第二十九話
【お知らせ】
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感謝の気持ちを込めまして、本日は定期更新の29話に加えて、もう一話追加更新いたします!
本日の追加更新は【17:10頃】を予定しております。
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礼部……それは、祭祀を中心とした宮廷儀式に関わる事柄を扱う部署。
王族が祭祀を行うにあたり、準備をすることも仕事ならば、宮廷内にある廟などの管理もまた仕事である。
「(……一応ね、主だった官吏の名前と顔を覚えているのって、王族あるあるかなって。)」
「まーなー……王族って要するに上司みたいなモンだから、部下の名前と顔くらいは覚えるものかもなー」
「(だからね、玉座の間での言動で可笑しいなって。
だって、礼部って王太子妃を探すことに関わる部署じゃないし……探索に関わっていた兵が身内にしたとしても喋るものかな?)」
肩車をするように黒龍を乗せた黎深は、どんどん雑木林の奥へと進んでいく。
「曇った目で犯人と決めつけた私にばかり注視するから…………見落とした。
奴らは、最初から私以外を疑う頭など無かったのだ。」
ただ、悲しい……。
王太子の信じたいって言葉すら……本気では無かったのかもしれない。
「(……犯人だって、決め付けていた僕を油断させて……自白させたかったから…………)」
人の気配の無い、寂しい場所だからだろうか……?
「(……ダメだね、黒さん。
もっと強く気持ちを持たないと、死亡フラグなんて折れないのに………)」
簡単に落ち込んで、後ろ向きになってしまう自分が……嫌だ。
「お前さー……人間って、そんなモンだと思うぞ。」
「(……そう、かな……僕は……)」
「俺には血の繋がりとかは、わからん。
意味不明過ぎるからな。
血が繋がっているからって、同一の存在じゃないんだぜ?
好きな食いモンだって違うなら、仲良くなれない時だって有るだろ?」
俺は粒餡派だから、こし餡の良さがわからん!と笑う黒龍。
「(……なんか……黒さん、らしいね)」
心の中で思わず笑ってしまう黎深。
落ち込む己を気遣ってくれている優しさに、黎深の頑なな口元も微かに綻ぶ。
「(ありがとう、黒さん。
僕……黒さんに出会えて、本当に良かった……!)」
「やめろよ、なんかこそばゆいじゃねえか!
俺は、思ったことを言ってるだけだからな!」
照れているのか、ジタバタと痒くもない体を掻く真似をする黒龍。
「ほら!
さっさと王太子妃とかいう女を助けて、エビチリを食べるぞ!
俺の口の中は、もうエビチリ以外受け付けん!
プリッとしたエビの食感と甘み!
甘辛い絶品チリソースに絡んで!
一口頬張れば、シャキッとした葱のアクセントが癖になる!」
ワナワナと震える黒龍の食レポに、黎深のお腹も鳴りそうになる。
「俺はっ!
範の特製エビチリが、早く食いてぇぇぇぇぇぇっっ!!!」
「(ふふ……そうだね、黒さん!
僕も早く範さんのエビチリが食べたいな!)」
下がっていた気持ちが上を向く。
早く玉葉を助けて、日常に戻りたい。
例え……この宮廷に、家族の輪の中に自分の席が無くても。
雑木林の奥。
エビチリ談義をしながら辿り着いた先。
「(礼部の高官、つまり責任者が犯人なら……古くなったことを理由に立ち入り禁止になっている廟を自由に出来る。)」
「うわー……罰当たりな奴。
しかも、白龍を祀る廟じゃねーか。」
「(……そうだね。
昔から人々の平穏や豊穣を祈った神聖な場所なのに、ね。)」
「ぶっちゃけ、俺や白龍は神なんて柄じゃねーけどな。
……でも、ま……面白くはねーわな。」
「(……黒さん、大丈夫?)」
面白くない、と目を細める黒龍を気遣う黎深。
「おう。
さっさと終わらせちまおう。
雷を百発くらい降らせたら終わるよな?」
「(駄目ぇぇぇぇぇっっ!!
そんなことをしたら義姉上まで黒焦げになっちゃうぅぅぅぅっっ!!!)」
「えー……女には当たらないように頑張るから。
ちょっと掠めても、死にはしないって。
だって……エビチリを早く食べたいんだもん……!」
「(あざと可愛いポーズをしても誤魔化されないからね!
駄目なものは駄目なんだよ、黒さん!)」
ちえー……と唇を尖らせる黒龍に、黎深は苦笑する。
「(だけど……どうやって義姉上を助けだそ…………誰か、来る?)」
誰も居ないと思っているゆえか。
数人の話し声が、白龍を祀る廟の中より聞こえて来た。
「早く運ばぬかっ!」
「……へい」「…………」
でっぷりとした太鼓っ腹をユラユラと動かしながら歩く贅肉の塊……もとい、礼部の長を務める高官。
その背後に続くのは、礼部の部下と人相の悪い男達。
「(あれは……)」
人相の悪い男達が、廟の中より人が入りそうな大きさの衣装箱を運んでいる。
「(黒さん……)」
「おー、予想はバッチリ当たってるぜ。
……探している女は、あの衣装箱の中にいる。」
木の陰から様子を伺う黎深の目の前で、衣装箱が運ばれて行く。
「早くするのだ、お前達!
今頃、離宮にいる第二王子の息の根は止まっている!
その隣に、その女を早く殺して並べなければ、死体の様子が同じにならないだろうっ!」
「は、はい……お前達、急ぐんだ……!」
コレだからお貴族様は、と顔を顰める人相の悪い男達。
「ふふ……もうすぐだ。
その女が不祥事の末に死んだとなれば、女の実家である孫家もただでは済まない!
しかも、儂の娘が王太子妃になり、御子を授かれば……!」
我が一族の栄華は思いの儘ぞ!と笑いが止まらない高官。
「……おい、黎深……」
「(……僕は……弱いよ。
弱い上に、利口じゃないんだ。)」
だから……ごめん、と黎深は拳を握るのだった。
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