泉も格別だからね!」
「スピードブーツの慣らしもしたいところだし、ちょうどいい」
「ようし、誰が1番多くぶっ飛ばしたか競争だ!」
そうして俺達は、日が暮れるまでひたすら魔物を倒して回った。
そして夕方。
「おんせーん!」
「お帰りなさいませ、旅のお方にして、我らの救世主よ」
道場破りでも始めそうな勢いで月蛍亭に入ったリズと後に続く俺達を、月蛍亭の人々が総出で迎える。
「あ、どうも……」
「た、ただいま戻りました……」
「た……」
「デス……」
お殿様か何かと錯覚するような丁寧な出迎えに、俺を含めた全員が驚きで硬直してしまう。
こういう時どんな対応すればいいんですか……?
「大変お待たせいたしました。当宿自慢の温泉、完全復活でございます。ささ、どうぞ」
「やったー!」
リズの声で現実へと戻り、案内に従って温泉の浴室へ。
「じゃ、また後でねー」
リズはそう言って俺達と別れる。
彼女の言葉の真意を知るのは、もう少し後だった。
脱衣所で服を脱ぎ、扉を開けたその先。
「おお……」
待っていたのは、旅番組で見るような温泉そのもの。
浴槽には透き通る湯、木々の隙間から差し込む夕日と灯りが何とも言えない情緒を生み出している。
「何だこれ? 空気があったけぇ! この水から出てるのか? あっつ!」
「身体洗ってから湯船に浸かれよ?」
「がってんデス!」
そのまま湯船にダイブしようとしたタンデと人間態で浴槽を覗くピスを促し、身体を洗う。
シャンプーやらボディソープやらは流石に置いておらず、あるのは日本でお馴染みの硬い石鹸だけだ。
チャナ村の生活では、香草を混ぜた軟石鹸を洗濯に使ってたからそれかと思っていたが、どうやら違うらしい。
まあ村での風呂は行水程度だったし……
「……」
身体を洗う最中、ふと自分の身体を見つめる。
思えば、随分筋肉質に、そして傷だらけになったものだ。
日本にいた頃は、こんなに鍛えるなんて考えられなかったな。
身体を洗いながら、ふと物思いに耽る。
日本での生活は、どこか空虚だった。
来る日も来る日も相澤を打ち負かす事に執念を燃やし、努力し、負けて、負けて、負け続けた。
何をやっても、1番になれなかった。
文武両道、才色兼備、誰もが認める神童。それが相澤きららという存在だった。
勝てない勝負は基本的につまらない。そんな勝負を続ける人生が面白いかと言われれば、そんな事はない。
だが、俺は勝負から逃げなかった。
いや……逃げられなかった、と言うのが正しいか。
奴との勝負から逃げたら、自分にとって大事な何かを失う……あるいは、自分は何者にもなれない。そんな気がした。それがずっと怖かった。
まあ、仮に逃げたとして、俺に執着し続けた相澤がそれを許すとは思えないが。
心の空虚は、松山と黒田が埋めてくれた。あの2人がキッカケで所謂オタク文化にハマって、世界が広がった。
でも、その時でさえ、空虚は全ては埋まらなかった。ふと意識すると、その空虚は気になってどうしようもなくなるのだ。
だけど、この世界に来てからはその空虚は不思議とどこかへ行ってしまった。
勇者という存在になるための道筋ができたからか、それとも吹っ切れたか……
いや、違うな。
アイツが、相澤がいないからだ。
アイツさえ、アイツさえいなければ……
「イヤッホーイ!」
そんな俺の物思いは、タンデの声と湯船に飛び込む音によって砕け散った。
「飛び込むな!」
「細かいこと気にすんなよ、今はオレ達しかいないだろ?」
「そういう事じゃねーよ!」
こんな事なら最初に注意しておくべきだったか……
「極楽なのデス……」
「あっ……おお、おおお! おー……すげぇ! よくわかんねーけどすげぇ! シンヤも来いよ!」
「ああ、分かってる」
身体を洗い流し、ゆっくりと浴槽に入る。
「あぁー……いい湯だ……」
たいへん気持ちがいい。身体の芯まで温まっていくのを感じる。
……それはそうと、思わず出た声がちょっとおっさん臭かったな、我ながら。
それにしても、温泉に入ったのはいつぶりだろうか。この世界に来てからはこれが初めてだし、日本では確か……あれ? いつだっけ?
「おっまたせ〜♡」
宙を睨んでいると、いつの間にかバスタオルを巻いたリズが……
いや待て、何でここにリズがいるんだ。
「は?」
「おいリズ、ここは男湯だぞ?」
「女湯は隣デスよ。案内が必要デスか?」
「んーん、ここで合ってるよ。だってぼくは……」
そう言ってリズはバスタオルを取る。
「男、なんだもん♡」
「……は?」
「えっ……」
「……な」
明かされた衝撃の事実に、俺達は硬直する。
「何ぃぃぃ!?」
「はぁぁぁぁ!?」
「えええええええええええ!?」
直後、絶叫が響く。
「あっはははは! これこれ! この顔が見たかったんだよねー。やっぱりこの瞬間の驚く顔を見るのは楽しいな〜」
そんな俺達を見て、リズはけらけらと笑う。
そんなリズの身体は男にしては非常に細く白く、そして華奢であったが、よく見ると手や足、腰、肩幅など、女性にしてはがっちりした身体のシルエットをしている。
そして何より、下腹部にあるのは男性器。リズが男である何よりもの証拠だった。
これが噂の男の娘ってやつなのか。かつて黒田にその魅力を熱く語られたがその4分の1も理解できなかったアレなのか。
そんでもって初対面の時に同年代の異性に対して反射的に抱く苛立ちが無かったのは、こいつが男だったから……?
なんだろう、驚きはあるけど理解するとストンと腑に落ちる何かがある。
「はぁぁ……気持ちいい……やっぱ温泉ってサイッコー……」
混乱する俺達をよそに、温泉を満喫するリズ。
脳の認識とは恐ろしいもので、今まで少女だと思っていたしそう見えていたリズが、今この瞬間はどう見ても少年の顔にしか見えない。
「女……? チ○コのついた……?」
「タンデ! アイツは男だ! 女の格好した男だ!」
「魔法使いとは皆かくあるのデスか……?」
「いや、そんなわけ……」
「いるよ。リリエール魔法学校にはね。ぼくもそこの卒業生なんだ」
「マジで……?」
「それは何故デス?」
リズは再び話し始める。
「リリエール魔法学校っていう貴族の子供に魔法を教える場所があるんだけど、そこの2代目理事長が森人社会原……いや、魔法は女性のものだー、って感じの考えを持つ人だったんだ」
「どういうことだ?」
「女の人は男の人より魔法が使いやすい人体構造をしている、ってよく言われてるんだ。だから、女の人だけが優れた魔法使いになれる……っていう思想が、森の民には昔からあるの」
地球における昔の時代は男が完全に社会を握っていたが……考え方としてはそれの逆、といった感じか?
「それで、男に魔法を教える価値無し……って感じで、本来共学だった学校を女子校にしちゃったんだ」
「通わせてる貴族は反対しなかったのか?」
「したよ。でも、魔法を得意とする貴族達は結構その考えを持ってたから、賛成派が多かったんだ。まあ、色々あって2代目は失脚、今は3代目で、一応共学に戻ったけど、その思想はまだ残ってて……」
「まさか、女装を条件に男子の入学を許可したのか?」
「そうだよ〜」
そんな無茶苦茶な話があるのか……
「女装は嫌ではなかったのデスか?」
「最初は抵抗あったけど、慣れていくとむしろ楽しいよ。今じゃこっちじゃなきゃ落ち着かないもん。皆もやる?」
「いや、それは遠慮する……」
……………………
………………
温泉を堪能した後は、豪勢な料理に舌鼓を打つ。
思考回路がショートした様子を見せたタンデだったが、料理を見た瞬間そっちに思考が切り替わったのか、食事にありついていた。
「う……うめぇ……!」
「急いで食べると喉に詰まるよ?」
「さっきまでうわ言みたいにリズは男って繰り返してた奴とは思えないな」
「あ? 結局リズはリズだろ?」
「そうだな。俺も最初は驚いたが、それでどうこう言ったりする必要も無いしな」
ていうかその手の奴は2次元とはいえ日本で山ほど見たし……
「リズ様がどんな方でも、大事な仲間である事に変わりはないのデス! そうデスよね、シンヤ様!」
「ああ、その通りだ」
「そこまで言われると、ちょっと恥ずかしいな……でも、ありがとう」
少々しおらしい様子で、リズはそう言った。
「別に礼を言われる程のことでもねぇよ」
「そうだぜ。そんなもんより肉くれよって感じだ」
「そういう意味で言ったんじゃねぇよ……」
「いいよ〜」
「よっしゃあ!」
……………………
………………
夜。
充実のサービスを受け、満足げに眠るタンデ達。
俺はなんとなく寝付けなかったので、少し星を眺めている。
「あっ」
満点の星空の中、キラリと瞬く流れ星。
何かいい事でもあればいいが……




