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落馬して前世の記憶を取り戻したラスボス第二王子は、死亡フラグを折ったら兄弟妹に執着されました?!〜原作ゲームはもう当てになりません〜  作者: ぶるどっく
第一章 目覚めと蠢く宮廷

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20/62

第二十話

【お知らせ】

数ある物語の中で、この物語をお読み頂きありがとうございます!


これまで少し駆け足で更新しておりましたが、明日から更新ペースを少し落とします。

引き続き更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします!



 北の離宮で迎えた朝。


「(うぅぅぅ……寝落ちしちゃった。

 二十歳も過ぎた男が泣きながら寝落ちってぇぇぇ……)」


「あー……まあ、イイんじゃね?

 男だってたまには泣きたくなることもあるだろ?」


「(あれ……?

 黒さん、なんかほっぺたが腫れてない?)」


「……気にすんな」


「(……うん?)」


 不思議そうな黎深の視線から逃れるように、首元を器用に後ろ足で掻く黒龍。


「それよりも、なんか……騒がしいのが近付いて来てるぜ」


「……なに?」


 ケラケラと楽しそうに笑う黒龍の言葉に呼応するように、地響きが近付いて来る。


「………………ぇぇぇぇぇ!!!」


 どんどん近付いて来る足音。


「黎深、兄上ぇぇぇぇぇっっ!!」


 ドカン、バタンッッ!と扉や壁を破壊するような音が響く。


「……黄河?」


「黎深兄上!!」


 ドタンッッ!!と大きな音を立てて開かれた扉から、山吹色の塊が飛び込んできた。


「兄上兄上兄上ぇぇぇぇぇ!!!」


「……黄河、落ち着け」


「コレが落ち着いていられますかっっ!!」


 うがぁぁっっ!!と気炎を上げる黄河に、黎深の表情筋も少しだけ仕事を再開する。


「玉座の間でのやり取り!

 バッチリと見ましたし、聴きましたっっ!!

 その上で……!!」


 拳を握り締め、強い眼差しで大きく吠える。


「兄上は無罪ですっっ!!」


「っ……」


「王太子妃殿下を拐かすはずがありませんし!

 僕だって一緒にお茶なんか飲んでいませんよっっ!!」


「黄河……」


 馬鹿じゃないんですか、アイツラ!!と叫ぶ黄河に、黎深の口元が微かに緩む。


「……疑わしい、と曇った目で私を見て、真実を見落とす愚か者共など放っておけ。

 相手をするだけ……煩わしくなるだけだ。

 (もう、良いんだよ……黄河くん。

 僕を疑う人達には好きにさせておけば良いんだから。

 …………君や範さんが、そして黒さんが信じてくれただけで……僕は幸せ者だもの)」


 そう……もういい、と思ってしまった。

 例え、嫌疑が晴れることなく処刑を言い渡されても…………その時は、自由気ままな風来坊になってやるから!!


「だなー。

 逃げるが勝ちって言うし、世界津々浦々で食べ歩きの旅も楽しーぜ。」


「(だね!

 一応ね、僕も自衛くらいなら出来るから食べ歩きに出ても大丈夫な気がする!)」


 処刑されるくらいなら逃げてやる!

 一晩で決意を固めた黎深。


「そうは、いきません!」


 しかし、黄河が寝台に腰掛ける黎深へと身を乗り出して叫ぶ。


「あんな奴らの好きにさせるなんて絶対に嫌です!!

 それに、あの腐った貴族共は兎も角!

 何で陛下も、王太子殿下も、兄上を信じないんですかっ?!

 馬鹿じゃないんですかっっ!

 目玉を一度くり抜いて酢漬けにでもした方がまだマシな気がします!!」


「黄河」


「っ……兄上は優しすぎるんです!!

 あんな、あんな……頭っから疑っているような言葉で兄上を追い詰めて……!!」

 

 玉座の間での光景を思い出し、黄河は唇を噛み締める。

 証拠もないのに、最初から黎深を疑っているような問い掛けから始まって!

 状況と偽りの噂だけで、最初から黎深を犯人扱いした陛下と王太子殿下。


「……何が……"お前を信じたい"だよっっ……!!」


 腹が立つ。

 腹が立って、どうしようもない!!


「(……何が人徳の君だ!

 完璧な王太子だ!

 僕を助けてくれたのも!

 僕に手を差し伸べてくれたのも!

 全部、全部!黎深兄上だけだ!!!)」


 弟一人助けようともしなかった…………いや、身分の低い女が産んだ異腹の弟など眼中に無かったんだろう。


「(………………僕から、兄上を奪うなんて……許さない……!)」


 黄河の瞳に仄暗い炎が宿る。


「兄上……兄上、僕は……」


「……黄河、落ち着け」


「っ……」


 低く静かな声。

 黄河の大好きな兄の声。


「っ……僕、兄上を助けられなくて……ごめんなさい……!」


 この冷た過ぎる宮廷で……黄河の名前を呼んでくれるのは、目の前の黎深だけ。


「……そのようなこと、気にしておらぬ。

 お前に助けてもらおうとも……思っていない。

 (気にしなくて良いんだよ、黄河くん。)」


「でも……!」


「私のことを理解するのは、私だけで……いや、お前と範がいる。

 ゆえに、有象無象の低俗な輩共に、私を理解しろなどと思わん。

 (僕を疑っている人達に信じてって叫んでも、しょうがないしね。

 そんな人達よりも、僕のことを信じてくれる人達を大切にしたいな……)」


「っっ……!!」


 黎深の言葉に、黄河の頬に赤みが差す。


「(兄上がっ……僕を、認めてくれている……!)」


 すごく嬉しい……!

 

「っっ…………わかりました、兄上っっ!!」


「……黄河?」


「敬愛する兄上の弟として!

 この僕が、必ずや真犯人を見付けて、兄上の疑いを晴らしてみせます!!」


「…………。

 (え……どうして、そうなるの……?)」


 瞳に炎を燃やし、やる気を漲らせる黄河。


「見ていてくださいね、兄上!

 必ずや、僕が憎き犯人の首級を上げてみせますから!」


「(主人公の行動力ぅぅぅぅっっ!!

 ちょっ?!

 首級とか、やめてぇぇぇぇぇ!!)」


「あー……うん。

 ……ま、頑張れ。

 つーか、生首とかいらねー……」


「(何とかっ止めないとぉぉぉっっ!!)」


 犯人の生首を持ち帰りそうな勢いの黄河に、黎深は心の中で絶叫する。


「(誰かっ……誰かっ!

 黄河くんの勢いを調整できそうな人っ…………あ。)」


 黄河の暴走を止めたい黎深の脳裏に、何処か草臥れた雰囲気のおっさんの姿が思い浮かぶのだった。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

「続きも読みたい!」 「面白かった!」「応援したい!」

と感じていただけましたら、ブックマークや評価(★★★★★)で応援していただけると、とても嬉しいです。

一つひとつの応援が、物語を書き続ける力になっています。

最後まで楽しんでいただけるよう頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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