↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落馬して前世の記憶を取り戻したラスボス第二王子は、死亡フラグを折ったら兄弟妹に執着されました?!〜原作ゲームはもう当てになりません〜  作者: ぶるどっく
第一章 目覚めと蠢く宮廷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/61

第三十五話



「黎深、君に聞きたいの……」


「黎深兄上ぇぇぇぇぇっっ!!」


 先程までの取り乱していた様子が嘘のように、真面目な表情へと切り替わった碧雲が重々しく口を開きかけた瞬間。


「黎深兄上っっ!ご無事ですかっっ!!」


「……黄河?」


 ドタバタと大きな音を立てて扉を壊さんばかりの勢いで現れたのは、肩で息をする黄河だった。


「はいっ!

 誰よりも素晴らしい僕の敬愛して止まない黎深兄上の弟である黄河です!!」


「…………何用だ?」


「はい!

 僕の大切な兄上の元に王太子殿下が出没したと範さんから聞きましたので!

 黎深兄上の御身を守るために馳せ参じました!」


 元気にハキハキと笑顔で答える黄河に、黎深は心の中でキョトンとしてしまう。


「黄河よ。

 私のもとに王太子殿下が来訪されたからと行って、私の身に不測の事態が起きるなど有り得ぬ。

 第一、王太子妃殿下の一件の際中ならば兎も角、今現在の何もしていない私を殺害しては外聞が悪い。

 (黄河くん、心配してくれてありがとう。

 でも、大丈夫だよ。

 何も悪いことをしていない僕を怪我させたりしたら、王太子殿下だって外聞が悪いからやらないと思うんだ)」


「だよなー。

 もしも殺るなら、誘拐事件の犯人扱いされた時に殺った方が都合が良いよな。」


「(そうなんだよ、黒さん。

 だから、今後までは分からないけど、今此処で殺されることはないかなって思っていたんだ)」


 黄河の言葉に対し、黎深はタイミング的にも碧雲が自分を殺すことは無いと笑う。


「………………凌善……黎深は……私に殺されると、思っている……?」


「ちょっ?!

 碧雲様っ……!

 何で短刀を取り出そうと……遺書を書く紙を探そうとしないで下さいぃぃぃっっ!!!」


 ふらふら……と立ち上がった碧雲が、虚ろな瞳で短刀を取り出し、紙と筆を探し始める。


「ちょっと第二王子殿下ぁぁぁぁぁっっ!!

 違いますからっっ!!

 碧雲様は小指の甘皮ほども貴方様の御命とか狙っていませんからっっ!!

 おっさんの虎の子の胡麻団子をあげますから!

 碧雲様を止めて下さいぃぃぃぃぃぃっっ!!!」


「お!胡麻団子かっ!

 おい、黎深!

 俺が保証してやる!

 王太子はお前の命を狙ったりしてないぞ!

 マジでお前と仲直りして、昔みたいに仲の良い兄弟に戻りたいだけだ!

 だから、胡麻団子をアイツから確保してくれ!」


 胡麻団子と聞いた黒龍が、縫いぐるみサイズの身体に相応しい大きさの手で黎深の肩をペシペシと叩く。


「………………兄上、私を置いて行くのですか?

 (……黒さんが、そう言うなら……ちょっとまだ、信じきれないけど……)」


「黎深っっ?!

 今、兄上って……?!」


 胡麻団子に惹かれた黒龍の言葉に、黎深は不承不承な面持ちでボソリと呟く。

 黎深が言った"兄上"の一言に、碧雲の虚ろだった瞳が一瞬で輝きを取り戻した。


「……コレで良いな、夏侯 凌善。

 後で必ず黄河の分も含めて、山盛りの胡麻団子を持って来い。」


「僕も一緒に食べて良いんですか?!

 ありがとうございます、黎深兄上!!」


「え゛……あ、御意……!」


 ……胡麻団子で……王太子殿下の命が繋がった……?

 

「……それで、王太子殿下。

 先程、何かを言い掛けていたようですが、私に聞きたいこととは何ですか?」


 兄上と胡麻団子!と嬉しそうに笑う黄河の頭を撫でながら、碧雲へと問い掛ける黎深。


「……兄上って……」


「王太子殿下、用件がお済みならば、速やかにお帰りなられては如何ですか」


 明らかに黄河との扱いの差に、碧雲は少しだけ泣きたくなる。


「……黎深…………そうだね……」


 深すぎる溝は一瞬では埋まらない。

 だが、それでも碧雲と言葉をまともに交わしてくれるのだから、時間を掛けてゆっくりと近付いて行くしかないのだと己に言い聞かせる。


「……昨日の玉座の間で、君は今回の玉葉の一件に関する褒美に婚約の解消を願っただろう?

 ……その、真意が知りたくてね。」


「真意?」


「え……兄上、婚約を破棄されたんですか?」


 黎深を見詰める碧雲と黄河の視線。

 流石に、碧雲だけならば煙に巻いても良いが、黄河には嘘を付きたくないと黎深は思うのだ。


「……地獄に落ちる私の供に、あの女は相応しくありませぬ。」


「え……?」「地獄……」


 目を丸くする碧雲と"地獄"という言葉に少しだけ反応してしまう黄河。


「……私を視界の端に映すだけで一々怯えるような小娘など、私には必要ない。」


「……それって……っ……!」


 黄河と範には、地獄でも一緒なら退屈しないと言った黎深。

 つまり……婚約者だった女性は、黎深にとって死んだ先を共に居たいとは思えない程度の人物だった。


「兄上!

 僕は兄上のことを恐ろしいなどと思いません!

 もし!

 兄上が地獄に行くならば絶対にお供します!

 いえっ!

 僕の敬愛する兄上のためならば!

 必ずや世界最強の男になって、兄上を抱き上げて逃げまわれる実力を身に着けてみせます!」


 そう……世界中を敵に回したって、兄がいるならば怖くない!


「……黎深が地獄に落ちるなら、この世界の大半は地獄を超えた場所に落ちると思うけどね」


 ……黄河が叫んでいた黎深の優しさが碧雲にも理解できた。

 

「(……黎深は……陛下の馬家の娘との婚姻の意図を理解していた。

 だが……己に怯える少女を哀れんでいたのか……)」


 黎深の偽りばかりの噂を信じて震える婚約者。


「ただ……そう、だね。

 政略とは言え、黎深が妻にするならば……せめて、噂に惑わされずに怯えない毅然とした女性の方がいいだろう。

 ……ましてや、可愛い私の弟の妻になるんだ。

 それこそ、黎深のことを理解してくれる女性の方がいいね。」


「誰よりも強く、優しい兄上の妻となるならば、並大抵の覚悟では務まりませんよ!」


 何故かお互いの言葉に頷き合い、心が通じ合ったとばかりに固く握手を交わした碧雲と黄河。

 その光景を静かに見詰めていた凌善は遠い目をしている。


「(……えっと……僕の奥さんになるなら、強い女性じゃないと僕の面倒を見切れないってことかなぁ……)」


「……いや、お前さ……どっちかと言うと、妻側の条件が馬鹿高くて不憫なんだが?

 つーか、兄弟愛がヤバいくらいに重い気がするのは気のせいか?

 ……やっぱり……運が悪いつーか……)」


 鋭いようで鈍い黎深の心の声に突っ込みを入れつつ、どんどん重くなっていく兄弟愛に黒龍は頬を引き攣らせるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。