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第6話


 塔の空気が一瞬で凍りついた。


 王の視線は、まっすぐ俺に突き刺さっている。


王「リリアナ。そこを退け」


リリアナ「お父様、待ってください」


王「退けと言った」


 短い一言。


 だが拒否を許さない圧があった。


 リリアナの肩がわずかに震える。


 それでも彼女は一歩も引かなかった。


リリアナ「彼は危険ではありません」


ガルディア「殿下、その判断は危険です」


 騎士団長が低く言う。


ガルディア「昼間の件を忘れましたか。魔族の襲撃、そして“解析”による異常現象」


 俺を見る目が完全に敵だ。


 いや、もう“人間扱いしていない”に近い。


王「神代 湊」


 王が一歩踏み出す。


王「貴様は、何を知っている」


湊「……何も」


王「嘘をつくな」


 即答。


 空気がさらに重くなる。


 周囲の騎士が剣に手をかける。


 リリアナが焦ったように振り向く。


リリアナ「神代! 逃げてください!」


湊「……逃げろって言われてもな」


 逃げ道は塞がれている。


 窓の外には騎士。


 階段にはガルディア。


 出口は王の後ろ。


 完全包囲。


《経路解析》

《脱出成功率:6%》


 低い。


 かなり低い。


 その時。


王「貴様は“観測者”に近い存在だな」


湊「……観測者?」


 リリアナがハッとする。


リリアナ「お父様、それは禁じられた――!」


王「黙れ」


 王の声が一段低くなる。


王「この世界を壊した存在の名だ」


 心臓が跳ねる。


 知っている単語が、ここでも出てくる。


王「魔法を解析し、術式を分解し、法則そのものを崩壊させた異界者」


王「その残滓が、お前だ」


 ガルディアが剣を抜く。


ガルディア「やはり排除すべきです」


リリアナ「やめて!!」


 リリアナが叫ぶ。


 だが誰も止まらない。


 空気が戦闘に傾く。


 その瞬間だった。


《警告》

《強制情報開示》


 視界が白く弾けた。


湊「ぐっ……!」


 頭の奥に映像が流れ込む。


 古代都市。


 崩壊する塔。


 空を覆う黒い円環。


 そして――“誰か”。


 顔は見えない。


 ただ一つだけわかる。


 その人物も、この能力を持っていた。


???「解析は、世界を壊す」


 声が響いた瞬間。


 現実に戻る。


湊「っ……はぁ……!」


 息が荒い。


 膝が揺れる。


 リリアナが支えるように手を伸ばす。


リリアナ「神代!」


王「今の反応……やはりだな」


 王の目が細くなる。


王「記憶干渉まで起こしている」


ガルディア「危険度が想定を超えています」


 違う。


 これは“記憶干渉”じゃない。


 情報が勝手に流れ込んでいるだけだ。


 しかも。


 俺の意思とは関係なく。


ふざけるな……


 俺は初めて、強い嫌悪感を覚えた。


 能力そのものに対して。


王「神代 湊」


 王が宣告するように言う。


王「お前を、国家管理対象とする」


リリアナ「そんな……!」


王「拒否権はない」


 ガルディアが剣を構える。


ガルディア「抵抗すれば、即刻拘束だ」


 騎士たちが一斉に前へ出る。


 完全に戦闘態勢。


 俺はゆっくり息を吐いた。


湊「……なるほど」


 状況は最悪だ。


 でも。


 わかってきたこともある。


 この世界は、俺の力を“知っている”。


 そして恐れている。


 それはつまり――


湊「俺が何かをできるって、確信してるってことだろ」


 小さく呟く。


 その瞬間。


リリアナ「神代、やめてください……!」


 彼女が必死に言う。


 だが。


 俺の視界には、別のものが見えていた。


《王国中枢構造解析完了》

《権限階層:表示可能》

《脆弱点:3箇所検出》


 ――見える。


 この城全体の“構造”。


 人ではなく、仕組みとして。


 まるで巨大な機械だ。


湊(これが……解析)


 その時。


 王が一歩踏み出した。


王「終わりだ」


 剣が抜かれる。


 同時に騎士たちも動く。


ガルディア「捕縛開始!」


 空気が爆発するように動いた。


 その瞬間。


 俺の中で、何かが“カチリ”と噛み合った。


《新機能解放》

《領域解析:展開可能》


 ――領域。


 俺は無意識に手を伸ばした。


湊「……展開」


 次の瞬間。


 世界が変わった。

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