第三十一話
おはようございます!
昨日は追加更新分まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
感謝を込めまして、本日も17:10頃に追加更新いたします。
よろしければ、夜もお付き合いいただけましたら嬉しいです!
それでは、本日もよろしくお願いいたします!
王太子妃・玉葉が無事に発見され、保護されたことは、すぐに宮廷内に知れ渡った。
そして、王太子妃誘拐の犯人である礼部の高官達は一網打尽となり、その余罪も含めて厳しい詮議を受けることとなったのである。
「……玉葉……」
王太子妃の私室。
周囲はすっかりと夜の闇に包まれ、蝋燭の明かりが室内を優しく照らし出す。
「……私は……弟の、何を見ていたんだろうね……」
大きな怪我も無く、無事に王太子妃を救い出すなど、流石は王太子殿下だと褒め称える宮廷雀たち。
……王太子への賛辞のあとに続くのは、王太子妃誘拐の黒幕は第二王子なのでは?という根も葉もない侮辱の言葉。
「碧雲さま……」
寝台の上に横たわっていた身体を起こした玉葉の瞳が切なそうに陰る。
「玉葉……」
玉葉の座る寝台の横に腰掛けた王太子・碧雲は、生きて取り戻すことが出来た愛しい妻の小さな手を握る。
「……私は……第二王子に、酷いことをしてしまったんだ……」
疑わしいと思っている、と玉座の間で言ってしまった。
無実の第二王子に、"信じたい"……と。
……それは、裏を返せば"お前を信じられない"と言うことではないか……!
「っ……私、は……!」
王太子の元に夏侯 凌善を探して第三王子が飛び込んで来た時には、犯人の目星を付けていた第二王子。
その上、第二王子は護衛の一人もいない状態で腐った床もある朽ちかけた離宮に籠り、命すら狙われた。
「わたし、は…………!」
激しい後悔に襲われ、王太子は奥歯がギリリと鳴るほどに噛み締める。
「……碧雲さま……」
激しい後悔に苛まれる碧雲の手を、玉葉は優しく握り返す。
「……賊に捕まり、碧雲さまより頂いた簪や衣を奪われ……いつ、この命まで奪われるのかと……」
「っ……」
「寒さに震え、絶望に心が支配されそうになった時に…………美しい黒揚羽が現れたのです」
「黒揚羽……?」
怪訝な表情で顔を上げた碧雲と視線が交わり、玉葉が微笑む。
「あれは……魔術、なのでしょうか?
恐らく、私の居場所を探していた黎深殿の術だったのでしょう。」
「そ、うか……」
「黒揚羽が消えた時に、寒い室内に温もりが広がり、私は凍えずに済みました。」
「…………」
玉葉の言葉に、碧雲は再び俯きかけたが、その頬に白い手が添えられた。
優しく、しかし逃さないとばかりに玉葉が碧雲と視線を重ねる。
「……黎深殿は……ずっと、心を凍らせていたのだと思うのです。
あの日、あの時……本当は、大好きな兄である碧雲さまに……黎深殿は、追いかけて来て欲しかった……」
「っ……その、ようなことは……!」
「有りますわ。
だって……だからこそ、幼い頃の約束を果たしてくれたでは有りませんか……」
"兄上と義姉上のことは、ぼくがおまもりします!"
「っ……あ……」
碧雲のの心に、幼かった黎深の言葉が蘇る。
「……私も碧雲さまも、そして……黎深殿も……お互いに傷つけ合いたくなくて、これ以上……仲違いをしたくなくて……距離をとってしまった……」
玉葉は瞳を伏せる。
お互いに素直な子供のように、気持ちを伝え合えたならば……この十年という月日は変わっていただろうか?
「もう……傷つけ合いたくないからと、距離をとるのは辞めましょう。」
そう……だって、碧雲さまは黎深殿のことを大切な弟だと、本当は仲直りをしたいと思っていたのだから。
「碧雲さま……玉葉は、またあの頃のように微笑みあう兄弟の姿を見守りとうございます。」
「…………」
玉葉の言葉に、碧雲は無言を返す。
「碧雲さま……今日、黎深殿が助けてくれた時に感じました。
黎深殿は、ずっと兄である貴方様を慕っていたのだと。
しかし、周囲の者たちの言葉によって、黎深殿もまた苦しみ……兄である碧雲様への愛情を隠してしまった。」
本当は仲の良い兄弟として育ったはずの碧雲と黎深。
「ですが……此度の一件で私の命が危ういと知り、碧雲様の妻である私を気にかけ、助けに来てくれた黎深殿。
あの愚か者の言葉へ返した黎深殿の言葉……それは、自分が碧雲さまを害する立場になりたくないといっているのではないでしょうか?」
「っ……!」
「自分の存在で、大切な兄である碧雲さまを苦しめ、国に暗雲をもたらしたくない。
そんなお気持ちなのだと、玉葉は切に感じ取りました……!」
興奮した様子で頬を薔薇色に染め上げた玉葉が、碧雲の両手を握って宣言するように告げた。
「碧雲さま……!
黎深殿は、今も昔も、貴方様のことを大好きなのですわ!」
「っ……なっ……いや、だが……?!」
「碧雲さま!
今こそ、兄弟の絆を取り戻す時なのです!
あの頃のように"大好きな兄上♡"と、可愛らしい笑顔で付いて回る弟を取り戻せますわ……!」
「っ……?!」
"兄上!"
"凄いです、兄上!"
"いつか、僕も兄上みたいになってみせます!"
「……黎深……っ……!」
熱く語る玉葉の言葉に、碧雲の脳裏には幼かった黎深の可愛らしい笑顔で埋め尽くされるのだった。
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