第二十二話
「あの……自分みたいなおっさんにも分かるように教えて頂けると有難いんすけども、いってぇぇぇぇ?!」
「凌善!恐れ多くも王太子殿下の御前だ!」
「ちょっ?!
だからってアンタの拳骨で可愛い部下の頭を陥没させようとしてどーするんですか?!
俺ってば、アンタと違って美人で尊い女神のような妻と可愛い可愛いマジで目に入れても痛くないって断言できる愛娘がっ、ぶほ?!」
「儂を引き合いに出すな、莫迦者!
くっ……儂の奥だって……!
儂の奥だって……!
昔は儂のことを国一番の英雄だと……」
「……時間の流れって残酷っすよね。
仕事、仕事で、家族を顧みないから、家庭内での居場所を無くす、いってぇぇぇぇ!!」
「喧しぃぃぃぃぃっっ!!!」
近衛大将軍である剛炎に、首根っこを掴まれた野良猫スタイルで連れて来られた一人の男。
「…………剛炎、凌善」
「っ?!
申し訳ありませぬ、王太子殿下!」
「申し訳ありません、王太子殿下……ぐふっ」
「もっと頭を下げぬか、莫迦者っ!」
黄河の"夏侯 凌善に会いに来た"という言葉に虚を突かれた王太子。
だが、その夏侯 凌善に会うように仕向けたのが黎深だと知り、会わせてみることにしたのだ。
「(……八方塞がりの今……あの第二王子が会うように仕向けたと言うだけでも、何か事態の打開策を得ることが出来るかもしれない……)」
王太子には言えぬことでも、仲が良いと噂の第三王子には教えていることがあるかもしれない。
藁にもすがる思いと言ってしまえば……それまでだ。
「貴方が夏侯 凌善殿ですか!
初めまして、僕は第三王子の紫 黄河です!
早速で申し訳ありませんが、黎深兄上の嫌疑を晴らしたい僕の願いを聞き入れ、どうか僕に力を貸してくださいっっ!!
ちなみに!
黎深兄上に、貴殿の力を借りるようにと勧められました!」
「………………は?」
「何度でも、頷いてくれるまで鬱陶しいくらいに言います!
どうか僕に力を貸してください!
そして、兄上を疑ったクソ野郎どもの目玉を全部酢漬けにしてやりたいんですっ!」
「え……え?
ちょっと、待ってくれませんか?
俺、じゃなくて私のような者は、第二王子殿下にお言葉を賜ったことすらないのですが……?
それに、なんか……第三王子殿下が怖いことを仰って……え……冗談、ですよね……?」
「冗談などではありません!
僕は本気です!
本気で、黎深兄上の嫌疑を晴らしたいのです!
そして……目玉を酢漬けに……」
「こっっわっっっ!!
ちょっ?!関将軍!
第三王子殿下が闇落ち何十秒前な雰囲気醸し出してるんですけどっっ?!」
黄河の言葉に戸惑う凌善に、剛炎は目を逸らしてしまう。
「……王太子殿下……あの、第三王子殿下は……このような、ご性格ではなかったように思うのですが……」
「……すまないが……あまり第三王子と話したことは無いので……元の性格が、分からないんだ……」
剛炎の問い掛けに王太子は気不味そうに言葉を濁す。
「夏侯殿!ご返答を!
力を貸して下さいますよね?!ね!!」
「ちょっ?!
俺の一存では決められませんって!!
王太子殿下の近衛部隊の隊長をやってるんです!
上司である剛炎近衛大将軍か、王太子殿下の許可が無いと駄目なんです!!」
勢いよく詰め寄る黄河にタジタジになる凌善。
「では、王太子殿下!関近衛大将軍殿!
どうか、僕に力を貸してもらえませんか!」
お願いします!と深々と頭を下げる黄河に、王太子は戸惑ってしまう。
「……何故、だ……」
「……?」
「何故、第二王子のために……其処まで、する?」
分からない。
だって……第二王子は、黎深は……兄である王太子には"もういい"と切り捨てた。
疑われても構わない、と。
身の潔白を証明しようとも……しなかった。
「……そんなの、決まっています。」
頭を上げた黄河の瞳に宿る炎のような強い意志。
「黎深兄上は、無実です!
僕は、黎深兄上の弟として!
兄上を守ると決めたんです!!」
「っ……」
『兄上と義姉上のことは、ぼくがおまもりします!』
いつかの記憶の中の幼い黎深と、目の前の黄河が重なる。
兄と義姉を守ると笑顔を浮かべた幼子は……守ると伝えた義姉を殺害したと疑われている。
「……れ、いしん……っ……」
噛み締めるように呟いた弟の名は、王太子の口の中で音になる前に消えていった。
「……凌善」
「……はっ!」
「第三王子に力を貸してやれ」
「……宜しいのですか?」
王太子を気遣うような凌善と剛炎の眼差し。
「……構わない。責任は私が負う。」
絞り出すような王太子の声に、黄河の瞳が煌めく。
「では、コレを読んでください!」
協力を得られるとなった黄河は、ゴソゴソと服の胸元を漁り、一通の書状を取り出した。
「夏侯殿!
黎深兄上より、貴殿の力を借りた後に見せるように書状を預かっています!」
「「「………………は?」」」
三人の前に飛び出した書状の存在に、驚いてしまうのだった。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
「続きも読みたい!」 「面白かった!」「応援したい!」
と感じていただけましたら、ブックマークや評価(★★★★★)で応援していただけると、とても嬉しいです。
一つひとつの応援が、物語を書き続ける力になっています。
最後まで楽しんでいただけるよう頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。




