↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落馬して前世の記憶を取り戻したラスボス第二王子は、死亡フラグを折ったら兄弟妹に執着されました?!〜原作ゲームはもう当てになりません〜  作者: ぶるどっく
第一章 目覚めと蠢く宮廷

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/60

第十四話



「黎深兄上!」「黄河」


 第三王子・黄河に対する不敬罪により、処罰された第四王子の取り巻き達。


 その一件を皮切りに、子犬のように第二王子の後をついて回る第三王子の姿が宮廷内で見られるようになった。


「………………」


 そんな黎深と黄河の姿が人伝に王太子の耳にも届く。


「……何故、だろう……」


「碧雲さま……?」


 夕餉を共にする妻の玉葉を前に、王太子・碧雲は呟いてしまう。


「……不思議、だと思わぬか……あの、第二王子が立場の低かった第三王子に構うなど……」


「…………」


 まるで三歩先も見えない霧の中を歩くような……。

 頼りなく眉を下げた碧雲の表情に、玉葉は胸を痛める。


「(ああ……どうして、こうも……上手く、いかぬのでしょう……?)」


 玉葉は知っているのだ。

 碧雲の婚約者として、幼馴染のように碧雲と育ち……。

 そして、碧雲の同腹の弟である黎深とも、共に過ごした時間が有るからこそ……知っているのだ。


「(……切っ掛けは……何時のことだったかしら……?)」


 玉葉の脳裏に……まだ、碧雲と黎深が仲の良い兄弟だった頃の情景が浮かぶ。





「兄上……!

 碧雲、兄上……待ってください……!」


「黎深、あまり急いでは転んでしまうよ」


 釣り上がり気味の猫目をキラキラと輝かせ、大好きな兄の背中を追い掛ける幼い黎深。


「兄上!

 ぼくは大きくなったら、王様になった兄上を支える立派な将軍になります!

 だから、いつだってぼくに頼って下さいね!

 兄上と義姉上のことは、ぼくがおまもりします!」


「ふふ……ありがとう、黎深」


「まあ……私まで。

 ありがとうございます、黎深殿」


 十歳にも満たない幼い子供の……儚い夢だったのかもしれない。


「おやおや……王太子殿下が貴方様の年の頃には、この程度の問題は解けておりましたのに。」


「まだ、この程度の重さの木剣も持てぬのですか……。

 同じ両親から生まれた御子とは思えませぬ。」


 幼い子供に向けられた小さな悪意の積み重ね。

 言葉を向けた者達に、幼い子供を追い詰めるつもりはなかったのかもしれない。


「っ……すみま、せん……」


 周囲の小さな悪意は少しずつ……降り積もり、幼い黎深から瞳の輝きを奪っていった。


「っ……ふ、ぅ……」


 あの頃の……王太子妃となるための教養を身に着けようと、自分のことに精一杯な玉葉は気付くことが出来なかった。


 宮廷の端っこの東屋で、一人で涙を流していた黎深の心に。


「っ……今度、こそ……!」


 完璧な王太子。

 人徳の君である王太子と謳われる兄、碧雲。

 完璧な兄といつも比較された弟、黎深。


「今度、は……上手くできるはず……!」


 一生懸命に学んでも、武術を磨いても、完璧な兄と比較され続ける毎日の繰り返し。


「魔術、なら……!」


 流石は黎深だ!と……両親に、兄と比べ続ける者たちに認めてもらうために。


「……っ……やった……やった、できた……!」


 歯を食いしばって、努力を重ねる第二王子が一生懸命に練習した末に。

 やっと出来るようになった兄が習っていない分野……魔術。


「黎深……?」


「兄上……!

 見てください!

 ぼく、一生懸命に練習してできるようになったんです……!」


 魔術の基本である草木に花を咲かせる術。

 独学で魔力の練り方を身に着け、一輪の花を咲かせた黎深。


「綺麗な花だね、黎深」


「ええ、本当に。」


 鬼気迫る様子で努力を重ねる弟を心配して、気の柵に囲まれた修練場を訪れた碧雲と玉葉。


 ……それが、間違いだったのかもしれない。


「魔術、か……私にも出来るだろうか?」


 何の悪意もなかった。

 ただ、碧雲は好奇心を抱き、深く考えずに動いてしまったのだ。


「こう……かな……?」


 嫌な予感がした。

 何かが……壊れてしまうような、そんな予感。


「っ……」


 息を呑んだのは……私か、黎深殿か……?

 いや、両方だったかもしれない。


「良かった……!

 成功するのか不安だったが、上手くできたよ」


 止める間もなく発動された碧雲の魔術。


「……っ……ぁ……」


 努力の末に、一輪の花を咲かせた黎深。


 完璧な兄は……周囲の木の柵すら緑を与え、満開の花を咲かせてみせた。


 ……それは、幼かった黎深を絶望させるには……十分だったのだ……。




ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

「続きも読みたい!」 「面白かった!」「応援したい!」

と感じていただけましたら、ブックマークや評価(★★★★★)で応援していただけると、とても嬉しいです。

一つひとつの応援が、物語を書き続ける力になっています。

最後まで楽しんでいただけるよう頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。