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リィンカーネーションクエスト  作者: シュガーロック
クエスト7 炎の巨神(集の大陸・ミザン島編)
88/106

クエスト7-3 共同戦線と延長戦

 




 ニルスとキャロさんと手を組んでベタリキの繁殖個体を倒すことになった俺達。



 森を抜け、岩場の坂道を歩き、オニガミネ近辺で1番大きい源泉へ、ピスを先頭にして向かう。





「作戦は?」

「俺がマジックミサイルでコアを貫いて仕留める。時間稼ぎを頼むぜ」

「できるのか?」

「フッ、この俺マジックミサイルの伝道師、ニルス・バンカードをナメてもらっては困るぜ」

「ちょっと待ってよ。魔法使いならここにだっているんだからね!」

「張り合うのはいいが喧嘩はしないでくれよ頼むから」



 などと言っていると、前方にベタリキらしき影が見えてきた。


 ここから見えるって結構な大きさだな、と思った次の瞬間。





「皆様! 攻撃が来ますデス!」



 合計で8つの毒液の塊が、ミサイルのように高速で襲いかかる。





「どうしよ……うわっ!?」



 蜘蛛の子を散らすようにして一斉に回避し、出遅れたリズをタンデが抱えてその場を離れる。



 ベタリキとの距離を詰めると、突如空中に成人男性の半分くらいのサイズの水球が現れる。



「チャーオー! からっぽ勇者と愉快な……あれ〜? メンツが違うぞ〜?」



 それは膨らんで弾け、中から下半身の無い仮面の道化師が現れた。

 こいつは……!



「お前は、あの時の……!」


 俺は弓を構え、臨戦態勢を取る。



「おいシンヤ! なんだコイツ! よくわかんねーけど明らかにヤバいぞ!」

「あれは……魔王軍の四天王、水の奇術師マジクス……シンヤ、お前とんでもねぇ奴に目を付けられてるな?」



 タンデが俺の名を呼び、ニルスが目の前の道化師の名を述べる。




「へぇ、知ってるんだ。クヒヒッ」

「ベタリキを大量に放ったのはお前か!」

「やーだなー、ボクじゃないですー、部下が勝手にやりましたー……なーんてね、指示を出したのはボクだよーん」


 こちらをおちょくるように指を動かし、こちらを挑発するような態度でマジクスは答えた。




「てめぇ……!」

「おーっと、そんな態度取っていいのかな? 折角いなくなった仲間の居場所を教えてあげようと思ったのに」

「何だと……!?」

「嘘ー!! わざわざ言うわけないじゃん! バーッカじゃないのー!? クヒヒヒヒ!!」



 マジクスは馬鹿にしたように、空中で笑い転げる。



「ふざけやがって……! 2度と」

「あ、ボク門限厳しいので帰りまーす。なーんちて! 君達はベタリキと泥試合するのがお似合いだよ、からっぽ勇者クン! クヒッ、クヒヒ、クヒヒヒヒ…………」





 矢を放とうとした瞬間、マジクスはそう言って溶けるようにして姿を消した。


 それと同時に、巨大なベタリキがこちらに向けて唸り声を上げる。



 額にあたる部分に2本の角が生えた、前に源泉で見たものより4倍は大きいベタリキ。




 動物の唸り声を水中から聴いたような声の直後、ベタリキの口は閉じ、身体は白く硬化する。





「攻撃が来るぞ! 左右に避けろ!」




 ニルスが叫んだ数秒後、ベタリキの口から黒い液体がレーザービームのように放たれる。



 あからさまな予備動作があったので回避自体は簡単だったが、その威力は後方にあった岩石を貫き、ポッカリと穴を開けてしまうほど高い代物であった。

 まともに受ければ、人間の身体なぞ消し飛ぶだろう。





「俺は詠唱に入る。一撃で仕留めようと思えばそれなりに時間をかけてやらなきゃいけねぇ。護衛は頼むぜ」

「待って! ぼくだって魔法使いだ、攻撃に回るよ! 1人より2人の方がいいでしょ?」

「いや、攻撃役は俺が引き受ける。お前は補助に回れ」

「何で?」

「俺はマジックミサイルの伝道師、悪いがマジックミサイル以外の魔法は無理だ。青髪、お前は水の魔法使いだな?」

「そうだけど……」

「だったら奴の毒ぐらい、簡単に洗い落とせるだろう?」

「……しょーがないなー、補助は本職じゃないからずぶ濡れになっても文句言わないでね?」





 背後にいるニルスとリズの会話に耳を傾けつつ、ベタリキを注視する。

 ベタリキは再び硬化した瞬間を狙って、キャロさんが一気に距離を詰め、





「レインスタブ!」





 目にも留まらぬ速さで槍を振るい、連続攻撃を浴びせる。



 ベタリキの身体に、大量の突き痕とヒビが出来上がった。




「さあ、打撃で一気に崩しちゃって!」

「はい!」「おう!」



 俺はハンマーで、タンデは蹴りでベタリキに打撃を与えると、その箇所から一気に崩れてクレーターが出来上がった。



 とはいえ、元の体積が大きすぎて物理攻撃のみで削りきるのは至難の業だ。




「硬化が解けたわよ!」







 キャロさんの一言でベタリキから離れると、奴は俺に狙いを定めて巨大な毒液の塊を吐き出す。




 それを利用して仲間のいない方へと走ると、俺の方へと飛んできたそれはゆっくりと放物線を描いて飛ぶ。






 弾速のおかげで余裕をもって回避し、ベタリキに目を向けるが、着弾の音が聞こえない。



 不思議に思って振り向いた瞬間、



「っ!?」





 それは爆弾のように激しく破裂し、周囲に毒液をまき散らした。




 爆弾が盾を持つ左手側に来るように陣取ったおかげでいくらかは被害を抑えたものの、身体の左側面を中心に思いっきり毒液を浴びてしまった。




「シンヤ! 大丈夫か!?」

「見ての通りだ……!」



 左の足、脇腹、肩、そして右の頬に襲い来る、肌を焼くような痛み。

 それに加えてドロドロの気持ち悪い感触、ヘドロに似た悪臭。たまったものではない。




「くそっ……」

「シンヤ! 水よ、フラッド!」




 昨日のように水球を浴びせられ、強引に毒液を洗い流される。びしょ濡れになったのは言うまでもない。


 毒よりはマシなのだが、もうちょっと手心というか……いやまあ戦闘中じゃ難しいのは分かるけども。




「次来るぞ!」

「もういっちょ! レインスタブ!」




 先行するキャロさんに合わせ、再び硬化したベタリキを叩いて削る。



 今の攻撃で一回り小さくなった……か?




「攻撃が来るわ!」


 キャロさんの声の後、ベタリキは大きく口を開ける。


 あの構えは……さっきぶちかましたレーザーみたいな奴か!





 ベタリキは1番右端にいる俺よりさらに右を向き、そこに向かって高水圧の毒液を発射する。



「へっ、あいつどこ撃ってんだ?」



 見当違いの方向に撃ったベタリキを笑うタンデだが、ふと俺の脳裏に日本でやった何かのゲームがフラッシュバックする。


 それは、炎を吐いたまま首を振って広範囲を焼き尽くすドラゴン。




 ベタリキの狙いは、おそらく……!



「あいつ、あれで薙ぎ払う気だ! 皆伏せろ!」

「えっ、ふ、フラッド・ウォール!」



 キャロさんは跳躍し、俺とタンデは伏せて回避し、リズは咄嗟に水の壁を作り出して自身とニルスを防ぐ。



 高水圧の毒液は水の壁を切断することなく、噴水のように下から上へ吹き上げる水の壁に当たって舞い上がる。




「うわーっ!」



 毒液はリズの生み出した水と混ざって雨のように降り注ぎ、彼女は傘を忘れた人のように手で頭を守る。





「ニルス! あとどれくらい!?」

「今詠唱が終わった! 今からぶっ放すぜっ!」

「師匠! 狙いどころは顔の中心デス!」

「任せろ!」



 左手を銃のようにし、右手で左手首を支えるニルスの身体は、白い光を纏う。





「貫け! マジックミサイル!!」



 白い光は一瞬のうちにニルスの左手人差し指に集約され、圧縮されるように縮む。

 直後、それはニルスの指を離れ、銃弾のように一直線に飛ぶ。


 細く速く、そして鋭いその光は、ベタリキの中心を一瞬のうちに貫いた。




 ベタリキは断末魔を上げながら少しずつ崩れ、黒い汚水と化す。

 源泉のキャパシティを超えた汚水は、源泉から湧き出すお湯と混ざり、濁流となって襲い来る。



 まずいな、このままだとまた……この状況をなんとかするには……




「ファルコンソード!」




 皆の前に立ってファルコンソードを出し、頭の中でイメージを練る。




 要は汚水を吹っ飛ばせばこちらに被害は来ない。

 プッシュ・ウィンドでは範囲が狭いから、ここはバショウセンを使う。




 ファルコンソードを扇に、それこそネーミング元である西遊記の芭蕉扇だと思い込む。



 そしてそれを一気に振り抜き、突風を巻き起こす!




「バショウセン!」





 ファルコンソードから放たれた突風は、濁流を押し返し、反対方向へと向かわせる。



 突風の反動で思いっきりノックバックしたが、幸運にもそれが押し切れず雨となって降り注いだ汚水を回避する動きとなった。







「ふぅ……大丈夫か、皆」




 振り返ると、ニルスは仰向けに倒れ、リズは疲労困憊といった様子で地面にうずくまっていた。




「悪いなシンヤ……俺はマジックミサイルで魔力を全部使い切っちまって動けねぇ……助かったぜ」

「もうやら……そっきょうれまほうなんかつくらない……つかえあ……」



 ニルスもリズも、魔力の使いすぎで動けないようだ。

 タンデとキャロさんとピスはピンピンしている。



「見透す眼よ! バイタルサーチ! ……ふむふむ、近くに魔物の反応は無いデスね」

「それじゃ、ちゃっちゃと帰りましょうか」

「ええ」



 毒消しを服用し、近場の川で服や肌を洗い、乾かしてから魔核を回収し、キャロさんがニルスを、タンデがリズを抱えて源泉を離れる。



 途中、小型のベタリキと何度か遭遇したが、それらは余った魔導板を駆使して倒した。






 ……………………






 ………………






 オニガミネの町に戻ってくると、ギルドで報酬を貰い、それを山分けする。

 ベタリキの繁殖個体を倒したおかげで、かなりの額のお金が入った。

 最も、現状この町では物資補給くらいしか使い道が無いのだが……



 その後はニルス達とは別れ、ダウンしたリズを宿屋で寝かせ、俺自身も色々と疲れたので早めに休んだ。毒液を浴びた箇所もまだ痛いし、火傷の痕みたいになってるし。


















 3日後、ギルドの酒場。

 俺とリズは2日ほど療養に費やしたため、冒険者として活動できるようになったのはこの日からだ。






 ニルス達と手を組んだあの日からベタリキの発生は止み、営業再開の目処が立った温泉施設も多い。俺達が泊まっている月蛍亭もそうだ。

 それを嬉しがる冒険者もいれば、緊急依頼によって稼ぐことができなくなって文句を垂れてる冒険者もいる。

 まあ大半は前者だ。ギルドが大盤振る舞いをしたのは報酬で経済を回そうとしたからだろうか?



 月蛍亭の主人にベタリキ討伐の件を話したら、それはもう泣いて喜び、何度も頭を下げた。

 従業員が路頭に迷わなくて済む、家族も養えると涙ながらに語っていた辺り、相当切羽詰まった状況だったらしい。

 それだけ喜んでもらえると、こちらとしても達成感がある。








「あーあ、まだかなー温泉」



 まあそれは一旦さておき、疲労も毒もすっかり抜けたリズが暇そうに呟く。




「そんな事言ったって仕方ないだろ」

「分かってるけどさぁ、そういうことじゃないんだよう」



 ベタリキを倒したとは言っても、それですぐさま温泉宿が再開できるかというと、そんな事はない。


 結局のところそれ以上汚れなくなっただけで、それまでの汚れは処理できていないのだ。元凶を絶っても被害は帳消しにはならない。





「営業再開までは少なくとも4日はかかる、と宿屋の主人はおっしゃっていたのデス」




 月蛍亭の主人は、従業員の総力を挙げて(討伐完了した日から数えて)1週間で温泉を元通りにし、その一番風呂を俺達に貸し切りで提供してくれる、と約束してくれた。

 無理はしなくていいと言ったのだが、向こうは聞く耳を持たない。



 リズは大喜びだが、俺としては何だか複雑な気分だ。

 無茶はしないでほしいものだが……




「4日かぁー」

「むしろあと4日は滅茶苦茶早いと思うがな。1ヶ月以上とか言われても普通に納得できるぞ」

「だーから、そういうことじゃないのー!」



 リズはそう言ってふくれっ面をする。




「何でもいいけどよ、どうすんだこれから?」

「あ」

「ん?」





 突如リズが思い立ったようにすっくと立ち上がる。




「そうだ。待つんじゃなくて、手伝えばいいじゃん」

「何を?」

「温泉の掃除! 宿の人は助かる! ぼく達は温泉に入れる! 皆得する最強の案だね、うんうん」



 リズは腕を組み、うんうんと首を縦に振る。



「何でそんなめんどくせー事しなきゃなんねーんだよ」

「そりゃ勿論、温泉!」



 だろうな。



「お前下心丸出しじゃねーか!」

「善なる行動に心の善悪は関係無いんだよー?」

「そもそもオレ達はそういう事する為に旅してるんじゃねーんだぞ!」

「息抜きは大事だよ? それに、人助けも大事な仕事だしね」



 とはいえ、こんな大変な中でもわざわざ泊めてくれた恩もあるし、何かしらの形で報いたいのは確かだ。

 リズの本心はさておき、案自体は悪くない。店側が許可を出さないと廃案となるが、まあそこは仕方ないだろう。

 断られても差し入れを持っていくくらいなら……いけるか?



 俺は腕を組み、思考を巡らす。




 もし手伝いをするであれば、必要な物資を予め調達しておきたい。口を覆う布と、毒消しは必要だ。ブラシとかは……店の物を借りるか。

 魔法を行使するならマナシロップも買っておいた方がいいか? これは後でリズに聞くとしよう。





「おいシンヤ! こいつの言う事なんか聞かずに依頼やろうぜ! 精霊剣ってやつ探すんだろ!?」

「違うよね? 温泉の掃除手伝うよね? 人助けは大事だよね?」





 ……何かさっきからやいやい言ってると思ってたらそれか。




「俺は温泉の掃除を手伝う方針でいる」

「さっすがー! シンヤは話が分かるぅー!」

「はぁ!? お前本気か!? なんとか剣ってやつ探すんじゃねーのかよ!?」

「タンデ様、精霊剣デス、精霊剣」



 どっかで聞いたような言葉を述べつつ喜ぶリズと、俺に摑みかかるタンデ、そして訂正するピス。





「別に精霊剣の情報なら月蛍亭でも聞くことはできる。それに、あの宿はあんな状況でも俺達を泊めてくれたし、それに報いたいんだ」

「そうそう、シンヤはいいこと言うねー」

「そうだ、ピスはどうなんだよ!?」

「ボクはシンヤ様の意向に従うまでデス!」

「うぐぐ……」




 ピスに助けを求めるも、あっさり拒否されるタンデ。




「単純作業が嫌いなのは分かるが、今回は諦めろ」

「あーもう分かったよ! やってやるよ!」



 ヤケになったタンデがそう言うと、俺達は酒場を出た。





 ……………………






 ………………




 宿屋。月蛍亭にて。





「えっ、清掃のお手伝いですって!?」


 俺の提案に、月蛍亭の主人は目を丸くする。


「はい、泊まるところが無く困っていたところを助けていただいたお礼です。それに、我々は冒険者です。腕っ節には自信がありますし、彼女は水の魔法使いです。必ず役に立つはずです」



 俺の隣で、リズはうんうんと頷いて肯定の意を示す。



「我々はベタリキの討伐という形でこれ以上ないほどお礼を返していただいております。そのお気持ちだけで充分です」

「そうですか……では、せ「待ってください!」



 せめて差し入れだけでも、と言おうとした瞬間、ものすごい勢いでリズが割って入る。





「別にお金が欲しいとかそういう事じゃないんです。ずっと楽しみにしていた温泉を前に、ただ待っているのが嫌なんです」

「で、ですが……我々が提供できるお礼は温泉だけです。報酬らしい報酬は、とても……」

「それでいいんですよ! サイッコーの温泉を満喫できる環境を用意してくれる! それだけでいいんです! その為なら何だってしますよ! ですから……手伝わせてください!」




 頭を下げ、上目遣いまで駆使して、リズは頼み込む。

 リズの熱意には感服するが……この私欲のために人助けを強行する感じ、雑なやり方が気に食わなくて日直の仕事奪った昔の自分を見ている気分だ。




「……そこまで言われてしまっては、嫌とも言えませんね。ですが、無理はなさらないでください」

「大丈夫ですよ、冒険者ですから!」




 かくして、俺達はベタリキとの戦いの、ある意味での延長戦に身を投じることとなった。




 仕事の後のひとっ風呂は格別だろうし、いっちょ……やるか!




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