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落馬して前世の記憶を取り戻したラスボス第二王子は、死亡フラグを折ったら兄弟妹に執着されました?!〜原作ゲームはもう当てになりません〜  作者: ぶるどっく
第一章 目覚めと蠢く宮廷

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第十八話



 幼い頃。

 兄が発動させた魔術により、満開になった修練場。


「お前など!

 金輪際……兄とは思わぬっっ!!!」


 怒りと絶望に心が塗り潰されて、呆然とする兄に向かって叫んだ"僕"。


「っ……ふ、ぅ……!」


 止めたいのに、止まらない涙。

 初めて溢れた心の闇に、嫉妬や憤怒に心臓が激しく脈打つ。


「っ……黎深殿……!」


 呆然とする兄の横を擦り抜けて、心のままに走った。

 そんな僕を引き留めようとしたくれたのは、義姉上いや、王太子妃殿下だけ。


「(兄上はっ……引き留めてすら、くれなかった……!)」


 走って走って走って……!

 やっとの思いで辿り着いた、いつもの東屋。


「ぼくは……ぼく、は……!」


 引き止めてほしかった!

 兄上に……引き止めてほしかった!


「ぼくは……最初から、兄上にも期待されていなかったんだ……!」


 何が兄や義姉を守る将軍だ……!

 守る相手よりも弱い僕に……何の価値がある……!


「っ……う、わあぁぁぁぁぁっっ!!!」


 止まらない涙。

 どうせ、この忘れ去られた東屋には誰も来ない。


 ……その日から、黎深は独りぼっちになった。


 どんなに頑張っても、王太子と比べる周囲の囁き声。


 成長するに従って、王太子よりも高くなった身長。


 柔らかな顔立ちの王太子とは、正反対の怜悧な顔立ち。


 恐ろしい野心家だと、冷酷無比な第二王子と身に覚えのない噂を立てられて。


 ……それでも……一人で歩き続けた"黎深(ぼく)"。





 蘇った記憶が……僕の心を悲しみに覆い尽くした。


「……もういい」


 ……いつか絶対に、王様になった兄の片腕として、一緒に国を守っていきたいと思っていたのに……。


 ……どうして、僕たちは……こんなことになったんだろうね。


「……もういい。

 私が怪しいと思うならば好きにせよ。

 私は王太子妃に手を出すほど愚かではない。

 我が身の疑いが確定するまで、謹慎でもなんでも受けて立つ。」


 ……もう、ヤケだ!

 どんなに身の潔白を叫んでも、信じて貰えないならば……叫ぶ意味なんてない。


「…………」


 こんな奴らに、泣いている姿なんか見せるもんか!

 それだけを心の支えに、黎深は玉座に背を向ける。


「私は北の離宮に引き籠もらせて貰います。

 私の自室も、執務室も、好きなだけ家探しをされるが良い。」


 離宮に籠もって泣いてやるっ!


 そんなやさぐれ……ではなく、諦めに満ちた黎深の背中に、王太子は瞳を揺らした。


「っ……」


 己よりも上背の高くなった黎深の背中に、泣きながら走り去った……あの日の幼い背中が重なった気がした。


「待て、第二王子。」


「……まだ、何か?」


 微かに振り返った黎深の瞳は、王太子には光を失っているように見えて息を呑む。


「私は……お前が疑わしいと思ってしまったことを否定しない。

 だが……お前が妻を害するとも思えないんだ……!」


 はっきりと否定してほしい。

 黎深を信じることが出来る何かを……示して欲しい……!


「……お優しい慈悲深き王太子殿下の有難いお言葉だけ頂いておきましょう。」


「っ……私はお前を信じたいっ……!」


「……お好きにどうぞ。

 私は何一つとして偽りは申しておりませぬ」


 王太子の言葉は、心を閉ざした黎深(おとうと)には届かない。


 その事実を王太子は……はっきりと突き付けられた。





 玉座の間を立ち去った黎深。


「お待ちしておりました、黎深様」


 宣言した通りに、北の離宮へと足を向ければ。


「範、か……何故、お前がここにいる?」


 一足先に、範が北の離宮に何故かいた。


「おや……黎深様らしからぬ問い掛けに御座いますな。

 私は、黎深様の侍従で御座いますぞ?

 主より先だって朽ちかけた離宮の掃除や修繕は、当然のことかと。」


「……物好きな奴め」


「ホッホッホッ……黎深様の侍従で御座いますれば致し方ないことかと。」


 此方の部屋をお使い下さい、と範に通されたのは、朽ちかけた離宮の数ある部屋の中で雨漏りのしない部屋だった。


「よお、お疲れ!」


「(……黒、さん……)」


「おう、お前の相棒の黒さんだぞー」


「(っ……僕、頑張ったんだ……!)」


 縫いぐるみのように黒龍の小さい体を黎深は抱き締める。


「ああ……頑張ったな」


 温かな肯定の言葉に、黎深は心の中で泣き叫ぶ。


「(ぐろ、ざんぅぅぅぅ!!!)」


 しょうがない奴だな……と、尻尾で黎深の頭をヨシヨシしてやる黒龍。


 その優しい感触に、黎深は無言で黒龍を抱き締めるのだった。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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一つひとつの応援が、物語を書き続ける力になっています。

最後まで楽しんでいただけるよう頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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