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落馬して前世の記憶を取り戻したラスボス第二王子は、死亡フラグを折ったら兄弟妹に執着されました?!〜原作ゲームはもう当てになりません〜  作者: ぶるどっく
第一章 目覚めと蠢く宮廷

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第十六話



「見てください、兄上!

 呪符で小鳥を出せるようになりました!

 しかも!

 この小鳥が聞いたり、見たものを再生することも出来るんです……!」


 キラキラとした笑顔を振り撒きながら、黄河が呪符を数羽の小鳥に変化させる。


「ほう……よく出来ているではないか。

 (うっわぁ!!

 呪符の扱いを習い始めて、そんなに経ってないのに凄いなぁ……!)」


 表面上は微笑を浮かべる程度だが、心の中では満面の笑みを浮かべていた。


「(それにしても、まさかこんなに黄河くんと仲良くなれるなんて吃驚だなぁ……)」


「まー……感慨深いものはあるよな。

 お前の言うゲームだったら、ラスボスとヒーローの関係だし。」


「(そうなんだよ、黒さん!

 ラスボスの僕の死亡フラグな主人公の黄河くんが!

 こんなに僕に懐いて、兄として慕ってくれるなんて……!

 まるで夢みたいだし……僕の死亡フラグは、グッと下がったよね?!)」


「主人公を味方に付けているから、死亡フラグもサヨナラだろ。

 ぶっちゃけ、これ以上は打つ手が無いくらいに有効な一手だと思うぜ。」


「(そうだよね!

 ただ……不思議なのは、黄河くんが呪符が得意なことかなぁ……。

 ゲームでは剣とか、一般的な魔術を使う姿は見たけど、呪符を使っている姿は見たことが無かったし……。)」


 不思議だなぁ……と黎深は内心で首を傾げる。


「お前さー……まだ、ゲーム通りにすべてが運ぶって思ってんのか?」


「(へ……?)」


 黎深の執務室にある長椅子で丸まっていた黒龍が、身体を伸ばしながら起き上がる。


「目の前にいるのは、"主人公"か?

 それとも、お前の弟か?」


「(それ、は……)」


「第一、俺の目の前にいるのはゲームの"黎深"じゃねえ。

 五月蝿いくらいに泣き虫で、死にたくないって叫ぶ流れ者の魂を持つ"お前"だ。」


「(黒さん……)」


「この世界の黎深は、お前だ。

 だから……死亡フラグを断ち切りたいって思うのは構わねー。

 ……けどな、いつまでもゲームに登場する"黒龍"と重ねられるのは気に食わねーんだよ。」


「(う……ごめんなさい。

 今後は、気をつけるね……)」


「おう!

 分かったなら、いーんだ。

 それよりも、俺は月餅が食いたい。」


「(ふふ……範さんに頼んでみるね)」


 ……穏やかな日常。

 相変わらず黄河と範以外には恐れられている黎深。


 だが、自分という人間を理解してくれる存在が増えたことが、黎深は嬉しくてたまらなかった。



 ――だからこそ……穏やかな日常は、嵐の前の静けさと呼ばれるのかもしれない。



「ん……?」


 一番最初に気が付いたのは、黒龍だった。

 頭の上にある耳をワサワサと動かし、何かを聞き取ろうとしているように見える。


「(……黒さん?)」


「……どうやら、お客さんみたいだぜ」


 黒龍が目を細め、扉の方をジッと見詰める。


「…………」


 その視線に釣られるように、黎深も執務机から顔を上げて扉を静かに見つめる。


「……兄上?」


 お茶を注いでいた黄河が、いつもと様子の違う黎深に気が付き戸惑ったように名前を呼ぶ。


「……黄河、下がっていろ。

 (何だろ……肌がピリピリする)」


「っ……」


 硬い声音の兄に、ビクリと肩を震わせた黄河を庇うために黎深が立ち上がる。

 黎深の側に駆け寄ったと同時に執務室に向かって慌ただしい複数の足音が近付いて来た。


「失礼仕る!

 我は近衛将軍、関 剛炎!

 紫 黎深第二王子殿下!

 貴殿を捕縛させて頂く!」


 大きな音ともに現れたのは、岩のような男臭い顔をした将軍。


「ほう……?

 我が身を捕縛すると?

 全く身に覚えは無い私を捕らえるなど、近衛は大層暇と見える。

 (うっえぇぇぇぇぇっっ?!

 捕縛っ?!

 捕らえるって、逮捕ってことっっ?!

 僕はっ何も悪いことしてないよぉぉぉぉっっ!!!)」


「っ……陛下の許可は得ておりまする!」


「くだらんな。

 貴様らがこの場で啖呵を切っている以上、その程度のことは予測は出来ている。

 ……付いて来いと言うならば、足を運んでやろう。

 だが、我が身に掛けられた身に覚えのない嫌疑程度は聞いても問題は有るまい?」


 表面上は不機嫌を通り越して絶対零度な空気を振りまいている黎深に、近衛の兵たちに緊張が走る。


「(何で何で何でぇぇぇぇぇっっ?!

 僕、何か悪いことした?!

 えっ?!

 もしかして、黄河くんが可愛いなぁって和んでいたのがダメだったのっっ?!

 弟と仲良くしちゃダメだった系の事案?!

 僕っ何もしてないよっ?!

 一緒にオヤツを食べたり、お喋りをしていただけだよっっ?!)」


「うわー……すげぇ、負の感情。

 うん、なかなか濃厚な感じで……たまには、良いな。」


「(黒さんぅぅぅぅ?!

 食べてるの?!

 僕が首チョンパされるまで、あと十秒かもなのにぃぃぃぃっっ?!)」


「おー、悪いな。

 でもさ、そういう約束だったろ?」


「(そうだったぁぁぁぁぁぁっっ!!!)」


 心の中で阿鼻叫喚の黎深。


「第二王子殿下に掛けられた嫌疑は、王太子妃・玉葉様の誘拐についてで御座りまする!」


「……何?」


「お分かり頂けましたな。

 では、捕縛させて頂いた上、殿下の執務室と自室は徹底的に調べさせて貰います!」


「……好きにせよ」


 抵抗する素振りを見せない黎深に恐る恐る近衛兵たちが近付き、縄を打とうとする。


「待ってください!

 兄上は、そのような真似は致しません!

 そんなことを兄上にさせるくらいならば、僕が宮廷を吹き飛ば……」


「大人しくしておけ、黄河。

 私が疑われることなど……いつものことだ。

 (ちょっとぉぉぉっ黄河くんっ?!

 何を物騒なことを言ってんのぉぉぉぉっっ?!)」


「兄上……!

 必ず!必ずや、この黄河が兄上に掛けられた嫌疑を晴らして見せます!」


 黄河の目には、無罪の罪で捕縛されているにも関わらず、兄は自分の身よりも弟の安全を優先してくれたと分かってしまった。


 近衛により、一旦は貴族牢に捕らえられた黎深。

 しかし、その日の内に貴族牢より引き立てられることとなる。


 ――そう……この国の最高権力者が座す、玉座の間に。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

「続きも読みたい!」 「面白かった!」「応援したい!」

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一つひとつの応援が、物語を書き続ける力になっています。

最後まで楽しんでいただけるよう頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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