第五十話
「第三王子っ!
お前に……お前にボクの何がわかるっっ!!」
焼け落ちた街の真ん中で、兵を従えた第四王子が叫ぶ。
「ボク自身として生きる道を奪われっ!
それでも必死に努力したのにっ!
そんなことに価値は無いと言わて……!
価値のないボクなんかどうでもいいって!
それよりも、父親や有力な兄にゴマを擂るようにボクは強要され続けたんだっ!!」
怒りのままに鞘に入った剣を地面に叩きつけ、第四王子は険しい表情で頭を掻き毟る。
「ボク自身として生きる道なんてっ!
生まれた時から、ボクには許されなかったっっ!!」
怒りなのか、悲しみなのか、泣きそうにも見える第四王子の顔。
感情のままに叫ぶ言葉は、理路整然とは程遠かった。
「何の話だよっ?!
いつも君は僕を虐めて笑っていたじゃないかっ!!」
主人公である第三王子が、一瞬だけ怯んでしまう。
だが、仲間達に支えられて第三王子は、意味が分からないと叫び返す。
「うるさいっっ!
ボクよりもお前は下じゃないと駄目なんだっ!
お前は、ボクよりも不幸な顔をしてろよっ!」
駄々を捏ねる幼い子供のように、第四王子は理屈も何も無く叫ぶ。
「何でっ!何でだよっ!!
何で下賤な踊り子の血を引くお前の方が!
王太子だった兄上に優しくしてもらっていたんだ!!」
「優しくなんてして貰っていないよっ!
兄上の視界に僕が映ったことなんて無いっっ!!」
其処から始まる第四王子が相手の、俗に言う中ボス戦の戦闘。
その戦闘に第三王子たちが勝利すれば流れるショートムービー。
「うわぁっ……!」
主人公達が放った会心の一撃を受けて、吹き飛ばされる第四王子。
「くっ……」
その激しい衝撃に、第四王子が纏っていた防具が粉々に壊れてしまう。
「え?!」
砕け散った防具に加え、服の一部が破れ、サラシで押し潰されていた男ならば有り得ぬ胸が第三王子達の視界に晒された。
「女の子っっ?!」
驚きの声を上げる第三王子に、胸が顕になったことに気が付いた第四王子が胸元を隠す。
「うるさいっ!
ボクは男だっ!!」
怒りと羞恥に歪んだ顔で、取り出した一つの玉。
「ボクは男として!
一族のっ!そして、母上の期待に応えなきゃいけないんだ……!」
手に持った玉を掲げ、魔力高めていく。
「だからっ!お前を殺すっっ!!」
やめろと叫ぶ第三王子達の制止も虚しく、第四王子は玉に魔力を込め、玉の中に封じられていた魔術を発動する。
……激しい閃光と炎が溢れ、第四王子諸共…
爆発し霧散するのだった。
「(思い出した……。
黄河くんを第四王子が水に落とそうとしていた時は、主人公の黄河くんの存在と助けることに意識が向いてたから……)」
原作ゲームの記憶が蘇って初めて第四王子を見た時。
原作ゲームの主人公である黄河と死亡フラグを折ることに意識が向いていた黎深。
「え゛っ?!
アイツ、女なのか?!
確かに、男にしては線がほせーし、なよっちいとは思ってたけどっ……」
黎深の思い出した原作ゲームの記憶を読んだ黒龍が、驚きの声を上げた。
「(……第四王子の母親は、麻家っていう一族の出身でね。
一族の当主から男を産めって圧をかけられていたんだよ。)」
「んあ?
男でも、女でも、元気に生まれりゃそれでいーじゃん」
「(そうだね……僕も、そう思うよ。
でも、麻家の立場的に仲の悪い張家の王妃が、僕を含めて二人の王子を産んだんだ。
……だからこそ、第四王子の母親は……男の子を産む必要に迫られた……)」
絶対に、男の子を産む必要があった麻家出身の側室。
黎深には、王族の性別を偽る方法なんて分からない。
もしかしたら、第四王子を取り上げた産婆に金を握らせたのかもしれない。
「(……第四王子を取り巻く環境は、決して良いものとは言えない。
でも、だからといって……黄河くんを傷付けて良い理由にはならないんだよ……)」
「そーだな」
「(……ただね、黄河くんが話していた限りでは、水に落とされそうになったのは初めてだし、それまでは嫌味を言われるくらいだったって。)」
直接的な暴力は振るっていなくても、嫌味を言われるのことを好む者はいない。
「あ?
なんか、第四王子の金魚の糞が、黄河に何かしてなかったか?」
「(あの一件は、第四王子の権力を傘に着た取り巻き達の暴走だったらしいよ。
まあ……何処までが、真実かは分からないけど。
第四王子が、あの場にいなかったことも事実だし。
何処まで把握して、何処までを指示していたのか?
それとも、本当に取り巻き達が勝手に動いたのか?)」
原作ゲームの爆死した"第四王子・翠烈"。
「(……原作ゲームでは、十八歳くらいだったから、今は黄河くんと同じ十六歳くらいかな……?)」
黄河に対しての加害行為と第四王子はの同情心で、黎深の心は揺れ動く。
「(……同情と、許すことは違う。
嫌なことをされたのは僕じゃないから、許すかを決めることも……僕ではない。)」
「そりゃそうだな。
水に落とされそうになったのも、取り巻き達に危害を加えられたのも、黄河だもんな」
どちらにしても、第四王子の行為を許すかどうかを決めるのは、黎深ではないのだ。
「ぅ……っ、はぁ…………あ……」
そんなことを黒龍と話していると、修練場の真ん中で肩で息をする第四王子と黎深は目が合ったのだった。
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